質の確保・向上にガイドライン<文科省>

文部科学省による「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」によると、小中学校の不登校の児童生徒数は平成25年度に6年ぶりに増加し、その数は高水準で推移している。不登校を理由として30日以上欠席した小・中学生は26年度に12万2897人で、その内、中学生は9万7033人という数字だ。そんな中、全日制や定時制高校には通えないが、自分の生活スタイルに合った通信制高校を選択する子もいる。通信制高校には、スポーツや芸能などの特化した自分の目標に向かうために通学する生徒も多く、不登校経験者にも新しい刺激となるため、その役割は大きい。一方で、卒業認定等に関連した問題が発覚した学校も存在し、社会問題となった。だが、多くの通信制高校は、子供たちの課題解決と幸せな将来を願い教育活動を行っている。文科省も7月に協力者会議を立ち上げ、全力を挙げてこの問題に取り組み、子供たちの未来を約束していきたいと考えている。

進化する広域通信制高校 国・所轄庁・学校が連携を

文部科学省は、6月28日付けで「広域通信制高等学校の質の確保・向上に関する調査研究協力者会議」を立ち上げ、7月12日に第1回の会議を開催した。座長は大谷大学文学部教授の荒瀬克己氏。

生徒数は18万人 多様な理由と学び

会議の冒頭で初等中等教育局の藤原誠局長は、「通信制高校は、全日制や定時制に通えない生徒のための重要な場所。平成27年度は237校で生徒は18万人を超えた。所属する生徒は、いわゆる勤労学生は減り、不登校や編入の生徒が多い。多様な入学の理由を持つ生徒が多く、多様な学習スタイルで学び直しの機会の場となり、困難を抱える生徒の自立支援の受け皿として重要な役割となっている」とその重要性を述べた。

一方、一部で学習指導要領から逸脱したり、他の機関に丸投げしている状況が明らかになったことに対して「誠に遺憾である。生徒の信頼を失いかねない状況から、1月には広域通信制高校の教育運営改善緊急タスクフォースが設置された。本会議では、通信制高校の質の確保・向上へ向けガイドライン作成と所轄庁の点検調査を行う。指針として役立てるようなガイドラインを作成するよう進めて参りたい」とあいさつ。

タスクフォースで集中改革プログラム

義家弘介文部科学副大臣を座長とするタスクフォースでは、「広域通信制高校に関する集中改革プログラム」が取りまとめられ、同会議はそれを受け設置された。

通信制高校で働く教職員の体制や面接指導・添削指導・試験の適正な実施方法等について定める「ガイドライン策定」とともに、徹底した実態把握を行う「全国調査」の実施、国・所轄庁等による生徒・保護者等への「積極的な情報公開」の推進について、会議は進められていく。

広域通信制高校とは、高等学校の「通信制の課程」の内、当該高等学校の所在する都道府県の区域内に住所を有する者のほか、全国的に他の都道府県の区域内に住所を有する者を併せて生徒とするもの、その他政令で定めるもののこと。

分校、協力校、学習センターなどが設けられており、全日制の施設を借り、協力校としてスクーリングを実施することなどもある。平成16年度に構造改革特区法で認められてから株式会社による広域通信制高等学校も増えた。

学びの新しい形を通信制は生み出す

不登校を経験した多くの仲間と共に、新しい自分を見つけようと取り組む不登校経験者だけでなく、スポーツに打ち込みながら高校を卒業したいと通信制高校を選択し、実際にそれを実現した生徒も数多く世に輩出されている。

毎日通学しなくても良いことから、eスクールの充実や生徒へタブレットを持たせるなど、学びの新しい形を整備し、様々な学習手段を編み出している学校も多い。

通信制高校は最先端の学習場所

その点について調査研究協力者会議の向後千春委員(早稲田大学人間科学学術院教授)は、「今回の一件で、メディア視聴がネガティブに捉えられてしまったが、普通校よりも最先端であるべきなのが、通信制高校。大変期待している」と話している。

7月28日に行われた第2回の調査研究協力者会議に出席した義家文部科学副大臣は、今回タスクフォースを立ち上げる一つの契機となったウィッツ青山学園高等学校の問題について、現在指導を行っているが、「極めて不適切。一昨日に視察してきたが、伊賀市も努力しているものの、今現在も新たな各教科の先生がヨっていない状況。本会議では質、あり方、進化していく広域通信制高校について、意見交換をお願いしたい」と述べた。

現在、通信制高校に通う生徒たちが進学、就職した際に学校に対する世間の誤解がないように、この会議の行く末を期待したい。

 

【2016年8月15日号】

<<ひとつ前にもどる

関連記事

<<健康・環境号一覧へ戻る