増える「保健室登校」

 

心身の健康問題重視へ――文部省が調査

 身体面だけでなく、友人関係や学習面など精神面の問題で保健室に相談に来る「保健室登校」が増えているといわれているが、文部省がさきごろ発表した1996年度「保健室利用状況調査」結果によると、“心の問題”のために保健室の養護教諭が継続的に支援している学校は小学校で半数近く、中・高校では4校に3校という高い割合で存在。また、いわゆる保健室登校者のいる中学校は4割を数え、小・中・高校を総計すると前回調査の6年前(90年)の倍の1万人いることなどがわかった。

 調査は財団法人日本学校保健会に委託、全国の公立の小・中・高校からそれぞれ124校、計372校を抽出して行った。対象となった学校の児童・生徒数は小学校が約6万5500人、中学校約6万5700人、高校約10万1300人の計約23万2500人。

 まず、校内に子どもたちが何らかの形で相談できる「相談室」がある学校については、小学校53・2%、中学校87・9%、高校77・4%で小・中・高校全体で72・8%を占めている。うち校内組織としての教育相談部がある学校は、小学校が74・2%、中学校77・4%、高校81・5%で、それぞれ前回の調査と比べると23・5ポイント、8・4ポイント、16・0ポイント増えている。この教育相談部に養護教諭が所属しているケースは95年度から養護教諭が保健主事に登用されるようになったこともあってか、小学校82・6%、中学校71・9%、高校76・2%で、それぞれ前回調査時の64・7%、42・7%、60・0%を大きく上回っている。

 心の問題を持つ子どもたちに対して養護教諭が継続して支援する事例については、小学校では46・0%と約半数近く、中学校と高校はそれぞれ75・8%、79・8%と4校に3校の割合を超えている。これを前回調査と比べると、小学校は0・3ポイントとわずかながら減少しているものの、中学校は3・4ポイント、高校は9・2ポイント増えている。

 また登校はしてもいつも保健室にいるか、一日の大半を保健室で過ごすいわゆる「保健室登校」の子どもたちが過去1年間にいた学校の比率は、小学校が37・1%、中学校58・1%、高校44・4%と中学校が多くなっている。

 この他にも過去1年間に保健室で把握した心身の健康問題がある児童・生徒の状況をみると「慢性疾患」が小・中学校の約6割、高校で約8割あったほかに、過半数を超える中学校で「いじめ」を受けた生徒が存在、また、高校の約半数に「精神科疾患」や「拒食症」などの問題事例があることがわかった。

こうした、心の問題で悩む子どもたちや保健室登校の子どもたちが増えている実態を重視して、文部省では養護教諭の資質向上をいっそう図ると同時に、学校全体として子どもたちの心身の健康問題に取り組んでいく必要があると指摘。今後は養護教諭の研修の充実を図る一方で、教養審を通じて養護教諭の養成策を抜本的に見直していく方針を示している。

(教育家庭新聞10月11日号から)