連携して虐待防止を



 児童虐待防止マニュアル作成を支援−厚生労働省はさきごろ、平成14年度、児童虐待防止に向け、児童相談所や保健所、医療機関など地域の関連機関が連携し一体となって児童虐待防止に取り組めるように、都道府県・政令都市が各機関の役割などを定めたマニュアルを作成することを支援すると同時に、虐待を受けた子どもへの精神的なケアを充実させる目的で、全国に108か所ある児童相談所の一時保護施設のうち、一定以上の規模を持つ施設に対し「主任児童指導員」を配置する方針を固めた。

相談件数1万7725件
 同省の調査によると、全国174か所の児童相談所が平成12年度中に処理した虐待に関する相談は1万7725件で、前年度に比べ52・4%増加。これを分析したところ、病院や保健センターなどの関係機関から児童虐待の通告を受け、児童相談所が親への指導に乗り出しながら児童が死亡したケースは、平成11年度の5人の2倍以上の11人にもおよんだ。
 内訳は、死亡した子どもは1〜6歳(男子7人、女子4人)で、実母とその内縁の夫からの暴行によって死亡した3歳男児のケースでは、保育所からの通告で家庭訪問を行ったものの実母が子どもを連れ、内縁の夫のもとに引っ越したために、転居先が把握できないうちに死亡していた。一方児童の一時保護も6168件と平成11年度の4319件から大幅に増加。虐待が疑われる家庭に対する立ち入り調査件数も平成11年度の42件から2倍以上の96件に増えている。

児童相談所中心に 
 こうした事態を重く見た厚生労働省は、早期発見を行うためにも児童相談所を中心に保健所、医療機関、福祉事務所といった地域の関連機関が密接に連携し合いながら、素早く対策をこうじることの必要性を判断した。
 今回の対策では、都道府県・政令市が各機関の連携を図るためのマニュアルを作成する際に、その経費の2分の1を補助して支援する。また各機関別の対応マニュアルはすでに多くの都道府県・政令市が作成しているため、有識者による検討会などを設置しそれぞれの機関を役割を改めて検証してもらう考えで、今後3年間で全部の都道府県・政令市で、B連携マニュアルCを作成してもらう。
 虐待を受けた子どもを親から引き離して預かる一時保護施設についても、子どもたちの心の傷を手厚くケアするため、年間で平均11人以上を預かる施設に対しては、主任児童指導員を配置。経験を積んだベテランとして児童指導員や保育士といったスタッフを取りまとめ、施設全体としてより以上の適切な処置をとってもらう。なおこの主任指導員については全国で24人の配置を予定している。
 平成12年11月には「児童虐待防止法」が施行、児童相談所による立ち入り調査権が強化されるなど、虐待の未然防止と子どもの早期救済に向けて対策が強化されているが、今回の措置について同省では「連携することでより一層の早期発見につながるはず」と期待している。





(2001年12月15日号より)