連載:学校保健〜養護教諭は校内外のコーディネーター

【第9回】都立紅葉川高等学校(東京都) 松井慈子養護教諭

自立を促進しながら正しい知識持たせる

松井慈子養護教諭

都立紅葉川高等学校では、生徒の「自主・自立」を目標にした健康・防災教育を実施している。生徒の主体性を高める健康診断や防災訓練について、同校の松井慈子養護教諭に聞いた。

被災地の経験伝え防災の意識高める

同校では東日本大震災以降、地域と連携した津波の防災訓練や1年生を対象にした宿泊防災訓練を行ってきた。宿泊防災訓練は校内を避難所に見立て、生活用品などが制限された環境で協力しながら1泊2日を過ごすというもの。学校は災害時における地域の避難拠点となるため、3年間を高い防災意識を持って過ごせるよう、入学後すぐに実施されている。

松井養護教諭は、水の配給の際に生徒らに付き添い、「避難所では限られた水で1日を乗り越えなくてはならない。日常生活の中で水が簡単に手に入ることは当たり前ではない」と指導。岩手県で実施された養護教諭研究会の被災地現地研修に参加した経験を活かし、水の大切さについて伝えた。

生徒らは「教室の床で就寝すると疲れがとれない」「温かいものが食べられなかった」など避難生活の不自由さを実感しながらも、体験を通して資源の大切さや避難所での役割を学んでいたという。

「体験後は自ら地域の防災キャンプに参加するなど、防災に対して意欲的になった生徒もみられた」

生徒の成長を考慮し項目の取捨選択を

宿泊防災の生徒たち
宿泊防災の生徒たち

今年度新たに「運動器検診」が加わった健康診断において、「生徒らが検診の意味を理解して取り組むことが必要」と考えた松井養護教諭は、検診の詳細をポスターにまとめ保健室前に掲示。生徒が主体的に取り組めるよう事前準備を行ってきた。

「検診を通して生徒自身が体の状態を把握し、自立した健康管理につなげることが大切。保健室での対応においても自立を目標に指導している」

しかし、生徒の自立が進む一方で不安な面もある。「慢性の関節痛などの問題を抱えながらも、受診せずスポーツを続けている生徒がいた。不調には気づいていても自分の判断で無理をしてしまう場合もある」

今回の検診では整形外科に係っている生徒の状況を把握し、心配のある生徒に受診を進めることができたが、生徒の自立を促すと同時に正しい知識を身につけさせることが課題だとした。

検診項目の選択においても学校医と連携。

「生徒の体の成長に合わせて、必要な項目を取捨選択することが重要」とし、今後は腰や腕、脚の動きに関連する項目を重視した検診を実施していくという。

「片足立ちやしゃがみ込みなどは普段の生活の中でも確認できる内容。友人同士で互いにチェックし合えるように、生徒の意識を高めていきたい」と語る。

 

【2017年4月24日号】

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