凶悪犯高水準で推移

集団化が進行してひったくりが急増

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 戦後“第4の波”にあって深刻な状況にある少年非行だが、警察庁がさきごろ発表した平成11年の「少年非行等の概要」によると、刑法犯少年や覚せい剤乱用少年の検挙人員は減少したものの、凶悪犯が高水準で推移している中、集団化が進行し、凶悪・粗暴な犯罪に転化しやすいひったくりが急増、校内暴力やいじめも増加していることがわかった。また少年の犯罪被害についても、凶悪犯・粗暴犯、性犯罪の被害件数が増えており、非行と被害の両面で依然として厳しい局面が続いている。

 交通事故や交通違反などを除いて平成11年に検挙された刑法犯少年は(14歳以上20歳未満)、14万1721人。前年に比べて1万5664人(10・0%)減少し、平成7年以来4年ぶりの減少となった。また成人を含めた刑法犯総検挙人員に占める割合は、44・9%で前年比3・6・の減となっている。
 厚生省国立社会保障・人口問題研究所の推計人口に基づいて算出すると、少年1000人あたりに占める刑法犯少年の人口比は15・6人で、前年より1・3人減少している。
 年齢別内訳では「15歳」が最も多くて、3万3387人(23・6%)。次いで「16歳」の3万3331人(23・5%)、「14歳」の2万5865人(18・3%)が・ワーストスリー・となっている。
 学識別で最も多かったのが「高校生」で、6万431人(42・6%)。次いで「中学生」が3万9589人となっている。いずれも前年と比べそれぞれ12・6%、10・4%減少し、特に高校生の減りが目立つ。しかし昭和63年に中学生を抜いた高校生は、相変わらず・トップの座・を占め続けている。
 学識別で前年よりも検挙者が増加したのは「無職少年」で、前年に比べて498人(2・7%)増の1万9034人。人口構成比でわずか約4・1%にすぎない無職少年だが、刑法犯少年全体の13・4%を占めるまでになっている。特に凶悪犯では全体の32・7%、粗暴犯では21・5%、シンナー等乱用では38・4%、覚せい剤乱用では56・2%−−と高い割合で無職少年が占めている。

【凶悪犯罪】
 全体的に刑法犯少年の数が減少しているにもかかわらず、凶悪犯(殺人、強盗、放火、強姦)の検挙人員は2237人と前年に比べて40人(1・8%)増加し、平成9年以来3年連続して2000人を超えた。また刑法犯少年に占める凶悪犯の割合についても、1・6%(前年比0・2・増)と、依然として高水準で推移している。この凶悪犯を10年前の平成2年と比較すると、過去10年間で検挙人員は2・1倍、刑法犯少年に占める割合は2・3倍(0・9・上昇)となり、刑法犯少年に占める割合について見ると、昭和52年以降の・最高値・を記録している。
 凶悪犯の罪種別では強盗が最も多く1611人(前年比73人、4・7%増)となっており、昭和42年以降の最悪を記録した平成9年の検挙人員(2263人)とほぼ同数。平成2年以降過去10年間で2・8倍となっている。また殺人は110人(同4・3%減)、放火は90人(同1・1%増)、強姦は426人(同6・4%減)だった。
 集団による凶悪犯が増加しているのも特徴の一つ。凶悪犯のうち、共犯事件は602件(前年比0・3%減)で、凶悪犯の57・2%を占めている。これは前年比0・9ポイント増にあたり、平成2年と比べると過去10年間で2・4倍という数字。凶悪犯に占める割合も21・1ポイント上昇している。中でも3人以上の集団による凶悪犯の共犯事件は414件で、前年に比べて29件(7・5%)増加して、凶悪犯の共犯事件に占める割合も68・8%と前年を5・1・上回っている。同様に平成2年と比べると検挙数は3・0倍の増加、凶悪犯の共犯事件に占める割合は12・1ポイントも上昇しており、少年による凶悪犯の集団化が進んでいることがわかる。

【ひったくり】
 平成6年以降一貫して増加傾向にあるひったくりの検挙人員は2420人。前年に比べて549人(29・3%)増加し、統計を取り始めた昭和47年以降の最悪を記録。過去10年間で見ても4・2倍と急増している。学識別ではすべてで増加。中でも無職少年(検挙人員878人、前年比54・0%増)、高校生(同518人、同50・6%増)が大幅に増加。中学生についても618人、2・0%増で微増にとどまっているものの、検挙人員数では高校生を上回っている。
 このひったくりを検挙件数で見ると1万1829件で、前年に比べて1505件(14・6%)増加。このうち共犯事件は7415件(前年比1658件、28・8%増)で、ひったくりの全検挙件数の62・7%を占めている。これは前年と比べて6・9ポイント増の数字。

(教育家庭新聞2000年4月15日号)