小学校の調理場順次ドライ化
  
広々としたスペース 下処理、検収室などが独立


 市内全小学校で単独調理場方式をとっている横浜市では、平成10年度より毎年十数校程度の調理場を改築、増築して、完全ドライシステム化が行われている。今年度は16校(1校は新設校)で工事が着手されているが、来年度以降についてはまだ未定。これまでに改築された調理場はすべて、検収室、下処理室、調理室、洗浄室、残渣処理室が独立した部屋に分かれていることが特徴である。


■瀬戸ケ谷小学校

 市立瀬戸ケ谷小学校の調理場は平成10年度に完全ドライシステムの改築が行われた1期校。前施設は昭和50年に建てられたため老朽化しており、全面改築が行われた。食品保存庫、食品冷蔵庫、熱風食缶保管庫、器具消毒保管庫、5基の釜などが完備され、下処理室のシンクの数は非加熱食品用4層、加熱食品用4層、洗浄室にも8層のシンクがある。場内の広さも従来と比べ1・5倍になった。
 同校もすべての部屋が独立になっており、前室といわれる部屋を通らないと他の部屋に行けないようになっている。下処理室で洗った野菜などは、窓を通じて調理室へ渡され、人の行き来はできない。調理室に入る場合は、靴と前掛けを取り替えて、エアーシャワーを通過してから入室することになっている。また下処理室で使った包丁やまな板などは下処理室内で洗浄・消毒される。器具の洗浄はすべてその部屋の中で片付けることが基本となっている。
 完全ドライシステムと聞くと、絶対に1滴も水を落としてはいけないようなイメージがあるが、「調理中に多少の水が落ちてしまうことはありますから、その時はすぐにふき取るよう心がけています」と同校栄養職員の山田洋子先生。床にはグレーチングと呼ばれる溝が何個所かあり、垂れてしまった水はすぐにふき取り、このグレーチングに運ばれる。
 山田先生はこの施設の欠点として、適切な所にグレーチングがないこと、台車を洗う場所がないこと、洗浄室のシンクが直列で洗いにくいことなどをあげている。このように稼動してみてわかった改善点などの情報は市の調理室標準設計図部会に持ち寄られ、それらのデータをもとに2期校、3期校の改築が行われている。新しい施設はより改善され使いやすい施設となっている。
 ドライシステムになって今年度で3年目を迎えるが、「調理員とお互いの共通理解が図れ、やっと動きに慣れてきた段階です」と山田先生。来月行われる試食会では、「ドライシステムでの調理を見てみたい」という親の要望を受け、試食会に合わせて窓越しやカウンター越しに見学会も行われるとのことだ。

■西柴小学校
 昨年7月から全面改築の工事が行われ、今年4月から稼動している市立西柴小学校の調理場。昭和48年に建てられた前の施設に比べちょうど洗浄室の部分が広くなり1・4倍の広さとなった。スペース的には瀬戸ケ谷小学校よりも広々としており、欠点として指摘されていた台車の洗い場やグレーチング、洗浄室のシンクの位置についても改善されている。自動手洗い所は、前室1、検収室1、下処理室1、調理室2、洗浄室1、トイレ1の計7か所。手をかざすと自動的に水が出るので、蛇口が汚染されることもない。今のところ、特に問題点となるような点は見当たらないとのこと。
 「調理場の工事中に、調理員は市内のドライシステムの学校へ一か月間研修に入り、ウエット校でもドライ校での調理作業を意識しながら仕事を進めてきたので、稼動後比較的スムーズに作業に入れたと思います。3期目校ということで、研修の面でも施設改善の面でも比較的恵まれていました」と学校栄養職員の川原まゆみ先生。「ドライシステムになったことで過信せず、常に食中毒の危険と隣り合わせであることを意識し、ウエットの時にドライ化として実践していたことを心がけて調理にあたっています」と話してくれた。
 給食の時間になると、当番の子ども達は給食室に集まり、食器、食缶、牛乳とそれぞれカウンターや保管庫から取り出し、冷たいおかずは直前まで冷やされた冷蔵庫から直接受け取る。食缶を受け取るスペースの隣には小さな窓があり、そこは川原先生の部屋。ちょっと覗いて先生に話しかけていく子どもたちの姿もみられた。



(2001年6月9日号より)