受信・発信する力 読書活動で養う―H26年度 江戸川区で「読書科」完全実施

 言語活動の充実が求められる中、東京都江戸川区では、平成26年度より総時数35時間以上の「読書科」を完全実施する。それに先駆けて、平成22年度から年間1000分以上の朝読書を実施し、平成24年・25年度は区の研究奨励校として読書科の実施へ向けて準備を続けてきた、同区立清新第一小学校(甲斐裕子校長)が、1月24日に公開授業を開催。「読書表現活動」「調査・発表スキル学習」「学校図書館活用」の3つの内容にわたる20クラスの授業が公開され、都内外より約500名が集まった。

清新第一小で公開授業

江戸川区で「読書科」完全実施

学校図書館で「本探し名人」になる授業を実施

 この日は「読書表現活動」に関する授業が10クラス、「調査・発表スキル学習」に関する授業が9クラス、「学校図書館活用」に関する授業が1クラスで行われた。

学校図書館の活用方法を学ぶ

 3年2組の授業は「本探し名人になろう」(学校図書館活用)を単元名にした授業を、学校図書館で行った。担任の伊澤綾乃教諭と、梅澤智子司書教諭によるTTだ。学習材は同校オリジナルの読書ノートを使用した。

 この日の目標は、「十進分類法を知り、発想を広げて複数の分類から本を探すことができる」こと。授業開始前から「発想」を広げるために、「卵といったら?」「黄色」などのように「○○と言ったら?」「○○」と答える言葉遊びで気持ちを高めていく。授業では、同区の特産品である「小松菜」を例に、小松菜を扱った本には様々な分類があることを梅澤司書教諭が示していく。児童の学習は、学校図書館にある本の中から「小松菜」について書いているものを探し、「本探し名人になろう」シートを完成させることがゴールだ。

 「発想」を広げながら十進分類法を知る

 伊澤教諭と梅澤司書教諭は、「小松菜は菜っ葉なので、菜っ葉は料理に使われるから料理の本?」と言って『菜っぱの絵本』を示す。これは分類6(産業・交通の本)で、選んだら書名欄に記入し、分類6の印となる茶色のシールを貼る。また、3年生になり図鑑を使う勉強をしたことを振り返り、『総合百科事典ポプラディア(4)こ・さ』(分類0・シール黒)からも探すことができることなども示していった。

 最初は分類を予想し、その後に「書名」「目次・索引」「ポプラディア」を手掛かりに発想を広げ、本を探す。分類別に3色使うことができたら「本探し名人」だ。児童はくじで「水」や「ねこ」など7つの言葉を選び、最初は一人で、次にグループで協力して探した。

 授業の終わりに梅澤司書教諭は「一つのことではなく、様々な情報源から調べていくことが大切。4年生になったら、今度は調べる"方法"の名人になってくださいね」とまとめた。

読書の質・量を改善 1・7倍の貸出数に

  同校では、平成22年度から徐々に読書の質・量を改善し、考えを深め表現する力をつけるための学習を進めてきた。その結果、年間の貸出し冊数は1・7倍に増加し、保護者の読書へ対する関心も高まり、また、教科の関連により読書に広がりが見え、全国学力・学習状況調査で6年生国語Bの結果が全国平均を上回るなどの成果が上がった。

  一方で、中学年からの読書意欲に個人差が生まれたこと、読書ジャンルの偏り、高学年には要約し自分の言葉で話す力をつける必要があること、指導と評価の対比などが課題としてあがった。

  授業後のパネルディスカッションでは、東京学芸大学の田近洵一名誉教授らが、意見を交わした。田近氏は「読書活動の基本は本の紹介から。作品の本質を捉えて紹介する活動が重要。情報を取り入れて発信していくこと全体が、読書活動であり、あらゆる教科・学習活動に必要なことを読書の時間に経験することができる」と述べた。

  次年度より同区で完全実施される「読書科」は、読書に親しむ時間(朝読書等)と読書から学ぶ時間(読書活動)で構成され、先の3つの内容で授業が構成されていく。小学校では朝読書等が総時間の6〜7割、読書活動が3〜4割、中学校では朝読書等が総時間の7〜8割、読書活動が2〜3割で行われることになる。

【2014年2月17日号】

<<健康・環境号一覧へ戻る