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【特集】新学期の学校図書館
本、どう選ぶ?

【学校事例】埼玉県川越市高階小学校

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窓から明るい光が差し込む「けや木図書館」

 新学期が始まり、学校図書館も新しい年度を迎えた。今年度から実施されている新学習指導要領に基づいた小学校のカリキュラムでは、言語活動、読書指導、図書館の活用が重視されており、学校図書館の重要性はますます高くなっている。そうした中、学校図書館ではどのような本を、どのような方法で選べばよいのだろうか。今回の特集では、現場で指導にあたる司書教諭をはじめ、(社)全国学校図書館協議会(全国SLA)を取材した。

  学校教育で重要な役割を果たす学校図書館の現場では、どのように本の選定を行っているのだろうか。埼玉県川越市立高階小学校山田万紀惠・司書教諭に話を聞いた。

全て手にとり、見て決める

  高階小学校には、主に1・2年生が使う「図書ランド」と、主に3年生以上が使う「けや木図書館」の2つがある。山田教諭は昨年同校に赴任。運営にあたっては山田教諭のほかに、川越市から派遣される「図書整理員(学校司書)」と、読み聞かせを行う地域のボランティアも携わっている。

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山田万紀惠教諭

  「学校の教育課程に寄与し、全学年・全教科の役に立つ様に本を揃えるのが、学校図書館の使命」と話す山田教諭。本を選定するのは、前期が4月下旬〜5月頃、後期が9月頃の年2回。まず同校の「図書部」を構成している各学年の代表の教諭が購入希望の本を挙げる。

  また「学校図書館基本図書目録」「学校図書館 速報版」(共に全国SLA発行)、「私たちの選んだ子どもの本」(東京子ども図書館発行)、出版社のカタログも参考にしながら、本をリストアップ。

 「しかしカタログだけでは、文字の大きさや見やすさ、学年の発達段階に合っているかどうか分かりません。必ず手にとって見るようにしています」と話すように、図書部や、図書整理員と一緒に書店に足を運び、全て手に取り、実際に見て購入を決定する。

  本を選定する際には、常にバランスに気を配っている。本を種類ごとに分類した「日本十進分類表」に基づき、全国SLAが発表した「学校図書館メディア基準」の「蔵書の配分比率」を考慮するほか、全ての学年を網羅すること、学校教育課程の全ての領域に対応できること、古典と新しい本、文字・絵・写真、あらゆる点が選ぶ際のポイントとなる。

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けや木図書館の新刊コーナーは奥に設置し、
児童たちが図書館の奥まで足をむけるように工夫
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絵本などを中心に揃える「図書ランド」

  また、同じ図鑑でも複数の出版社のものを導入する。例えば「昆虫」というタイトルでも、出版社によって作りが違うからだ。調べ物の際には、子どもたちに複数の本をあたるように指導する。

  同校の年間の本の購入予算は、市から約60万円、学校のOBなどで構成される後援会から約30万円の合計約90万円で、学校図書館としては恵まれた環境だ。この予算を使い、年間で300〜400冊購入する。年2回の購入なので、1回の選定は約200冊となるが、前期の方が購入冊数の割合は高くなるという。

  ただ昨年は通常の選定とは少し異なった。市では国語の教科書に光村教育図書を採用しているが、新学習指導要領に基づいた4月からの新しい教科書に「本はともだち」として参考図書が掲載されている。同校ではそこに掲載されている本を昨年度の後期の予算で購入した。すでに図書館にあった本を除いて、30万円程で全て揃えることができた。「新学期のスタートからすぐに必要な本は、前年度から用意しておかなければ間に合いません。また新年度に購入する本は、2〜3月頃から検討し始めます」。

  昨年は調べ学習に活用するために、伝記や詩の本、昔遊びの本などを増やした。「昨年1年間を通じて、国際理解に役立つ本がまだ足りない、と感じました」。今年度は世界の国々に関する本などを増やす予定となっている。総合的な学習で使用する本は意識して集めるようにしている。子どもたちが調べたいテーマが何であっても、その全てに対応できるようにするため、というのがその理由。
「学校教育課程の全ての領域に対応できて“使える”図書館を目指すと共に、子どもの癒しや元気の源になり、本に親しむことで豊かな人生を送るためにも、情報をたくさん集め、10年後も残るような良い本を選びたい」と山田教諭は語る。

 

理想は月1回の選定会議 ―(社)全国学校図書館協議会・森田盛行理事長に聞く

 学校図書館で購入する本を選ぶにはどのような方法が望ましいのか。(社)全国学校図書館協議会(全国SLA)の森田盛行理事長に話を聞いた。

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「学校図書館 基本図書目録」参考に

  本の選定にあたり、図書館の担当の先生だけが書店を覗いて選んだり、年間の図書の予算を学年や教科で単純に割って、それぞれの先生が選定する方法は望ましくありません。また目録やカタログだけを見て決めたり、巡回販売だけで選定するのも、偏りが出てしまう可能性があります。

  理想的なのは、最低でも月1回は本の選定会議を開き、必要な本を選ぶやり方です。現在、高校では月1回、多いところでは週に1回実施しているところもあります。小学校・中学校では4〜5月に1回、9月頃に1回の計2回実施している場合が多いようです。

  選定にあたっては各校の図書館の先生(司書教諭・学校司書)だけでなく、小学校であれば各学年の担当の先生1人、中学校であれば各教科の代表の先生1人、養護教諭や栄養教諭、できたら児童生徒の図書委員長などが図書選定委員となり、選定図書の原案をもとに、互いの意見を交換しながら、本を選ぶのがよいでしょう。たとえ年に1回しか使わなくても、基本的な資料や学習用資料として必要な本もあります。

  選定する際に参考にして頂きたいのが、「学校図書館基本図書目録」(発行:全国学校図書館協議会)です。これは「全国学校図書館図書選定基準」に基づいて選定した本の中から、蔵書の中核となる本、各学校図書館にはぜひ置いて欲しい本を掲載するものです。絶版本は削除し、毎年発行されています。日々の新刊を選定し毎月2回発行している「学校図書館速報版」も併せて参考にして下さい。

  学校教育を支えるのは学校図書館。適切な読書指導のためにも、図書の選定はとても重要です。

【2011年4月18日号】

教育家庭新聞