子どもとからだの健康 -どもり(吃音)-

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子どもの話し方のペースに合わせ】

人と話をするとき、とても流暢(りゅうちょう)に言葉がでてくる人もいれば、「あのー」「そのー」と間投詞が多い人もいます。それは個性の1つともいえるでしょう。ところが出だしの言葉につまずいて、後の言葉が出てこないなどの経験を繰り返すことで、話すことに苦手意識を持ち易くなっていく状態があります。今回はそうした「どもり」(吃音)について、身体障害者リハビリテーションセンター病院の言語聴覚士、小澤恵美さんに話を伺いました。(取材=藤田翠)

 −−−どもるというのはどのような状態ですか?
3種類の大きな症状があります。その1つめは、「ぼ、ぼ、ぼくが」というように、音節を繰り返すことです。ここからどもりが始まる人が多いです。2つめは、「ぼ〜くは」というように、最初の音を引き伸ばして長めにいう状態です。3つめは言葉が詰まることで、話そうと試みているのにも関わらず声が出ず、声帯を閉鎖させて「うっ」となるような感じの言い方です。これらのように言葉におこる症状を「言語症状」といい、どもりの基本的な症状です。

 −−−どもる原因はなんですか?
よくわかってはいませんが、素因的なものがあるともいわれ、それに加えて発達的な要因、環境的な要因、つまりコミュニケーションの環境や親の養育態度などが複合的に加わって問題が生ずるともいわれています。なぜどもるのかがわかるには、言葉がどうやって人の脳内から生まれ、流暢に発せられるのかが解明される必要があります。それが流暢さの障害であるどもりの解明につながるからです。

 −−−発症しやすい年齢があるそうですね。
2歳から5歳位の幼児期に始まる子がほとんどです。子どもたちが活発に文を話し始める急激な言語発達の時期にあたります。その頃にこれといった原因はないのにつっかえ始める子がほとんどです。突発的につっかえ始めることもあります。これらを「発達性吃音」といい、吃音の9割以上が、これにあたります。
一方、成人になって言語を習得した後に疾患によって失語症など言語に障害を生じ、その症状としてどもることがあります。また、心理的に大きなショックを受けた場合もどもることがあります(心因性吃音)。これらを「獲得性吃音」といいますが、今回は幼児期に発症する「発達性吃音」についてお話したいと思います。

 −−−どもる子はどのくらいいるのですか?
子どもたちの5%弱ですが、男子に多く、女子1人に対して男子は3〜7人位の割合です。その理由は不明ですが、男子の方がことばの発達がやや遅めで、ストレスの影響を受け易いからではないかなどといわれています。

 −−−症状は変化しますか
幼児期に発症しても、小学校入学前後で平均50%位の子が自然に、あるいは軽い指導でよくなります。大人になると有病率は1%弱になります。
小学校入学から思春期にかけての症状は、年齢やどもりの特徴によって異なります。症状がしだいに重く変わっていくのを「進展」といい、2つの面があります。1つはどもりを自覚する態度、心理面の進展(変化)、もう1つはどもりそのものの症状の進展(変化)です。この2方面からみて治療(指導)を進めます。

 −−−最初にどもりの3大症状(同音節を繰り返す、冒頭の音をひきのばす、つまる)をお聞きしましたが、それがどのように進展するのですか?
それらの基本的な症状に反応して更に出てくる症状を「2次性症状」といいます。たとえば言葉が出にくいので腕を振りながら、首を振りながら、足を動かしながら言葉を出そうとします。また、声を大きくして「えーと、えーと」といったり、あるいは言葉を避ける、つまり「卵をとって」というところを、「それとって」と言い換えるようになります。そうしたことが症状の1つに加わってゆきます。

 −−−態度や心理面の進展(変化)はどのようですか
幼児は最初言葉をつっかえても自覚しません。それは子どもによって違いますが、学校入学前後になると、気にはしないものの、自分はどもるのだと知るようになります。もっと大きくなると、「自分は話すのが苦手。つっかえるのがいやだ」と否定的な気持ちになり、「これは人生にとって非常に重大な問題である」と、深刻な捉え方をするようになります。


【治療

 −−−治療(指導)はどのようにするとよいですか
本人が話し易いような環境を作ってあげます。どもることへの自覚がない子には、「もう1度」とか「ゆっくりと」などの注意や言い直しをさせないことが大事です。
どもると叱るのはもちろんよくありません。どもることはそのままにして、子どもが何をいいたいのか、内容をよく聞いてあげてください。子どもと話すときは、言葉の妨害をせずに間をとり、最後まで聞くことです。そしてややゆっくり気味に返事をしたり話しかけたりすると、効果があることが多いです。
1つの良い例があります。幼児を育てつつ自分も吃音治療を受けているある女性は、吃音の兆候が出てきた我が子に対し、丁寧な暖かいコミュニケーションをとりました。たとえば子どもからの話しかけを敏感にキャッチし、受け入れ、子どものペースで話しかけたのです。その子はやがて何事もなかったかのように言葉をなめらかに話すようになりました。この例をみると、たとえ素因的なものをもっている子でもどもりを予防するヒントが、この若い母親の接し方の中にあるように思われます。

 −−−子どもさんにどもりの心配があるときは、どこに相談したらいいですか?
言語聴覚士のいる病院や児童相談所、あるいは保健所で相談してみてください。治療は幼児期が一番治りやすいのですが、その時期を逃してもそれぞれの段階でするべきことはありますから、治す目標や方法を変えてゆけばいいと思います。

−−−どうもありがとうございました。

 


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