HACCPは、製造途上の工程を連続的に管理

 

HACCPとは、危害分析(HA)・重要管理点(CCP)と呼ばれるもので、宇宙食を作る際に考案された食品の安全性確保のための方法。宇宙食は地球で作って運んでいくが、宇宙船内での食中毒発生は絶対にあってはならない。このため、従来のように最終的にで出来上がった完成品の検査によって安全性を保証するのではなく、製造途上の重要な工程と工程を連続的に管理することによって、一つひとつの製品の安全性を保証しようとする衛生管理の手法だ。

 

危害分析」(HA)と「重要管理点」(CCP)

家庭の調理における「危害分析」(HA)とは、食品およびその調理過程に含まれる可能性のある食中毒原因と、その発生防止方法を分析すること。食品と調理過程のどこで食中毒菌による汚染や増殖が起こるか、またそれを防ぐにはどういう手段があるかを考えることがこれにあたる。それらを明らかにした上で、特に注意を払うべきポイントを「重要管理点」(CCP)と呼び、これがきちんと守られているのか常にチェックし、記録していく。

 

家庭の食事を6段階に分け注意

マニュアルでは家庭での食事の過程を@食品の購入A家庭での保存B下準備C調理D食事E残った食品――の六つの段階に分け、各段階での注意点を挙げた。

例えばAの保存段階では、最近の多くが摂氏一〇度で増殖のスピードを落とし、マイナス一五度で活動が停止するため、冷蔵庫は一〇度以下、冷凍庫はマイナス一五度以下に維持することを目安としている。

下準備の段階では、生で食べる果物や野菜に食中毒菌を移さないため、生肉や魚を切った後、使った包丁やまな板を十分に洗って熱湯をかけて消毒してから使うか、肉用、魚用、野菜用と別々にそろえて使い分けるように求めている。

またO―157は室温でも十五〜二十分で二倍に増えるため、調理後の食品は室音で長く放置しないことなども呼びかけている。

「食中毒予防の三原則は、食中毒菌を『付けない、増やさない、殺す』です。今回の六つのポイントはこの三原則から成り立っているもので、このポイントをきちんと行って、家庭から食中毒をなくして欲しい」と厚生省では強調している。

 

食中毒予防の6ポイント

食中毒予防の六つのポイントは次の通り。

【食品の購入】

▽肉、魚、野菜などの生鮮食品は新鮮なものを購入する▽表示のある食品は消費期限などを確認して購入する▽購入した食品は、肉汁や魚などの水分がもれないようにビニール袋などにそれぞれ分けて包み持ち帰る▽特に、生鮮食品などのように冷蔵や冷凍などの温度管理が必要な食品の購入は買い物の最後にし、購入したらすぐ持ち帰る

【家庭での保存 】

▽冷蔵や冷凍の必要な食品は、持ち帰ったらすぐに冷蔵庫や冷凍庫に入れる▽冷蔵庫や冷凍庫の詰めすぎに注意する。目安は全体の七割程度▽冷蔵庫は一〇度以下、冷凍庫はマイナス一五度以下に維持することが目安。温度計を使って温度を計るとより庫内温度の管理が正確になる。細菌の多くは一〇度で増殖がゆっくりとなり、マイナス一五度では増殖が停止している。しかし細菌が死ぬわけではないので、早めに使いきるようにする▽肉や魚などはビニール袋や容器に入れ、冷蔵庫の中の他の食品に肉汁がかからないようにする▽肉、魚、卵などを取り扱う時は、前後で必ず手指を洗う。せっけんを使って洗った後に流水で十分に洗い流す▽食品を流し台の下に保存する場合は水漏れなどに注意する。また直接床には置かない。

【下準備】

▽ゴミは捨ててあるか、タオルやふきんは清潔なものと交換してあるか、せっけんの用意をしているか、調理台の上はかたづけて広く使えるようになっているかなど台所を十分にチェックする▽井戸水を使っている場合は水質に十分注意する▽手洗いを励行する▽生の肉、魚、卵を取り扱った後には手を洗う。また、途中で動物に触ったり、トイレに行ったり、おむつを交換したり、鼻をかんだりした後も手を洗う▽果物やサラダなど生で食べる物や調理の済んだ食品に、肉や魚などの汁がかからないようにする▽生の肉や魚を切った後、その包丁やまな板を洗わずに、果物や野菜など生で食べる食品や調理の終わった食品には使わない。使う場合は洗った後に熱湯をかけて消毒する。包丁やまな板は肉用、魚用、野菜用と別々にそろえて使い分けるようにする▽ラップしてある野菜やカット野菜もよく洗う▽冷凍食品など凍結している食品を、調理台に放置したまま解凍すると食中毒菌が増える恐れがあるので止める。解凍は冷蔵庫の中や電子レンジで行い、水を使って解凍する場合には気密性の容器に入れて流水を使う▽解凍は料理に使う分だけにし、解凍が終わったらすぐに調理する。解凍した食品を使わないからといって、冷凍や解凍を繰り返すと食中毒菌が増殖する場合もあるので危険▽包丁、食器、まな板、ふきん、たわし、スポンジなどは使った後すぐに潜在と流水で良く洗う。ふきんの汚れがひどい場合は清潔なものと交換する。漂白剤に一晩つけ込むと消毒効果がある。包丁、食器、まな板は洗った後に熱湯をかけ、たわしやスポンジは煮沸するとより効果的。

【調理】

▽下準備でよごれていないか、タオルやふきんは乾いて清潔か、調理を始める前にもう一度台所を見渡し、手を洗う▽加熱して調理する食品は十分に加熱する(中心部の温度が七五度以上で一分間以上が目安)▽料理を途中で止めてそのまま室温に放置すると細菌がついたり増殖したりするので、必ず冷蔵庫に入れる。再び調理する場合は十分に加熱する▽電子レンジを使う場合は専用の容器やふたを使い、調理時間に気を付けて、熱が伝わりにくい物は時々かき混ぜることも必要。

【食事】

▽食卓につく前に手を洗う▽清潔な手で、清潔な器具を使い、清潔な食器に盛りつける▽温かく食べる料理は常に温かく、冷やして食べる料理は常に冷たくしておく(温かい料理は六五度以上、冷やして食べる料理は一〇度以下が目安)▽例えばO―157の場合は室温でも十五〜二十分で二倍に増殖するので、調理前の食品や調理後の食品は室温に長く放置しない。

【残った食品】

▽残った食品を扱う前にも手を洗う。保存にはきれいな器具、皿を使う▽早く冷えるように浅い容器に小分けして保存する▽時間が経ち過ぎたら思い切って捨てる▽残った食品を温め直す時は十分に加熱する(七五度以上が目安)。味噌汁やスープの場合は沸騰するまで加熱する▽ちょっとでも怪しいと思ったら食べずに捨てる。

_