保健室の健康相談活動


群馬県・県立長野原高等学校
卒業後も意識して 幅広い相談内容に向き合いたい

 草津温泉の入り口、山と川に囲まれ自然豊かな町の一角に位置する群馬県立長野原高等学校。全校生徒数213名と小規模校ということもあり、保健室では訪れる生徒一人ひとりへの対応が密に図られている。
 同校の保健室来室状況は年間約2500件。そのうち約8割が心の問題への対応であると言う。相談の内容の多くは友人関係、男女関係、性の悩みなどだが、「学校を辞めたい」「イライラする」と言って訪れる生徒も後を絶たないという。「全てを受けいれているとキリがないですが、状況を見てできるだけ話を聞くようにしています」と養護教諭の黒岩治恵先生は話す。話を聞く時は話を遮らず、最後まで聞く。特別な指導や指示はしていない。しかし、全部話したことでスッキリして授業に戻る生徒もいるとのこと。
 黒岩先生の通称は「鬼ババ」。「鬼ババへ」というタイトルで何通もの手紙が保健室に届く。手紙には、家族のこと、友人のこと、恋愛のことなど日常の出来事を綴ったものや、初めての性交渉、子どもの頃の虐待の告白など内容はさまざま。「誰かに聞いてほしい」という思いが強く伝わってくる。先生は、これらの手紙を全てファイルし時々読み返しているという。「思春期の不安定な心の一部に少しでも関わり、生徒自身が乗り切る手助けができれば」と黒岩先生。
 取材中も、授業中、休み時間、放課後と時間を問わず、「ちょっといいかナ」と生徒たちが顔を出す。保健室がすっかり子どもたちの心の癒し場所になっているようだ。「一人で考え込んでいるよりも、口に出して相談してくれる分、まだ安心なのかなと思います」(黒岩先生)。
 卒業後は半数以上の生徒が社会に出ることから、その時のことも考え、ただ優しく接するだけでなく、時には厳しい態度で接することもある。そのバランスが難しいとのこと。
埼玉県・加須市立昭和中学校
生きる力与える支援 人間関係築く授業を実践

 埼玉県加須市立昭和中学校に、平成12年4月に赴任してきた養護教諭の青木美子先生。それまで長く小学校に勤務していた青木先生は、子どもたちから寄せられる相談件数の多さや内容の違いに初めは戸惑いを感じたという。
 はじめは体の不調を訴えてくる子がほとんどであったが、いろいろと対応していく中で子どもたちから自然と悩みを話し始めるようになっていった。その時はできるだけじっくりと話を聴く態度をとる。また初めから「心の病を聞いて下さい」と言って訪れる子もいるそうだ。
 子どもの相談が多いのは、クラス替えを行う4月、5月が特に目立つ。友達ができない、クラスに馴染めない、孤立しているといった悩みが多い。それらが微熱や腹痛といった身体的不調になって現れてくるそうだ。相談を受けた後は、担任や学年主任などと連携を図っている。
 子どもたちが相談できる場所として、保健室のほかに同校には「さわやか相談室」というものがある。埼玉県で平成10年度より全中学校に設けているもので、相談員は常時在室しており、子どもたちの相談を受けている。また、ボランティア相談員が週に1度学校を訪れ、校内を巡回して子どもたちと話をするということも。それでも保健室に寄せられる悩み件数は多いという。
 悩みの大半が人間関係によるものであることから、青木先生は学級活動の時間などに教室に赴き、担任とT・Tを組んで構成的グループエンカウンターを活用した授業に取り組んでいる。様々なプログラムを通して、自分自身を知り、他人を思いやる気持ちを育てていく。自己紹介をし合ったり、グループになって意見を出し合いお互いを認め合ったりすることで、本音と本音で付き合い、人間関係を築く学習。周りの友達のことがわかり、自分の意見を言えない生徒が自分の本音を言えることができるようになったりするという。
 昨年度、1年生の2クラスで実施したが、今年度もより多くのクラスで推進していきたいとのこと。「子どもたちが悩みをもつ前に、予防的な手段として人間関係を作るきっかけ作りになればと思います」と青木先生。
 今後は個別の対応も重視しつつ、人間関係作りに視点を置いた取り組みを通して、多くの子どもたちに生きる力を与えるための支援をしていきたいとのことだ。
群馬県・渋川市立豊秋小学校
毎日の対応の中で話しかけ 情緒教室での心の面のアプローチ

 小学生では、初めから相談目的で保健室を来室する子どもは少ない。まずお腹が痛い、気持ち悪いといった体の不調を訴えてやってくる子どもが多い。
 群馬県渋川市立豊秋小学校の保健室もケガをしたり、体調が悪い子ども達の対応に毎日追われている。養護教諭の武藤博子先生は、毎日の対応の中で、単なる体の不調なのか、心因性のものなのかを子どもとのやりとりの中で判断しているという。
 頻繁に保健室を訪れる子には、体調の確認をしつつ「心配なことはない?」「気になることがある?」といったように少しずつ話をかけていく。子ども達の悩みの大半は友達関係や学校生活のこと。「特別に相談日などを設けてはいませんが、いつでも受け入れられる保健室を目指しています」と武藤先生。気軽に来られて、何かあれば相談にこられる保健室が理想だという。
 自分の気持を整理できていない子どもが多いが、わかってもらいたいという思いは強く、聞いてもらう中で徐々に気持が整理されていく場合もあるという。「何かを指示するのではなく、気持ちを理解するように肯定的な姿勢で聞き、本人の辛い気持ちを受け止めてあげるようにしています」。子ども達との関係つくりを大切にしている。
 豊秋小学校には、情緒教室があり、情緒面に障害のある子ども達に対応している。同校に昨年設けられ、現在2名の児童が在籍している。長く保健室登校していた子どもが引き続き情緒教室に入る場合もあるという。同教室では、心の面のアプローチと学習面でのアプローチが個別に行われている。


(2001年7月14日号より)