子どもたちの貧しい食生活の現状

米飯学校給食フォーラム開催

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 米飯学校給食推進中央委員会主催による「米飯学校給食推進フォーラム」が、3月11日東京国際フォーラムで開催された。現在子どもたちの孤食、欠食、栄養バランスの崩れが指摘され、将来の生活習慣病の顕在化が懸念されている。これをうけ「21世紀の食卓の課題−豊かな時代豊かさを失う子どもたちの食卓」をテーマに、基調講演やパネルディスカッションが行われた。
 女子栄養大学副学長で医学博士の香川靖雄氏は基調講演の中で、飽食の時代と言われているが子どもたちの食生活は大変貧しく、おにぎり1個にコーヒーだけというような食生活をしていると報告。また家でゲームをしたりビデオを見ている子どもたちが給食の場に来るとイキイキとして「友だちと一緒に食べられることが楽しい」と言う、と現状を伝えた。そして昔の団欒を学校給食を中心に建て直し、日本の食生活が健全なものになればと述べた。

 続いて行われたパネルディスカッションでは、コーディネーターに日本放送協会解説委員の中村靖彦氏、パネリストには日本大学名誉教授で医学博士の櫻井勇氏、服部栄養専門学校校長の服部幸應氏、医学博士で管理栄養士の本多京子氏、さらに千葉県佐倉市立上志津中学校栄養職員の吉田智子氏らを迎えディスカッションが行われた。
 コーディネーターの中村氏はお金を出せば何でも買える飽食の時代ではあるが本当に気持ちも含めて豊かなのか、子どもたちはどうだろうか。今の状態が子どもの健康や心にどのような影響を与えているのかと問題を提起した。櫻井氏はスライドを使用し生活習慣病と呼ばれる動脈硬化について説明。その中で、動脈硬化性変化は子どもの時に始まり、悪化することがあれば軽くなることもある。これには無数の因子が関係しているが子どもの頃からの食事内容や規則正しい睡眠、運動が大切と述べた。

 本多氏は生活習慣病予備軍と呼ばれる子どもたちが増えていることを指摘、けじめのない食生活や好き嫌いが多く栄養のバランスが悪い等の食の乱れが原因と述べた。そして、あるアンケートでは野菜を食べない理由として「野菜が食卓に出ていないから」という答えが多かったと報告、朝食をとらないとか食の乱れがあるなど子どもたちだけが問題なのではなく、大人の作る側にも問題があるのではと強調した。さらに肥満と米飯との関係にも触れ、ご飯類の糖質はゆっくり燃えるので腹持ちがよく持続性があり、ご飯におかずを組み合わせて食べる事が味覚教育のためにも、脂質エネルギー比を上げないことのためにも大事であるとまとめた。

 次いで吉田氏は生活習慣調査で朝食をとらない生徒の割合は4・8%、一人で食べる割合が59・5%だったと報告。しかし欠食、孤食のある子どもたちも「給食は友だちや先生と一緒に、同じものを食べられるから楽しい」と言っていると伝えた。また今まで使いにくかった食材を子どもたちを通して家庭に戻し、学校給食が家庭での食生活を見直すきっかけとなればと述べた。

 今、衣食住の中で重要なしつけが失われていると服部氏。箸を持てない日本人が約4割いるというのは嘆かわしいこと。知育、体育徳育の今の学校教育の中に食の教育を加え、家庭と学校で連携したしつけをすることが必要と訴えた。さらに子どもの砂糖摂取量が多いことをあげ、砂糖群の多い食生活を続けていると小児糖尿病や低血糖を招くことになる。低血糖によってイライラしたり、それがやがてはキレる子どもへとつながっていくと指摘、加えてアメリカでの犯罪者と食生活の関係についての調査では、料理を作って貰えないような家庭環境の中で育った人の犯罪率が多かったと伝えて、子どもたちに精神的な安定を与えるには食生活が大きな鍵を握っていることを強調した。
(教育家庭新聞2000年4月15日号)