【6月 食育月間】平成23年度食育白書 食育を国民運動に<内閣府>

“共食”回数は目標達成

 食育月間となる6月は、16日、17日に神奈川県横浜市で開催された第7回食育推進全国大会の他、多数のイベントが開催される。また、平成23年度の「食育白書」が公表され、23年度に講じた食育推進施策について、「第2次食育推進基本計画」(以下:第2次計画)に基づき「国民運動としての食育の推進」を中心に項目ごとに説明がなされており、第2次計画で定める11項目の目標値のうち、「朝食または夕食を家族と一緒に食べる『共食』の回数」と、「農林漁業体験の経験をした国民の割合」は達成されていることがわかった。例年調査している、食育への関心度は72・3%で、22年調査と比較すると1・8ポイント増。

 食をめぐる意識と実践の現状は、昨年12月に行った「食育に関する意識調査」によると、普段の食事時間が楽しいと感じている人は83%。日頃の悩みや食生活での不安を感じている人は22・8%と平成20年3月調査、21年3月調査と比較すると低くなっている。

安全性への不安や節電意識高まる

 また、東日本大震災以前と食生活が変化したかについての設問では、「増えたり、広がったりしたもの」では『変わらない・ない』と答えた人が55・8%と多く、その他の項目では「食品への安全性の不安」「節電に配慮した食生活」「地場産物の購入」などの割合が高い。

 今後の食生活で特に力を入れたいことは、割合の多い順に「栄養バランスのとれた食事の実践」(58・4%)、「食品の安全性への理解」(50・5%)、「食べ残しや食品の廃棄の削減」(47・1%)がトップ3だが、なかでも「食べ残しや食品の廃棄の削減」については、年々増加している。3位以内には入らなかったが、「家族や友人と食卓を囲む機会の増加」と回答した人は、21年調査の30・8%から44・6%に増加した。

食育推進計画の作成 約6割の市町村が達成

 食育基本法において食育推進計画を作成するよう努めることが求められているが、今年3月現在で全都道府県と約6割の市町村で作成されている。一方で、管内市町村の作成割合が25%未満もあり、北海道19・6%、三重県17・2%、和歌山県20%、鳥取県21・1%、沖縄県9・8%の5つとなっている。

 現在、第2次食計画の2年目に入っているが、数値目標として定められた11項目のうち、「朝食または夕食を家族と一緒に食べる『共食』の回数」と、「農林漁業体験の経験をした国民の割合」は達成しており、目標の達成値に向けて改善がみられる項目は4つある。

学校給食の地場産物 使用割合達成まで5%

 課題となっている項目は、以下の5つ。

 「食育に関心を持っている国民の割合」(第2次基本計画策定時:70・5%→現状:72・3%→目標値:90%以上/以下順番同じ)

 「朝食を欠食する国民の割合」(子ども1・6%→1・5%→0%、20・30歳代男性28・7%→28%→15%以下)
「学校給食における地場産物を使用する割合」(26・1%→25%→30%以上)
「内臓脂肪症候群の予防や改善のための適切な食事、運動等を継続的に実践している国民の割合」(41・5%→42・6%→50%以上)
「よく噛んで味わって食べるなどの食べ方に関心のある国民の割合」(70・2%→69・4%→80%以上)

  第2次計画の重点課題の一つに、「家族における共食を通じた子どもへの食育」が位置づけられているが、食育白書内には、「みんなで食べたらおいしいね」として特集が組まれている。

  それによると、共食の状況は5歳児で父親と朝食を毎日食べる子どもは約3割で、母親との約7割と差がある。また、中学2年生では約3割が「一人で食べる」と回答。すでに平成22年度の「児童生徒の食事状況等調査」でも明らかとなっているが、一人で食べる子どもは、疲れやすくイライラすることが多いことが数値に現れている。

  「共食」の意識については、「家族が一緒に食事をする時間を作るのが難しい」と「思う」人は26・3%で、前年より12・2ポイント減少、「思わない」人は、14・5ポイント増加。家族との食事の機会を作る努力がなされているようだ。

災害時の食事支援等 仕組み作りが広がる

 また、東日本大震災の発生を受け、食育に関連した様々な取り組みがなされ、学校給食については平成23年3月に教育委員会等に対し、炊き出しなど被災地における学校給食施設の使用や職員の協力を要請した。その後も被災地や被災した子どもを受け入れた学校などにおいて、調達可能な物資等の実情に応じて、できる限り給食を提供できるよう配慮を要請。

  避難所では、全国の地方公共団体から管理栄養士の派遣を斡旋・調整するとともに、(社)日本栄養士会へも管理栄養士・栄養士の派遣を依頼し、食事状況の厳しい避難所を中心に巡回指導や個別栄養相談、食事確保への対応を行った。

  地域では、具体的な食料品の備蓄方法を記載したパンフレットの配布や、食育に関わるボランティア団体等と連携した食事提供の訓練など、地域における災害時の食事支援のネットワーク作りの取り組みも行われている。
食育推進施策の具体的な取り組みとして学校においては、まず栄養教諭の配置が年々進み、平成24年4月1日現在では4263人が配置されている。指導内容も充実し、学習指導要領の改訂により「学校における食育の推進」が明確に位置づけられ、小学校では昨年度から、中学校では今年度から全面実施、高校では来年度から学年進行で実施される。
学校給食の現状は(2面詳細)、平成22年5月現在で小学校が99・2%、中学校で85・4%学校給食が実施されており、約993万人の児童生徒が給食を受けている。

地場産物を教材に 方策等を研究中

  学校給食での地場産物の活用は、平成22年度の活用率は全国平均で食材数ベース25%。各都道府県に推進地域を指定し、計画的かつ安定的に地場産物の納入が図られるよう、連携体制を整え、地場産物を活用した学校給食に関する指導の「生きた教材」として活用できるようにするための方策等について、調査研究を行っている。

 

【2012年6月18日号】

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