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心と体を食がつなぐ
残さい率の低下を実現 香川・宇多津町の食育

第61回全国学校給食研究協議大会

全国学校給食研究協議大会

 昨年、11月11日・12日の両日、香川県高松市で「第61回全国学校給食研究協議大会」が開催された。「『生きる力』をはぐくむ食育の推進と学校給食の充実〜未来につなぐ心と体は食にあり〜」をテーマに、全体会と分科会を通じて学校給食の在り方について研究協議が行われ、学校給食関係者の資質向上が図られた。同県宇多津町内の3名の教諭による実践発表「『望ましい食生活を実践できる児童生徒の育成』〜学校給食を中心に家庭・地域をつなぐ食育の推進〜」から、食育の今を探った。

 実践発表者は、綾歌郡宇多津町の町立宇多津小学校栄養教諭の愛染麻水氏、同校養護教諭の山地朋子氏、宇多津北小学校教諭の真鍋由美氏。

 全国屈指の塩の町として栄えた同町だが、廃止により塩田跡地が整備されマンションや大型複合施設が建設され、新旧の街並みとなった。

発表
実践発表の3人

 宇多津町学校給食センターは、小学校2校、中学校1校、幼稚園1園、保育所1施設の約2100食を提供し、栄養教諭、学校栄養職員が各1名2つの小学校に配置されている。
同町では全国平均と比較してやや小柄ではあるが、体重が突出している学年があり、さらには小4と中1に実施している「小児生活習慣病予防健診血液検査」の結果、平成20年度は13人(うち中学生12人)の個別指導実施者がいた。

 また、給食の残さい率が他市町村の平均よりも高く、学年が上がるにつれて、バランスの良い朝食がとれていないという状況にあったため、この3つの課題解決に取り組むべく、「教育活動全体を通して取組む食育の充実」「学校給食を活用した啓発活動」「健康課題に対する個別対応の取組」とテーマを掲げた。
 「教育活動全体を通して取組む食育の充実」については、町が実施している「小児生活習慣予防健診」と関連づけ、夏休み前に「おやつ」について学習した他、「育ちゆく体とわたし(保健)」で成長に必要な食品について学習したほか、給食献立から成長に必要な食品を具体的に見つけることによって、おやつの選び方について理解を深めていった。

 「学校給食を活用した啓発活動」については、体格の二極化が進み、痩身傾向にある児童生徒ほど偏食が多くみられたことから、町内で共通理解を図った給食指導や啓発活動に取り組むとともに、給食が家庭における食事モデルとなるよう一層の充実を図った。

 具体的には、給食委員会・保健委員会が中心となり、毎日食べている給食に関連した話や食事の大切さについて継続的に呼びかけ、食欲の秋には、「給食がんばり週間」「残菜0運動」を実施し関心を高めた。中学校では、残さいを写真に撮るなど工夫した。

 また、新旧の街並みとなったことで、新町内を中心に核家族化が進み、給食に野菜の煮物や魚を使った料理を出すと残さい率が大幅に上がった。新町内ほどこの傾向が強くみられたため、家庭への啓発も実施。
 「健康課題に対する個別対応の取組」については、宇多津町教育連絡協議会の中にある保健体育部会の“健康教育推進プロジェクト”(給食主任・栄養教諭・養護教諭らで構成)、「早寝早起き朝ごはん」運動、小児生活習慣病予防対策、アレルギー対応食に係る体制作りを中心に取り組んだ。

  小児生活習慣病予防対策としては、肥満度20%以上、または血液検査の結果、学校医から経過観察が必要と診断された児童生徒に対しては、長期休業前に保護者をまじえて個別相談を実施。平成21年度からは、対象者と保護者に呼びかけ、「うたづ元気っ子クラブ」を実施。簡単な運動や地域の大学と連携した食事診断を行った。
これら活動の成果として、授業の課題に自分自身で食を取り上げたり、夏休みの自由研究に選ぶ児童が見られるなど、食への興味関心が高まった。そして、今年度は残さい率が低下、保護者アンケートでは「子どもに好き嫌いがない」と答える割合が増加。「子どもが給食の切干大根煮がおいしいというから教えて」などといった保護者の声もあがってきたという。

  今後は、徳育との関わりを重視した指導、小学校の段階から望ましい食生活の習慣化を図ることを中心に、家庭における食生活のモデルとなるべく給食内容の充実に努めるとともに、学校給食を活用し、家庭、地域と連携した食育を推進していくことが課題とされた。


【2011年1月22日号】

教育家庭新聞