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日米のリーダーシップを討議

食料安全保障 国際シンポジウム

<font size="-1">赤松広隆 農水相</font>
赤松広隆 農水相

食料・農業・農村基本計画を閣議決定
2020年食料自給率50%へ

  4月7日、都内で米国大使館主催の「食料安全保障 国際シンポジウム」が開催され、トム・ヴィルサック米国農務長官も出席し、産学官の国際的なリーダーらが、食料安全保障を確保する上での世界の問題と今後の課題について、いかにして日米がリーダーシップをとるか討議が交わされた。


 当日は、赤松広隆農林水産大臣がゲスト・スピーカーとして招かれ「世界の食料安全保障と我が国農政の転換」と題し、世界の状況及び日本の見解について語った。

◇    ◇
 10年後、穀物価格が6〜17%上昇すると見込まれており、食料を巡る世界の状況を受けて、各国で農地争奪(ランドラッシュ)の動きが起きております。世界にはさまざまな紛争が起きており、宗教や民族による紛争が多いと日本人は誤解している場合が多いのですが、実は最も多いのは食料を巡る紛争なのです。


 また、世界が直面しているもう一つの危機は地球規模の環境問題です。アフリカでは、2020年までに7500万人から2億5000万人が気候変動に伴う水ストレスの増加に晒されると予測されています。2050年の世界人口は91億人に達するものと予測され、その内79億人は途上国人口です。その人口を養っていくためには、食料全体の生産量を現在より70%増大させなければならないとFAO(国際連合食糧農業機関)では予測しています。
 農林水産分野での途上国に対するODAは、米国が世界第1位で16億ドル、日本が第2位で約10億ドルと、合わせて全体の43%に達していますが、世界のODA実績に占める農林水産分野の割合は、4・6%に落ち込みました。
 我が国のODA成功事例としては、ブラジルのセラード地域の開発があげられます。1979年から684億円を投じて開発したものですが、セラード地域は大豆生産で約1700万d、世界の10%を占めるにいたっています。このような成功体験をアフリカに移転しようと取り組んでいるところです。


 先般、ワシントン条約採決の締約国会議で、大西洋黒マグロ、サメ、宝石サンゴを付属書に掲載することに関して全て否決となりましたが、日本はこれにより世界の水産資源を持続的に管理していくことについて、一層重要な責任を負ったものと考えています。


 我が国の農林水産業は重大な局面に立たされています。私が農林水産大臣に就任して以来、前政権の農林水産政策を大胆に見直し、大きく転換しなければならないと、大号令を発しています。3月30日には、新たな「食料・農業・農村基本計画」を閣議決定しました。今後10年間の職業農業農村政策の、大きな方向を打ち出したものです。


 その中で、我が国の食料自給率を現在の41%から2020年には50%にするという方針を掲げました。我が国の農業再生を図るために、第1に戸別所得保障制度を掲げました。また第2に、農業・農村の6次産業化を掲げています。このほか、消費者のニーズに適合した国内生産を行うため、生産工程管理の拡大や表示の適正化を進めることとしております。
 本年は我が国で、APEC首脳会合が行われますが、その一環として10月に、初めての食料安全保障担当大臣会合を新潟で開催いたします。本年は日本、来年は米国(開催地)と引き続いて食料安全保障を重要なテーマとして議論することは、国際社会全体に貢献するものと考えています。


 世界中の人々に食がいきわたり、健康で幸せな生活を送っていくことができるように、また、水と地と環境が農林水産業の活動によって健全に維持され、資源が循環し持続性のある地球社会が建設されていくように、日米両国が手を携えて尽力していきたいと思います。

 



【2010年4月17日号】