2020年に向けた"食の対策” 先進国マレーシアに学ぶ「ハラール」対応

東南・南アジアに多いイスラム教徒 食文化・調理方法の意識を

2020年に東京オリンピック・パラリンピックが開催されるが、そこに向けて食を取り巻く課題が浮上している。それは「ハラール」だ。イスラムの法律で食べられることを許されたものを「ハラール」と呼び、ホテルやレストランなどでは早急な対応が求められる。そんな中、服部栄養専門学校(服部幸應校長)では「ハラール調理セミナー」を開催し、イスラム教徒の食文化を理解する機会を設けた。ハラール問題は、ホテルやレストランだけに限ったことではなく、学校給食での考慮も必要になってくるだろう。

ハラール
服部栄養専門学校で行われたセミナー

イスラム教徒が多い上位4か国は、インドネシア、パキスタン、インド、バングラデシュ。イスラム教徒と聞くと西アジアや北アフリカのアラブ諸国を連想しがちだが、実は東南・南アジア諸国がその多くを占める。今回の講師は、国をあげてハラール対応を整えているマレーシアから来日。

■日本の対応は不十分

主催者の服部栄養専門学校・服部校長は、「外国人観光客が増加し、年間2000万人の来日が目標とされ、うち800万人がイスラム教徒とされるが、それに対応できるホテルやレストランはごくわずか。本セミナーで正しい対応できる道を切り拓いていきたい」とあいさつ。

ハラール産業開発公社(HDC)ゼネラル・マネージャーのイズワルニ・サレー氏は「本国ではハラール産業を推進し、政府の支援を受けてHDCを設立。イスラム教徒が安心して使用できる物に対して、世界で唯一政府が認証を与えている」と述べる。

■調理済みの器具に対する洗浄も必要

ハラールとは、イスラムの教えに則って不純や危険とされるものを除いた食品で、イスラム教徒はハラールな食品以外は口にしないという。化粧品や医薬品なども含まれている。イスラム法では豚が不浄とされるため、豚の毛を使った歯ブラシや豚由来のゼラチンやブイヨンを用いた製品の使用も禁止。さらに、調理時に使用した調理器具の洗浄も必要だ。

HDC・シニアトレーナーのエリアス・アルン氏は「イスラム教では豚や酒を禁じており、食事に少しでも含まれていると食べることは許されない。豚でなくても牛や鶏などの陸生動物は血液を取り除くなどイスラム法に則った食物処理を施す必要がある」と説明。

■学校の対応も視野に

日本の学校にも外国人の児童生徒が多く、多国籍な児童生徒が所属する学校もあり、異なる宗教や生活習慣などを考慮した対応が求められるだろう。同校では、ハラールの概念は日本人にとって馴染みが薄く、理解を深めていく必要があると、今後も定期的なセミナーを予定。

【2014年10月20日号】

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