食中毒の予防には「危害分析」の観点を アルコール除菌で危険を回避

厚生労働省の発表によると、平成25年の食中毒の件数は931件で患者数は2万人以上だ。食中毒は年間を通して件数が多いのが特徴で、魚介類はもちろん、肉や野菜が原因というケースもある。一般家庭のキッチンや食卓における衛生意識を高め、アルコール除菌剤の正しい使い方を伝えることを目的に設立された研究所「アルコール除菌ラボ@キッチン&食卓」(http://alcohol-jokin.com/)は、7月21日に、親子で衛生管理も学ぶ料理教室を開催し、家庭でできる除菌・衛生管理のポイントを理解した。

75℃調理で雑菌はほぼ死滅 生ものは1つずづポリ袋で

食中毒予防
台ふきんに付着した雑菌を見る実験を行うと、その多さに驚きの声があがった
食中毒予防
実習後の食事中も、保護者から食中毒についての質問が飛び交う

前半は家庭内で食中毒を防ぐポイントを、後半は前半の学びを生かした調理実習が行われた。

講師を務めたHACCPコーディネータで栄養士の若宮寿子氏は「衛生は買い物からスタートします」と話し、食中毒を起こさない6ポイントとして、「食品の購入」「家庭での保存」「下準備」「調理」「食事」「残った食品」について紹介。これは厚労省が提案するものだ。

冷蔵庫は10℃以下で

食品の購入時は、肉・魚などの生ものは最後に購入し、トレイを一つずつポリ袋に入れることが重要で、漏れた肉汁などが他の食品に付着することを防ぐ。購入後は氷をもらって保冷バッグに食材を入れ、寄り道せずに速やかに帰宅してほしいと若宮氏は話す。

帰宅後は、食材をすぐに肉や魚はポリ袋のまま冷蔵庫(10℃以下推奨)へ入れることが大切。

手拭きタオル 理想は毎食交換

下準備・調理時にはタオルで手を拭く機会が多いが、「手を洗って拭いたタオルは水分や汚れを含み、それが雑菌の栄養分となるのです。同じものを3〜4日使うのはとても危険。理想は毎食交換です。一番安心な手段はペーパータオルで拭くこと」とアドバイス。

調理は75℃を目安に加熱することで、多くの雑菌は死滅する。食べ残したものを翌日の弁当に詰める家庭も多いが、「冷たいもの」を詰めるよりも「再加熱して冷ましたもの」を詰める方が、菌の繁殖が少ない。

雑菌を広げないように「台ふきん」にも考慮を

また、「台ふきん」も考慮する必要がある。熱湯で除菌し日光を当てて干すのがベストだが、毎日できる人は少ないはず。その代用として若宮氏は「アルコール除菌」を勧める。アルコール除菌は市販されており、スプレータイプやポンプ式の物などがある。

アルコール除菌
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アルコール除菌

濡れた台ふきんは雑菌が付着し、それを使うことで雑菌は広がる。食卓に食べ物を落とした時「3秒ルール」と言って食べる人も多いが、実は雑菌が付着したものを食べていることになるのだ。

子供達は雑菌を蛍光塗料に見立て、台ふきんで調理台を拭く実験に挑戦。さらにそこにきゅうりを置きブラックライトを照らすと、蛍光の光は拭いた範囲と同じだけ広がり、驚きの声があがる。

続いて、市販のアルコール除菌で台ふきんを湿らせ拭く。ブラックライトを照らすと、ほとんど雑菌は見られなかった。

「HACCPの手法として"危害分析"という言葉があります。起こりうる危険を最初から取り除くという意味です。手洗い一つをとっても、質の良い手洗いを学んでいる人がどれだけいるでしょうか。子供達に衛生について学ぶ機会を持ってほしい」と若宮氏は話す。

調理実習は、学んだ予防法を生かして肉を使ったビーフストロガノフ、生野菜を使ったおからのポテトサラダ風、フルーツヨーグルトの3品を作ったが、参加者は「いつも以上に衛生に気を配った」と口を揃える。

「ポリ袋について気を使ったことがなかったので、とても勉強になった」「普段はテーブルクロスの上にランチョンマットを敷いており、テーブルをこまめに拭く習慣がなかったが、アルコール除菌に挑戦してみたい」と言った声があがり、夏休み最初の連休の体験は子供達の自由研究のヒントにもなったようだ。

【2014年8月18日号】

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