韓国の100校プロジェクト<2>

2000年までに6000校を接続

スクールネット研究会代表・影戸誠

韓国のオリンピック記念講演で

国の施策としてのインターネット

 韓国は国を挙げてインターネットに取り組んでいる。というのも1990年から始まった教育改革の中に重要な柱として位置づけられているからだ。英語についても小学校の中学年から必修とし、さらにネット環境も2000年に向けて整えていこうとしている。

福岡の国際会議で出会った忠北大学のリー先生はそのプロジェクトの推進者でもある。

「とにかく、大学、政府、現場3つが一体となってやらなきゃなかなかうまくネットワークが機能しないですから」と彼女はいう。力のこもった英語できびきびと僕の質問に答える。韓国の女性リーダーではあるが、若い力のある女性が地位と職場を得つつあることを感じさせた。

リー教授の話の中で次のようなことが分かってきた。

 韓国政府は首相を委員長とする「情報化委員会」において国内全般の情報化推進を図っていること。

この事業は1995年から2000年までの間の国家施策であり、

・ インターネットの教育利用促進

・ 教育を含む国内ネットワークの整備

・ マルチメディアソフトの開発

・ 遠隔地教育の充実

・ 教育関連データベースの整備

・ 電子図書館の設置

の6つに力点を置いている。

 

小中高関連の施策

小中高に直接関連のある施策をいくつか拾ってみると次のようなものがある。現在小学校、中学校で週2時間程度取り組まれている情報教育を推進するために、現在35000台のコンピュータが教員に対して貸与されているが(全体の10パーセント)、2002年までには一人一台の環境をそろえていくとのこと。新聞社、中央日報が取り組んでいる韓国版100校プロジェクトをさらに推進し、2000年までには6400の学校にインターネットを導入するという。さらに2002年までには全学校をインターネットで結ぶという。

日本の中教審は「近い将来すべての学校を」と目標年次を明確にしていない。お国柄の違いもあろうが現場としては具体的な数字が欲しいところだ。

 回線も現在あるスーパー情報ハイウェイを1998年までには2Mbps―45Mbpsとし、さらに2000年までには45Mbps―155Mbpsにまで高めようとしている。

アジアスクールネット稼動開始

1月28日から香港で教育におけるインターネット利用のついての国際会議が開かれた。韓国、台湾、香港、日本それにアジア諸国から200名以上の大学関係者を中心とする人々があつまった。私もその誘いを受けたのだが、高校教員はなかなか動きがとれない。教育委員会に対する書類、学校管理者に・・それはもう大変である。結局、今回は不参加ということになったが、これから国際交流を考えていくときこのような会議に教員も積極的に参加していくことが必要なことと思われる。

この会議はAsia Pacific Networking Groupといわれ日本からはネットワークの教育利用を考える東大の石田先生、中山先生、さらには早稲田大学後藤先生はじめ多くの方が参加されている。これまでにシンガポール、モントリオールで会議をもち、教育のおけるインターネット利用についての国際的な情報交換の場を提供している。大学の教員を中心としてボランティアグループで、今回の会議では香港の中学、高校でのインターネットの活用事例が報告された。

香港の会議についてはhttp://www.polyu.edu.hk/apng/ 

APNGについては、http://www.apng.org/を参照されたい。

 

新たなアジアの動き

韓国との交流も目指しているアジアー日本高校生インターネット交流プロジェクト(CEC共同利用企画)がインターネット‘97の国際会議で発表原稿として採用されることとなった。

これは今年6月24日から27日までクアラルンプール(マレーシア)で開催される会議である。この会議には参加し是非アジアでの高校生の日常的な交流をさらに推進させたいと思っている。詳しくはhttp://www.isoc.org/.から情報を得ることができる。

 学校間(大学―高校―中学―小学校)、国の壁をこえてネットワークは確かに速く、国の壁を突き破る。しかし最後にそのすばらしい機能が浮き立たせるのはそれぞれの国のアイデンティティーであり、一人一人の人間である。今まで大学、高校等の交流、共同プロジェクトはあまりなかったように思う。日本の100校プロジェクトによって、大学のサポートを受けながらインターネットの教育利用は飛躍的に前進しつつある。

今、次のステージに入ろうとしているように思えてならない。

インターネットの巨大なネットワークに教室をつなぎ、日本だけでなく各国の大学、研究所と協力し、次の世代を担う各国の生徒、児童にたいしてよりよい教育をしていく、そんな方法が今現実となりつつある。日本の教育をどうしていくか考えるとき、その中にアジアの教育をどうして行くかという視点を取り入れながら考えていく時代では無かろうか。「経済分野だけのアジアの国際化」が今やっと終わろうとしている。

(教育家庭新聞96年11月9日号から)