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INTERVIEW 「人・仕事・人生」
ディズニー新シリーズを翻訳
作家
 柏葉幸子さん

可愛らしさと温かさが伝わる作品
  冒険を通じて自分の才能に気づく

柏葉幸子さん 小・中学生の頃は、ずっと図書委員だった。「麦と王様」「指輪物語」など外国のファンタジー作品が大好きで、学校の図書館へ通っては、本を読んでいた子どもだった。日本のファンタジーは、佐藤さとる著「コロボックル」にふれた時、その可能性を感じたという。だけど、自分がまさかファンタジー作家になるとは、思ってもいなかった。

 作家デビューは、東北薬科大学在学中、講談社児童文学新人賞の募集で、2回目の応募作「霧のむこうのふしぎな町」の受賞がきっかけ。この作品、薬学部での臨床や実習の忙しい中、ストレス発散も兼ねて執筆したというが、後にジブリ映画「千と千尋の神隠し」の原案になるなど、やはり思いもよらなかった。

 その柏葉さんに今年、講談社から依頼があった。それはディズニー パブリッシング ワールドワイドから全世界の子ども達に向けて贈られる新しい物語「ディズニー フェアリーズ ブックシリーズ」の第1作で、この9月から全国発売されている「ディズニー フェアリーズ ―プリラの夢の種―」の翻訳。名作「ピーターパン」に出てくるティンカー・ベルの住むネバーランドの世界に、米国ファンタジーの第一人者ゲイル・カーソン・レビンが、新たな舞台を設定して書き下ろした妖精達の物語。自分に才能があるのかないのかもわからない妖精プリラが、魔法が使えなくなったネバーランドのために個性の違う仲間と冒険に出ることになり、冒険隊に選ばれた喜びや不安、仲間を信じる気持ちなどを通し、波乱の旅の中で自分の才能に気づいていく。

 この作品に際して柏葉さんは、一貫した骨太な根幹に可愛らしさ、温かさが伝わってくると、自らも楽しみながら1カ月で一気に書き上げた。この作品中で「夢の種」という言葉は、原文では「talent」。誰もが持つ花開く可能性を秘めているものとして、柏葉さんの妙訳のひとつ。

 そんな柏葉さんとディズニーの最初の出会いは、子どもの頃の映画だった。長編アニメの傑作「ファンタジア」は一番のお気に入りで、いまでもディズニーランドへ行くとわくわく、「特にイッツアスモールワールドは何度行ってもウキウキ」する、とか。

 大学卒業後、薬剤師として勤めた柏葉さんは、地元でいまも現役。作家と両立させながらNHK教育テレビの「バケルノ小学校・ヒュードロ組」の脚本も手がけている。「これまでおばあちゃん、お父さんが主人公の物語は作りましたが、こんどはお母さんと娘のファンタジーを書いてみたい」と、柏葉さんは、これからもますます意欲的。

<プロフィール>
 柏葉幸子(かしわば・さちこ)=岩手県花巻市出身。
 ・東北薬科大学在学中の74年、「霧のむこうのふしぎな町」で、第15回講談社児童文学新人賞、日本児童文学者協会新人賞を受賞。
 主な著書に「地下室からのふしぎな旅」、「大おばさんの不思議なレシピ」、「モンスターホテルシリーズ」など。
 NHK教育テレビ「バケルノ小学校・ヒュードロ組」の脚本も現在担当中。


【2005年11月12日号】