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震災時の心のケア
“そばにいるよ”と子どもを受け止める

真生会富山病院・心療内科部長 明橋大二先生(精神病理学・児童思春期精神医療専門)

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明橋大二先生

 東日本大震災により、被災地では未だ不安ばかりの毎日が続いている。また、被災していない地域でも電力や物資不足による混乱がある。今、一番戸惑っているのは子どもたち。日本全国の子どもたちが笑顔を取り戻すために何が重要か。「子育てハッピーアドバイス」(1万年堂出版)シリーズで、母親たちから熱い支持を得ている、真生会富山病院・心療内科部長、明橋大二先生(精神病理学・児童思春期精神医療専門)にお話を伺った。

―災害時、心のケアで一番大切なことは、何ですか。直接被害を受けていない地域でも、計画停電や物資の不足など混乱があり、子どもたちは不安を抱えています。

  このたびの震災後、海外から、日本人は冷静だとか、忍耐強いと賞賛されています。しかし、忍耐するだけでなく、自分の気持ちを吐き出したり、感情を受け止めてもらったりすることが大事です。

  子どもは、不安になった時、傷ついた時、まず赤ちゃん返りや甘え、という形で、出してきます。そういう時には、それを突き放すのでなく、受け容れることが大切です。今まで一人で寝ていたのが親の布団に入ってきたら入れてやる。トイレに一人で行けないと言えば付き合う。それによって子どもは安心感を得、心の後遺症、PTSDを予防することになるのです。

  中越地震の時、子どもを持つお母さんにアンケートを取ったところ、何がうれしかったか、というと、「コンサートや演劇を見たこと」だという回答がありました。劇でも「笑えるものが、とてもよかった」と言っています。笑顔は大切なのです。災害のニュース、悲惨な映像ばかり見せるのは、やはりよくありません。見せるのなら、子どもが笑顔を取り戻せるようなもの、皆で楽しめるようなものがいいと思います。

  それを「不謹慎」だとかと抑えつけるべきではないと思います。

  災害時には、いろいろなものを失います。死別もあります。その時、最後に支えになるものは、「人の絆」です。
子どもには、私がそばにいるから大丈夫だよ、と声をかけていく。そして、子どもを受け止めることと同じように、親も受け止めてもらう必要があります。親も、助けを求めていいのです。泣きたい気持ちを聞いてもらっていいのです。親が十分なサポートを受けてはじめて、子どものサポートもできるのです。

【2011年4月18日号】

教育家庭新聞