食育に関する有識者会議 12月に最終報告へ―文科省

一般教員も“食育”指導を

 本年6月より文部科学省で行われてきた「今後の学校における食育の在り方に関する有識者会議」の第5回会議が、11月6日に開催され、12月の最終報告に向けての論点整理がなされた。

  中間まとめで公表された「スーパー食育スクール」(SSS)、「食育の教科書」を中心に議論が進んだ。

  文部科学省は全国8ブロックで各4か所、計32の地域でSSSを実施するための予算を、1か所1000万円程度で次年度の概算要求に計上している。

栄養教諭に必要な力は 食育の"成果のみとり"

■スーパー食育スクール

 第5回の「今後の学校における食育の在り方に関する有識者会議」は、最終段階に討議が進んでいる。

  スーパー食育スクール(SSS)については、その授業方法、内容、時数について各委員から意見があがり、(株)ローソンCEO補佐の鈴木清晃氏は「全体の設計思想を持たなければ、国の政策転換にならない」と、早稲田大学准教授の田口素子氏は「各地域がバラバラの活動をするのではなく、地域の目標はもちろん、共通の基本項目がないと評価する時に困るのではないか」と述べた。

  食育の提唱者でもある、服部栄養専門学校校長の服部幸應氏は「選食力を養う、共食によるマナーやしつけを教えること、地球規模で食を考える、のように大きく3つ程度の柱にわけてほしい。SSSを実施することで、栄養教諭だけでなく一般の教諭の力が伸びるだろう」と期待する。

■食育の教科書

  武庫川女子大学講師の藤本勇二氏は、文部科学省が食に関する指導の6つの目標として掲げる「食事の重要性の理解」、「心身の健康」、「食品を選択する能力」、「感謝の心」、「社会性」、「食文化」と整合性を図りながら「食育の教科書」を具体化していくことが必要で、「大事なことは、教科領域の目標とすり合わせていくこと」と述べる。

■指導内容・方法

  現在、食育活動についいては栄養教諭・学校栄養職員を中心に行われているが、中間まとめでは、栄養教諭の資質向上だけでなく、一人ひとりの教員が主体的に取り組むよう研修の充実を図る必要があるとされている。

  それについて、石山香委員(愛媛県教育委員会事務局管理部保健体育課指導主事)は、現状の食に関する調査分析はまだまだ単純なものが多く、成果指標を具体化する必要があり、「成果のみとりが重要」と述べる。

  馬場錬成座長(NPO法人21世紀構想研究会理事長)は、「全国大会などの発表を拝見すると、考察・評価にまだ慣れていない栄養教諭もいる。手法を導入してあげることで、すぐにそれができるようになるはず」と期待する。

■学校給食の充実

  中学校では学校給食の実施率が85・4%となっており、中学での食育推進が今後の課題となってくる。同時に、効率化を考え共同調理場が増える中、教育的な視点で見ると栄養教諭の配置基準の問題など、検討すべき課題は多い。

■家庭・地域へのアプローチ

  子どもたちが学校で食育を学んでいても、家庭や地域へ浸透していかないと、国民運動にはならない。同会議では、熱心ではない保護者について嘆くのではなく、熱心な保護者から、保護者へ伝えるようにすることが大切であると各委員から同様の意見が述べられた。

  なお、同会議は12月をもって終了となる。

【2013年11月18日号】

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