食の指導実践校ルポ・愛知県
和食器作り通し食に触れる 本格的な窯業室、のぼり窯完備 瀬戸市立品野台小
環境を配慮して建てられたエコスクールとして平成11年4月に完成した瀬戸市立品野台小学校(伊藤良三校長・児童数191人)。8つの普通教室と職員室が、壁に仕切られることなく一体的に活用できるオープンスクールで、広々とした多目的広場や地域に開放される特別教室、自然を生かしたビオトープなどが整備され、子ども達の「学びの場」が至る所に。ランチスペースは多目的スペースの一角にあり、縦割り給食など異学年交流の場としても活用されている。バイキングユニットも完備され、おいしい学校給食が提供されている。
学校栄養職員の授業への関わり
同校の学校栄養職員杉野由起子さんは、主に家庭科や、生活科などにおいて授業に参画している。特に家庭科では食の領域など集中的に何時間か担当することもあるという。授業の際、担任との連携がスムーズになるよう、どの学年がどの教科で学習しているか把握し対応できるようにしているという。
「学校栄養職員ならではの指導として、給食の献立を教材に活用して学習に広がりをもたせるように心がけています」と杉野さん。授業のねらいに合わせて献立をたてているとのこと。6年生で行った「ダシ」の学習では、教科書でにぼしを使ったダシのとり方を扱っていたが、「給食では何を使っているだろう」と投げかけるなどして興味を持たせる。「学校給食献立を武器に、担任との連携を図って子ども達により関心を持たせる事が、学校栄養職員の利点ではないでしょうか」と杉野さん。
総合的な学習の時間でのとりくみ
食をテーマにした総合的な学習の時間では、担任の教師と連携し4年生の「豆腐作りに挑戦しよう」に取り組み中である。市販の大豆を使った豆腐作りを導入として、おからや味噌、醤油など多くの加工品について学習し、さらに大豆を栽培し、それを使って豆腐作りへ進む。少しでもおいしい豆腐作りができるよう、インターネットや本などを介して調べ学習が進んでいる。
夏休みに行われた親子クッキング教室では豆腐を使ったドレッシング、おからマフィン、ビーンズカレーを作り、保護者たちにも大好評だったという。「豆腐作りをきっかけとして、各家庭で食べる事の大切さを見直すきっかけになってくれればと思います」(杉野さん)。
和食器作り
「せともの」の町である瀬戸市。同校には本格的な窯業室、のぼり窯も完備されており、子ども達は毎年恒例行事として陶器作りを行っている。今年は「食」に関連付けて和食器作りに取り組んだ。2年生は全校分の「箸おき」作りに挑戦しており、現在素焼きの段階。完成後は、給食の和食メニュー時に毎回使う予定になっている。「箸おきを使う事で、箸の向き、食器の置き方を学び、さらに日本の食文化に触れ豊かな心を育んでくれればと思います」と杉浦さん。
食育というと、野菜の栽培や調理といったことに偏りがちになる。しかし、栽培、調理、食事に終始するのではなく、食をテーマとして食文化や食習慣、環境などに広げていきたいと杉野さんは話す。今後も教科学習、総合的な学習の時間、特別活動など様々な教育活動に計画の段階から参加し、学校栄養職員としての専門的な立場から食に関すること等に積極的にとりくんでいきたいとのこと。
全学年「食」テーマに設定 各教科の学習内容にリンクさせ 佐織町立北河田小
名古屋市内から電車で30分程の郊外に位置する海部郡佐織町立北河田小学校(武藤育雄校長・児童数340人)。田んぼや畑に囲まれた住宅街の一角に位置し、兼業農家の多い地域である。3世代で暮らす家庭が多いことから、子どもたちの食生活はそれほど乱れてはいないと武藤校長は話す。しかし同地域も徐々に都市化が進み、今後食生活に意識を持たせることが重要となってくることを受けて昨年度から食をテーマに様々な実践を行っている。
すこやかタイム、 ふれあいタイムの2本柱
同校には、ランチルームの他に空き教室を活用した「すこやかルーム」が今年から整備されている。食に関する掲示物や書籍など豊富な資料が並び、子ども達は自由に出入りすることができ、すばらしい調べ学習の場となっている。掲示物は先生方と児童の手作りで、授業でも頻繁に活用されているという。
同校の総合的な学習は、食育をテーマにした「すこやかタイム」(56時間)と、体育をテーマにした「ふれあいタイム」(14時間)計70時間を設定。すこやかタイムでは各学年栽培活動や調べ学習中心に活動している。
各教科とも学習内容をリンクさせており、6年生は大豆をテーマに、種類や加工食品調べ、大豆の栽培、さらに豆腐作りを行い、それらを通じて3学期には世界の食事情の学習へと発展させていく予定。
5年生は、バケツ田んぼで米作りについて学び、国語の時間に「バケツ田んぼ新聞」の制作、社会科では米を使った地域の食べもの調べ、家庭科では米を使ったおやつ作りや輸入米を使った料理なども行っていく。またインターネットで、南アフリカ共和国日本人学校の生徒たちと交流学習を行い食文化の比較などの取り組みも。
4年生は「食べものとわたし」というテーマで、食について関心のあることや疑問に思っていることを自分たちで見つけ、共通の課題をもつグループに分かれ、調べ学習や実験などに取り組んでいる。同時にサツマイモの栽培にも取り組み、収穫後、からだに良いおやつ作りを行う。3年生は地域の人に教わりながらのもち米作りから伝統食についての学習、2年生は食に興味を持たせる段階としてハツカ大根、ニンジン、ミニトマト、落花生の栽培から成長の記録活動、1年生はサツマイモやひまわりなど栽培活動中心の取り組みをおこなっている。
学校栄養職員の参画
同町内には6つの小中学校があり、それぞれ自校方式で給食を作っている。学校栄養職員は町内に2名のため、1人が3校を担当する形。同校では、全学年毎学期1回のペースで学校栄養職員の三輪典生技師が総合的な学習の時間に参画。「栄養指導の時間」として、食べ物のはたらきや、基礎食品群、おやつの上手な取り方など、総合的な学習の時間の流れに合わせて主に授業導入部に専門家の立場からT・Tの形で授業を行っている。
先月末に、6年生のクラスで「自分の朝食を見直そう」の授業を参観した。自分たちの食事を思い出させ記入させてから、朝食を摂らないとどうなるか、バランスのよい朝食とは何かといった内容を豊富なパネルを使って解説。その後、自分たちでバランスのよい献立を考えさせるといった授業を展開した。「低学年は、食べ物の名前を覚えて、少しでも食に親しむ事のできる内容に。高学年は自分の食事を振り返り栄養バランスについて考えられる授業を展開するようにしています」と三輪技師。
栽培活動を通して食べ物の大切さを学び、栄養指導の時間にしっかりと食について学ぶ。さらに地域の人に教わりながら教科学習とリンクさせることで、食への興味や探究心を高める取り組みが総合的な学習の時間を中心として学校全体で展開されている。(2002年10月13日号より) |