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【連載】養護教諭制度70周年記念 学校保健功労者に聞く

第3回 心と体を支える学校の柱
東京都世田谷区立芦花中学校
養護教諭 根舛セツ子さん

「点」から「線」「面」「立体」となる健康教育を

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 第3回は東京都世田谷区立芦花中学校、主幹・養護教諭の根舛セツ子さん。

  取材当日、健康教育プロジェクト「ヘルスデイ」(学校歯科医、柔道整復師、料理研究家、地域の大学生が講師となり、2年生の健康教育を実施)が行われていた。保健委員が準備から運営までを進めるものだ。生徒を見守る根舛さんは、昨年度退職し今春から再任用された。

  中学時代、図書室に突然仕切りができ、白衣を着た人が現れた。「誰だろう」それが養護教諭を知った一歩。医師と教師に憧れていた根舛さんは、医療と教育両方を見ることができる養護教諭に興味をもつ。卒業後、故郷の沖縄から上京して養護教諭となった。

  長きに渡る経験から得たことは、1年生は身体の変化に伴う心身のバランスを保つ時期、2年生は心の変化が著しい親離れの時期、3年生は進路を考え初めて自分が決断する迷いの時期で、この3年間の発達課題に合わせた対応が必要だということ。それは、生徒との関わりで得た根舛さんの貴重な財産。その財産の一部を聞かせてもらった。

  養護教諭となって間もない頃、扉に腕を挟み動脈が切れた生徒がいた。駆けつけると生徒の腕からは大量の出血。「先生死にたくないよ」と訴える生徒に、「絶対あなたを死なせはしない」と必死に対応した。「あの出来事は私に救急処置の基本を教えてくれました。長い教職生活で死亡事故を防げたことは、養護教諭として幸せでした」。

  また、都下のある新設校に赴任した時のこと。毎月10人、20人と転入生が入り生徒数が増えてきた時期に、不思議な現象が起きた。休み時間になると二人、三人と保健室に来室し、窓の外を見てため息をつき、チャイムがなると教室に戻る。「生徒の数が増え、常に緊張の日々だったのでしょう。保健室は心の調整をするところなのだと改めて思いました」。

  こういった経験を経て、発達段階に応じた健康教育の大切さを学んだ。「ヘルスデイ」もその一つ。「学年の健康課題なので子どもたちも目を輝かせて学んでくれました」。また、学年と取り組むだけではなく、地域の協力も仰ぐ。「学校を地域の方に見ていただく機会にもなりますし、私たちが伝えられない部分を専門家にお願いし、豊かな健康教育を目指すこともできます」。最初は「点」で行っていた健康教育が「線」となり、さらに「面」になり最後には「立体」となっていく。

  健康教育を充実させるために、保健室経営計画は一人よがりではなく、学校長の「学校経営方針」を受けたものを意識してほしいという。「自分が行っていることがフィットしないと感じることがあれば、学校経営方針に則っているか考えてみてください。それがブレない健康教育の実践につながります。若い養護教諭の皆さんは社交性がありとても優秀です。一人ではなく、皆と一緒に作り上げる健康教育の楽しさと豊かな健康教育を目指して頑張ってほしいと思います」。

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【2011年12月19日号】

教育家庭新聞