学校調理師大会 8月9日、10日


 平成13年度学校調理師研究大会が8月9日(木)、10日(金)に文部科学省別館(虎ノ門ホール/東京・千代田区)で開催された。文部科学省、日本体育・学校健康センター、日本学校調理師会主催。(財)学校給食研究改善協会協賛。
 1日目は、金田雅代氏(文部科学省スポーツ・青少年局学校健康教育課学校給食調査官)による講演「学校給食における衛生管理の改善について」のほか、伊藤武氏(麻布大学客員教授)の講演「温度管理で食中毒防止」が行われ、学校調理師による実践発表が行われた。2日目は1日目に続き実践発表が行われた後、料理研究家の村上祥子氏による特別講演「食は生命のみなもと〜電子レンジを用いた手早い調理の工夫と食のポイント」が行われる。
 全国から学校給食調理師ほか学校給食関係者約1200人が参加。

【学校給食共同調理場の衛生管理〜大会実践発表より〜】

ドライの先駆け稼働17年目
静岡県焼津市・大井川学校給食センター 独自マニュアル作成し改善

 静岡県焼津・大井川学校給食センターは昭和59年にドライシステムの調理場として稼働し、すでに17年が経過。管理棟を挟み、南北に同じ規模の給食施設がある1場2棟方式。完全ドライシステムの調理場は当時まだ全国でも珍しく先駆け的な施設であったが、現在では老朽化している部分も見られ、また最新のドライシステム調理場と比べると不備な点が見られるため、現在大幅に改善を図っている。大規模な施設改修としては下処理室、検収室を増改築し、下処理室は2レーンから3レーンに。作業スペースを広げて余裕をもって作業できるようにした。下処理室から調理室へは自動扉で仕切られている。
 「当時ドライシステムという施設がまだ目新しかったこともあり、稼働してからしばらくはなかなかドライの感覚が調理員の中に根付かず、けじめがつけられていな場面が多々ありました」と調理長の藤ケ谷準一さんは当時を振り返る。「下処理室は常に水浸し状態で長いホースが至る所に丸めておいてある状態でした。下処理室をドライに保つのは無理だろうと決めつける始末でした」(藤ケ谷さん)。そこでこれらを改善するためにドライシステムにおける衛生管理について独自の衛生マニュアルを作成。調理員も参加して作業工程表やタイムスケジュール、作業動線などを作成し、それに伴う設備の見直しを行った。
 まず意識改革として水を落としたらすぐに水切りをすること、汚染区から非汚染区に移動する際の手洗い、消毒の徹底、ホースを短くして掃除する時だけに使用することなどの改善を行った。施設の面では水道の蛇口レバーを長くしてひじで操作できるようにしたり、ビニールを貼ったついたてパネルを活用して、水はね防止や異なる作業と作業の間に立てるなどの工夫も。その他、まな板4種類、エプロン7種類の色分けをするなどして行動一つ一つを全てをマニュアル化した。また細菌検査を随時実施し、その結果を調理員全員に提示。改善されない箇所は何度も検査を行ったという。
 同センターの調理員は25名の正規職員のほか48名のパート職員が働いている。調理長が1名、各棟にそれぞれ副調理長が1名ずつ、さらに作業ごとに5つの班に分かれ班長、副班長の指導のもと毎日、調理作業や調理工程に関するミーティングを行っている。こうした日々の細かな指導、チェック体制によって徐々に改善が図られてきたということだ。
 同センターでは現在、焼津市、大井川町の小学校13校、中学校9校に副食(おかず)のみおよそ1万4000食を提供。南北の棟でそれぞれ2献立ずつ、1日に4献立を作っている。焼津港の近くに位置していることもあり、地場産物である魚を使った料理が1週間のうち3、4日出されており、ツナカレーや大豆とマグロの竜田揚げ、しらす入りシューマイとどれも子どもたちの人気メニューとなっている。


調理員の意見生かし
宮城県仙台市太白・学校給食センター 作業1つひとつ見直し

 仙台市で初のドライシステム共同調理場として平成10年8月より稼働している仙台市太白学校給食センター。設計の段階ではじめから栄養士や調理員が参加していなかったため、実際に作業してみてうまく対応できていない場面など改良しなければならない部分が多々あり改善を図っている。
 調理場内は小学校、中学校それぞれ別棟の調理場に分かれて作業が行われている1場2棟方式。小学校6000食、中学校9000食を調理している。スペースが限られているため、平釜ではなく3000食用の大釜を設置するなど、新しい機器類が目立つ。特に大釜は調理員全員が使った事がないため、ドライの作業を覚えると同時に使い方の研修を何度も行った。
 市内でも初の施設ということで、ウエットからドライへの切り替えに、初めは戸惑う部分が多かったという。ウエット調理場からドライ調理場へ移るにあたり稼働前には徹底して研修を行った。「稼働時には数か月間職員全員で話し合い、献立ごとの動線の確認などを1つひとつ行っていきました」と主任の宮下芳凡さんは話す。床が濡れる、台車の移動がうまくいかない、消毒済みのザルをどこに置くかといった問題が山積していたという。昨年6月に同センターで「東日本地区学校給食衛生管理講習会」が開催されたことを機に、なかなか内部の職員だけでは気付かない点を指摘されさらに細かな点まで全面的に改善を図っていった。
 具体的な改善点としては、それまでレバーを締めていた台車の水切りは作業終了後レバーを開いて作業台、シンクは乾燥させる。食材ごとに洗い方を一覧表にし、水はねに気をつけて野菜を丁寧に洗う、保存食を各容器ごと密封する、下処理班のマスク着用の徹底など1年間かけて細部にわたり改善を行った。
 またセンター栄養士と調理員の代表者とでマニュアル作成委員会を発足し、安全と衛生を組み合わせた独自のマニュアルを作成して衛生管理の徹底を図っている。作成にあたっては調理員からの意見を最大限生かしたという。またマニュアルを作って終わりではなく、随時、調理員同士で声掛けをするなどして意識の改善を図っている。
 「『どうせ施設・設備に問題があるから、これしかできない』とあきらめていた姿勢から、施設・設備の不十分な点を職員の創意工夫で克服し、長所を最大限に生かして作業効率を上げ、衛生的でより良い給食を児童生徒に提供していこうという気持が生まれてきました」と宮下さんはこの1年間を振り返る。細菌検査の実施など、成果をその都度検証しながら進めてきたことによって調理員の意識の向上が図られてきたとのこと。
 単独調理校とは違い、子どもの顔がなかなか見えない学校給食センターだが、年に1度調理員も学校を訪問し、先生や子どもたちからの要望を聞くなどしている。また、『給食だより』もフル活用し、6月には食中毒防止の記事を掲載して家庭への情報発信も行っている。
 現在、仙台市では、2つ目のドライシステム方式の共同調理場が建設中であり、単独調理校の改築によるドライ化が進んでいる。設計の段階から、検討委員会には現場の栄養士や調理員も参加し、現場の声を最大限反映するよう配慮されているという。


(2001年8月11日号より)