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学校保健センターを目指して
健康相談・観察の充実を

全国養護教諭研究大会 徳島で開催

全国養護教諭研究大会

 8月19日・20日、「平成22年度全国養護教諭研究大会」が徳島県徳島市で開催され(主催/文部科学省、徳島県教育委員会、(財)日本学校保健会他)、全国から養護教諭や教育関係者など約1200名が参加。1日目は講演やシンポジウム、2日目は課題別研究協議会が行われ、大会テーマである「生きる力をはぐくむ健康教育の推進と養護教諭の役割」について熱い討議が交わされた。

 大会1日目は、国立感染症研究所感染症情報センター主任研究官の安井良則氏による記念講演に続いて、文部科学省スポーツ・青少年局学校健康教育課健康教育調査官の采女智津江氏による基調講演が行われた。また、パネルディスカッションでは、順天堂大学スポーツ健康科学部教授の島内憲夫氏をコーディネーターに、学校長や養護教諭など、それぞれの立場から連携の進め方が話し合われた。

【基調講演】

采女氏による基調講演「学校保健安全法等から見る養護教諭の役割‐養護教諭としておさえておくべきこと‐」では、平成20年1月に出された中教審答申ならびに、学校保健法を一部改正して平成21年4月から施行された学校保健安全法で養護教諭の役割がどのように記されているかが紹介された。

中教審答申での養護教諭の位置づけ

 特徴として学校保健関係者の役割の明確化があり、養護教諭の主な役割は「校内外の関係者との連携においてコーディネーターの役割を担う」と明記されている。
 これは単なる連絡調整ではなく、この子どもは受診の必要があるか、どこの機関に紹介したらよいか、どこに相談すればよいかといった専門的な判断が求められる。
 そのため、勤務先の地域には、どのような機関があり、どのような役割を果たしているか把握しておく必要がある。
 また、養護教諭は職務上、いじめや虐待を発見しやすい状況にあるので、子どもの身体状況の異常に気がつき、いじめや虐待の早期発見や早期対応の役割を果たすことが期待される。
 さらに「保健室経営の充実」について明記され、それだけ保健室経営の位置づけが大きくなっていると言える。そのため養護教諭は保健室経営計画を立てて、教職員と連携していくことが望まれる。
 養護教諭の課題については、「養護教諭研修の充実」「退職養護教諭の活用」「養護教諭の養成カリキュラムの充実」「養護教諭の複数配置の促進」の4点が述べられている。
 「退職養護教諭の活用」は、教職経験の浅い養護教諭や養護教諭未配置校に、退職養護教諭を派遣して指導助言を行ってもらうというもの。「養護教諭の養成カリキュラムの充実」については、保健教育や学校における看護を前面に出すべきではないかという意見があり、「養護教諭の複数配置の促進」についても多くの人が養護教諭の複数配置が必要だと認めている。 

学校保健安全法での養護教諭の位置づけ

 子どもたちの安全の確保が重要な課題となっていることから「学校保健法」は、「学校保健安全法」に改称された。その改正の柱の一つとなるのが「保健指導」。これまで学校医や学校歯科医が行うものを「健康相談」、養護教諭が行うものを「健康相談活動」としていたが、養護教諭が行う「健康相談」が法に位置づけられた。
 また、児童生徒の健康状態を日常的に観察することが「健康観察」として明確に位置づけられた。高等学校では10%程度しか行われていない「健康観察」だが、今回の改正で学校での健康観察システムの確立が望まれる。
「健康相談」では保護者への指導助言についても記載された。
 第27条に記載されている「学校安全計画」の策定については、施設設備の安全点検などは「従来から記載されていたが、「児童生徒等に対する通学を含めた学校生活その他の日常生活における安全に関する指導」が新たに盛り込まれた。
 また、職員研修に関する事項も「学校安全計画」に記載された。天窓の落下事故の後も、同じような事故が起こっていることから、教員の危機管理意識を向上させるためにも研修が必要となってくる。

◇    ◇
 まとめとして、中教審答申や学校保健法の改正を受けて、養護教諭に求められる役割について次の5点を挙げている。
(1)学校内及び地域の医療機関等との連携を推進する上でのコーディネーターの役割
(2)養護教諭を中心として関係教職員等と連携した組織的な健康相談、健康観察、保健指導の充実
(3)学校保健センター的役割を果たしている保健室経営の充実
(4)いじめや児童虐待など子どもの心身の健康問題の早期発見、早期対応
(5)学級活動における保健指導をはじめ、ティーム・ティーチングや兼職発令による保健学習への積極的な授業参画

【2010年9月18日号】