750社とパートナーシップ

ロサンゼルス市教育委員会 企業・学校間連携担当部長
エイコ・モリヤマ氏来日

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 ロサンゼルス市教育委員会の企業・学校間連携の担当部長である、エイコ・モリヤマ氏が来日。日本において企業と学校現場を結びつける役割を目指している民間団体の「ジェリック」を訪問した。同氏はカリフォルニア州全体のパートナーシップを担当しているが、全国約200件のプログラムに750社が協力している。企業との協力関係は、今後日本においても是非構築したい課題である。モリヤマ氏に教育と企業との協力関係の現状について、お話を伺った。
 なお、モリヤマ氏は名前の通り、日系人。第2次大戦中、捕虜収容所を経験するなど、辛い体験を持つ。

企業となぜ連携するか
 国際教育パートナーズ(International Partners in Education・IPE・)は、全国教育パートナーズ協会(Natinal Association of Partners in Education)に属しており、教育と職業訓練を結びつける事業体として、30年以上の実績があります。
 教育と職業技能との関係はまことに重要でありますが、学校教育では教科書を読むことが教育内容の中心であるために、医者やエンジニア、会計士などになりたい子どもに対して、将来の夢の実現に役立つような職業技能的教育が行われていません。子どもがなりたいと望む職業の現場や内容を現実のままに教えてあげることは、将来の夢の発展にとって大切なことです。
 そのための一助となるものとして考えられていることは、インターネットによる情報収集です。また、インターネットを教育に利用することよって、国際的な情報も入手できます。
 ビジネスの世界における情報通信機器の進展と更新は日進月歩であり、教育界はその急速な流れに追いつくことは、財政面から非常に困難であります。そこで、民間企業の財政支援が必要となります。企業が公的教育費用に出資することによって、情報通信機器などの職業技能訓練施設が整備されます。そして、そこで学んだ卒業生は、学校に出資した企業に就職し、学校で訓練した職業技能を企業で発揮することになります。

具体的にどう連携しているか
 アメリカでは、このような教育資本と人材育成に関する企業と学校のパートナーシップが結ばれています。例えば、マイクロソフト社のビル・ゲイツ氏は、情報処理技術者の育成には公共教育が重要であると考え、ワシントンDCの公的教育機関に6000万ドルを寄贈しました。また、映画会社が公立高校内に映画ビジネスコースを設立し、映画産業にかかわる弁護士、会計士、事務管理の教育に出資している例もあります。このような関係によって、学校側は生徒の職業に抱く夢を実現させることができ、企業側は職業訓練を受けた人材が確保できるという、双方にとってのメリットが生まれます。
 われわれがアメリカ全国で実施している約200案件のパートナーシップ・プログラムに参加している企業は750社に達します。企業は教育資金を出資するだけではなく、週2時間程度、パートナー関係にある学校に教育ボランティアとして社員を派遣しています。
 アメリカは多言語国家でありますが、教育現場では英語を母語としない児童の英語力が問題となっています。このような児童を支援するために、児童の母語を話すことのできる社員を派遣するケースもあります。また、学校によって地域にある産業が異なるわけですから、全国一律に同じ基準でプログラムを編成することはできません。学校の要請、地域の産業、および企業のインセンティブを調整する必要があります。そして、このようなプログラムに対する教育行政官や学校教員の意識改革も必要でしょう。

連携するために必要なこと
 開かれた学校が求められるのは日本だけではなくアメリカでも同じことです。パートナーシップを構築するためには、乗り越えなければならない壁として、学校と行政の保守派にプログラムの意図を理解してもらうよう辛抱強く説得することが重要です。
(教育家庭新聞2000年7月1日号)