歯・口テーマに総合学習

          広く健康学習へと発展させ
             
――福岡県小石原小学校 

 文部科学省の研究指定校として歯と口をテーマに「総合的な学習」に取り組んだ福岡県・小石原小学校では、これまでの取り組みを「歯・口からひろがる健康学習1年間」(学事出版)として1冊の実践本にまとめた。
 年間を通じて教科と学級活動はもちろん、「総合的な学習の時間」の全時間を費やし、歯・口をテーマに健康学習を展開。実践内容は実に様々な教科との連携の形で行われ、むし歯や歯周病予防の保健学習はもちろん、噛みごたえのある献立作り(家庭科)、今と昔の歯の健康や昔の歯ブラシについて考える授業(社会科)、国語教材「わにちどり」と歯磨き指導との連携など、歯・口を出発点として広く総合的な健康学習へと発展させている。
 また実践の中では、地域の人々や施設への積極的な取材・訪問活動とともに、さらに学習成果を地域や他校へ発信する場なども多々設けられている。

 今回の研究をサポートし、実践本の編著者でもある大分大学の住田 実教授によると、1年間にわたる総合的な学習を通して、「8020運動」の達成のためには小学生である「今」、「何を」「どのように」学習したらよいのか、まさに「8020運動の原点」に立って課題を見出し、教師や地域の人々の熱心で心温まる支援のもとに「歯・口からひろがる健康学習」を始めたとのこと。
 「歯や口の学習というと、むし歯予防など狭い範囲の学習と思われがちですが、全身の健康、ひいては生涯にわたる健康作りの原点といえます。子どもの興味・関心を様々な分野に広がりをもたせて高められるという意味で総合的な学習のテーマとしてはすばらしいものです」と住田氏。
 地元のファミリーレストランに取材に行き、その学習成果として考案した「歯ごたえのある手作りヘルシーメニュー」を店長に提案した5年生の女子児童や、郷土のオリンピック陸上選手や福岡ダイエーホークスの健康管理士に「歯とスポーツ」の関わりを取材した6年生の男子児童。はじめは人前に出るだけで緊張気味だった子どもたちも、さまざまな機会をとらえて「学習成果を地域の人々に発信」できるまでになったという。
 「主人公は一地方の純朴な児童たちですが、総合的な健康学習を通して、子どもたちの追究意欲の目覚めと、それを包み込む地域の人たちの温かい協力に目を見張った」と住田氏は話す。
 わざわざ学校に出向いて郷土の伝承料理やおやつ作りを丁寧に教えてくれたり、子どもたちの発表を大勢で参観してくれた地域の人々など、それらの様子は住田氏の予想を大きく超える「総合学習」の展開であったという。

現場で役立つ実践本
 これらの実践をまとめた「歯・口からひろがる健康学習1年間」は、小学校におけるすべての教師にとって「現場で役立つ本づくり」を意識して編集されている。
 主な特徴としては、1年間にわたる実践を児童の成長とそれを温かく見守り支援する教師や地域の人々の様子を「1学期から3学期の流れ」という時系列に沿った「1年間のドラマ」として記述されていること。この配列により、同時期の「他学年あるいは学校全体の実践内容」がページの進行や前後の関連により容易に把握できる。
 また詳細な目次からは、関心のあるテーマや実践を選択することができ、それによって「前後の実践の相互関連」や「児童の成長過程」の様子を時系列に沿って読み取ることが可能。
 さらに1年間にわたる実践記録の後には、関係の指導案や年間研究主題が「補章〜指導計画編〜」として明記されており、各実践記録との「読み合わせ」により、より立体的な把握が可能となっている。
 またすべての児童と教師が実名によって記載されているので、特定の児童や教師の反応・会話の学期を貫通した「前後の関連」が把握でき、先に紹介した「印象的な児童の取り組み」に至る布石や、その後の反応・学習成果までを「一連のストーリー」として読み取ることも可能となっている。
 歯・口からはじめる健康教育。ぜひ同校の実践を参考に総合的な学習の大きな柱として取り組んでもらいたい。

(2002年10月12日号より)


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