連載

第29回 【教職員のメンタルヘルス】解決への手法と周囲の心得

異動1年目の教員 配慮は夏休み前に

心身の健康で危険な6・7月 軽症のうちに周囲が「察知」を

心身の健康の危険時期

本年度、みなさんの学校に異動してきた先生は、すでにその学校の環境に適応していますか。「もう2か月以上経ったので大丈夫でしょう」という声も聞こえてきそうですね。しかし、この6月から7月にかけては、心身の健康にとって意外と危ない時期なのです。

4月、5月は「まだ慣れないので」と、わからない事を聞けるカードの有効期間中です。そして同僚も保護者も、児童生徒もある程度気をつかってサービスしてくれる言わば「ハネムーンの時期」なのです。

しかし、やがてそのカードも期限切れとなり、細かいことが聞きにくくなります。そして、それまで先生にサービスしていた児童生徒が羽目を外し出したり、問題行動が発生したり、不登校の児童生徒も出現してくる時期でもあります。

行事が増える6月前後はオーバーヒートの危険も

加えて6月前後は、遠足、宿泊教室、運動会、修学旅行などの様々な行事が行われます。新しい学校に慣れたことで、仕事の分担量も増えてきます。部活動も夏の大会に向けて放課後の練習時間も長くなり、週末も練習が続き休息できる時間も奪われがちになります。

このような流れの中で、今まで張り詰めていた心身がオーバーヒートしてしまう時期でもあります。

心身のオーバーヒート要因 チェックリスト
□放課後や空き時間に職員室で同僚と話すことがほとんどない
□放課後、いつも夜遅くまで職員室で1人仕事に没頭している
□不慣れな部活動の顧問を1人で引き継いだ
□部活動などで週末に休みがほとんどない
□児童生生徒との関係がうまくいっていない
□保護者との関係がうまくいっていない
□「前任校では」が口癖になっている
□職員室の机上、教室の教師机がかなり乱雑になってきた
□提出物の出し忘れが多くなった
□最近、身だしなみに気をつかわなくなった
□最近、元気がなく口数が減っている
□児童生徒を怒ることが激増した
□4月・5月・6月と明らかに様子に変化がある
□遅刻や欠勤が目立つまたは増えている

自然環境の面でもこの時期は季節の変わり目で、梅雨入りなども重なります。そのため身体や気持ちのコンディションが乱れがちになり、心身のオーバーヒートと重なると自律神経失調症、うつ状態、心身症にいたる危険性のある時期でもあります。

危険信号が点灯しやすい人は?

特に50代の先生、経験が浅い先生、1人暮らしの先生、小規模校から大規模校または、大規模校から小規模校に異動してきた先生、初めて管理職や中間管理職(学年主任、教務主任、生徒指導主任、教育相談コーディネーター等)になった先生、他校種から異動してきた先生、一人職の先生は要注意です。

そこで、「心身のオーバーヒート要因チェックリスト」(下表)を作成しました。当てはまる、またはそれに近い状況が1つでもある、という先生が身近にいるようでしたら、まずは廊下や職員室で「おはようございます」「お疲れ様です」というようなさりげない声掛けをして下さい。

心を開きやすい給湯室、更衣室、廊下、お手洗い等の場では「もうこの学校には慣れましたか」「この学校はどうですか」というような話を聞くきっかけを作ってみて下さい。一度会話した内容は「その後どうですか」というように次の会話の機会に繋がります。この繋がりの輪が「サポート体制」です。

この時期の心労は、夏休みが終わった9月のスタートにも影響します。夏休み前のこの時期に、ぜひ前述した配慮と予防対策を実施して下さい。軽症のうちに察知することが休職の最大の予防に繋がります。

これらのリストは、もちろん異動1年目の先生に限られたことではありません。しかし学校を異動すること自体がかなりストレスフルなことですので、異動1年目の先生には、特に配慮が必要となります。


執筆=鈴木隆広(すずき・たかひろ)日本教職員メンタルヘルスカウンセラー協会会長・神奈川県教育委員会スクールカウンセラーアドバイザー等

 

【2016年6月20日号】

関連記事

連載

<<健康・環境号一覧へ戻る