味の経験を積んで<味の一週間>

「味覚の一週間」5年目の活動

味覚の一週間
トロション氏からは基本の4味と「旨味」「リコリス」について紹介された

フランスで26年前に始まった、子供たちへの食育活動の一つである「味覚の一週間」は、日本でも行われ、今年で5年目を迎えた。日本はフランスより1週間遅い10月19日から25日を「味覚の一週間」としており、19日から23日には全国150校で「味覚の授業」が行われた。

「味覚の授業」とは、料理人やパティシエらが講師となりボランティアで小学校を訪れ、味の基本と食べる楽しさを子供たちに教えるものだ。19日には、エリック・トロション氏がフランスから来日し、東京都中央区立泰明小学校の5年生に授業を行った。

トロション氏はフランス国家最優秀職人章(M.O.F)を受章し、都内にあるPirouette(ピルエット)のアドバイザリーシェフを務める。5年1組の2時限目に登場したトロション氏は、味覚には「甘い」「しょっぱい」「酸っぱい」「苦い」の4つがあり、そこに「旨味」が加わったこと、また「リコリス」(甘草の一種)という味覚も最近注目されていることを説明した。

その味覚を体感してもらおうと砂糖、塩、レモン、グレープフルーツの皮、カツオと昆布、リコリスを用意して児童らに口に含んでもらう。砂糖では「甘い」と笑顔だった児童らも徐々に「酸っぱい」「苦い」と顔が曇っていく。

その様子を見てトロション氏は「みんなが一番おいしいと感じるのは"甘い"だが、そればかりでは健康を害する。4つの基本的な味覚を総合的に取り入れることが重要」と話した。

その後は、「りんご」を素材に生、ジャム、ドライフルーツを試食させる。同じ素材でも様々な食べ方があり、噛む、音を聞くなどの五感も大切だと児童らは体感。トロション氏は「いろんな味を感知して周りの大人の人に味について聞いてみることが大事」と、まずは様々な味への興味を持つことが重要であることを示した。

授業後のテスト
正解率が2倍に

授業の効果を検証

「味覚の授業」に2012年度から参加している福岡市内の小学校児童に、今年度、公立大学法人福岡女子大学大学院・早渕仁美教授が行った効果検証調査が注目される。

4年生98人に行った5つの基本味と水の合計8溶液を識別するテストでは、授業前の正解率26%だったものが授業後は56・1%に増加。

5年生(8か月前受講)、6年生(同20か月)に、その後の食に関する意識や行動の変化を調べたところ、「料理のにおい・香りを感じるようになった」が5年生69・7%、6年生64・3%。「料理の味が気になるようになった」は5年生50・0%、6年生の56・3%で半数以上になった。

 

【2015年11月16日号】

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