ひとりのこどもについて考えるとき、一般論をあてはめても何の意味も持ちません。そのときのそのこどものおかれている状況で、全ては変わっていきます。
前述した学習に取り組む姿勢に問題がある例も、基本的な「読み・書き・計算」が抜け落ちている例も、特殊な例だといわれればそのとおりかもしれません。しかし、こどもと毎日、塾という場所で接している私には、このような事例が増えていることは確かです。
もちろん、自学自習の姿勢ができていて、自ら考え、そして疑問点を教師とともにひとつずつ解決していくこどもたちも健在です。彼らは教師を、あるいはおとなを絶対なる権威者などとは思っていません。おとなからなにか吸収できないかと瞳を輝かせています。
そのようなこどもたちをどうにか減らすまい、できる限り増やそうとおとなたちがアンテナを張っていなければなりません。
最初に目標を決めて、こどもをそこに無理やり引っ張り上げるのではなく、まずはいっしょに歩き、そして、ひとりで歩けるように手を貸してやり、それから目標をこどもといっしょに指差して背中を押してやる、そんなおとなにたくさん出会うこと、出会ったおとなたちがその子のスタッフとなり、さまざまな角度からその子を見つめ続けていていること、そのことがこどもに勇気と自信と希望を与えるに違いないと思うのです。
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