心の健康と生活習慣に関連性

 「いらいらする」「自分に自信がもてない」「楽しくない」といった子どもたちの心の健康が問題となって久しい。子どもたちの生活習慣と心の問題には関係があるのだろうか−−文部科学省は全国規模の調査としては初めての「児童生徒の心の健康と生活習慣に関する実態調査」(座長:高石昌弘国立公衆衛生院顧問)を実施。心の健康と、食習慣、運動、休養、睡眠などの生活習慣との相互関連を調査し、報告書をまとめた。


 調査は平成12年10月、11月にかけて、小学2、4、6年生、中学2年生、高校2年生約1万人を対象に実施。「心の健康」では、自己効力感、不安傾向、行動、身体的訴えの4項目、「生活習慣」では食事習慣、家族の役割、運動習慣、休養・睡眠習慣について聞いたもの。
 報告書によると心の健康状態と生活習慣との間には、ある程度の相互関連性があることが明らかとなった。心の健康度が低い者は生活習慣も悪く、逆に心の健康度の高い者は生活習慣も良いという関連性が認められた。心の健康度が低い者ほど「朝食を食べない」「朝食をひとりで食べた」「家族との会話がなかった」「寝る時間が決まってない」との回答が多く、心の健康が高い者ほど「家族に相談する」「学校の体育の時間以外に体を動かしている」「すぐに眠りついた」「すっきり目がさめた」との回答が多い。
 校種別で比較すると、小学生の場合、中学・高校生ほど心の健康と生活習慣に相互関連性が明確に出ていない。これは、小学生の時期は親との関係が密着しているため生活習慣が多様化せず、中学生になると生活の自己管理が進む事で心の健康と生活習慣の相互関連性が出てくるものと捉え、小学生の時期こそ心の健康と生活習慣の育成が重要であると示唆している。
 報告書では、生活習慣の改善を通した心の健康問題への具体的な対応策として、年齢変化や性差に即した対応、心の健康に関連すると思われる生活習慣項目の把握、規則正しい生活リズムの確立など5項目を挙げている。また、子どもの日常生活に深いかかわりをもつ学級担任、養護教諭、学校栄養職員らを中心とした心の健康に関する教育を推進する協力体制の確立が求められるとしている。
 同省はこの調査結果をもとに、今年度、児童生徒の心の健康に係わる指導のための参考資料を作成する予定。

〈心の健康〉

 心の健康に関する調査を見てみると、「自己効力感」では、「やればできると思う」の項目に、小学生、中学生、高校生ともに約9割が「よくあてはまる」「ややあてはまる」と回答している。小学生では、「自分は誰の役にも立たないと思う」が、学年が上がるとともに「よくあてはまる」が減少。中学生・高校生では、「私は自分に価値がないか他人より劣っていると思う」の項目で「よくあてはまる」が約5割にのぼった。
 「不安傾向」では、「わたしなんかいないほうがよいと思う」では、学年が上がることに「あてはまらない」との回答が高くなり、「学校は楽しいと思う」は、「あてはまらない」の回答が高くなっている。中学生・高校生では、「私はとても心配ばかりする」「友だちのことをうらやましく思う」の項目で「よくあてはまる」とした回答が約3割にのぼった。
 「行動」では、小学生の約3割が「急におこったり、泣いたり、うれしくなったりする」と回答。「人にすぐ乱暴な言葉や汚い言葉をつかってしまう」で「あてはまらない」と答えているのは、小学生では学年があがることに減少、中・高校生では増加。
 「身体的訴え」では、「よく頭が痛くなる」「お腹が痛くなる」など全ての項目で小学生の約8割が「あてはまらない」と回答しているが、学年があがるにつれてその割合は減少している。中学・高校生では「排便のリズムがくずれやすい」の項目で学年があがるとともに「よくあてはまる」の割合が増加。特に男子よりも女子の方が割合が高い。
 「私はいらいらしている」の項目には、小学生に比べて中学生・高校生で「よくあてはまる」「ややあてはまる」との割合が高かった。



(2002年4月27日号より)