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INTERVIEW
食のナンバーワンサイトの秘密
(株)ぐるなび
 取締役会長 滝 久雄氏

(株)ぐるなび 取締役会長 滝久雄氏“駅での情報サービス”からスタート
  若手社員とウォーキングミーティング


 忘新年会、歓送迎会などの際、グルメ情報サイト「ぐるなび」を利用したことがある人は多数いるだろう。現在は、携帯電話1つでいつでもどこでも情報が得られる。インターネットの普及により、いつの間にか私達の生活に浸透していた「ぐるなび」はどこから生まれたのか。

 「ぐるなび」の考案者滝久雄氏は、東京工業大学を卒業後、三菱金属(現三菱マテリアル)に入社するものの、起業を志し4年で退社。日本の高度経済成長の幕開けだった当時、その行為には皆が反対した。退社後は、渡米経験者100人に話を聞き経済大国アメリカへ渡る。そして、UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)を訪れた時、運命の出会いがあった。

 それは、日本人教授との出会い。当時ロサンゼルスは、車社会が生んだ光化学スモッグの公害問題から、鉄道の見直しが研究されていた。その点、日本はすでに優れた都市鉄道のノウハウを持っていた。それを教授に指摘され「今までは気に留めていなかったが、日本に世界一のものがある」と気づき「日本の鉄道は街の玄関で、ポテンシャリティが高い。人のいるところはすなわちメディアである」と交通広告に注目する。車両内広告はすでに行われていたので、「駅の広告」に可能性を感じた。

 交通広告と「ぐるなび」?と不思議に思う人もいるかもしれない。しかし、理系出身である滝氏は35年前から平行してコンピュータの可能性を見出していた。そして、公衆回線の自由化により可能性を形にしたのが、東京駅銀の鈴広場に設置した情報端末「JOYタッチ」だ。これは「駅のネットワークに通信回線を絡めた情報サービスをやりたい」という思いから始まった。それから10年が経ち、インターネットという新しい産業革命的なシステムが登場し「ぐるなび」が生まれた。「“駅での情報サービス”から、まさかダイレクトにユーザーに情報提供できるメディアを自分が担当できるとは思っていませんでしたね」と振り返る。

 現在約600人の社員が活躍するが、当初社員は1人。「社員達とは親子というよりは兄弟姉妹のような関係」という滝氏は「若い人が大好き」と、ウォーキングミーティングには若い社員を誘い話に耳を傾ける。「先日高校で講演会を行いましたが、若い人は純なものが残っていますね」と教育の在り方にも興味を示す。「小中学校では弱いものイジメをしてはいけないということや貢献心を教えてあげ、高校では潜在的な価値を顕在化するのが教育ですね」と一企業として教育へ貢献したい思いもあるが、まず社員に対しその精神を伝えている。「人生は過程。後進に譲りながら色々指導していきたい」と、信条の「直面する事にベストを尽くす」精神で若い社員を育て続ける。

<プロフィール>
 滝久雄(たき ひさお)=1940年東京都出身。
 東京工業大学理工学部機械工学科卒業。
 三菱金属(現三菱マテリアル)に入社するが、4年で退社。
 父の急逝を機に交通文化事業社(現NKB)を継承。
 「情報伝達メディアの創出」をライフワークとし、インターネットがポピュラーになり始めた96年飲食店検索サイト「ぐるなび」を開設。
 今年4月、「ぐるなび『bPサイト』への道」を発刊。


【2006年5月20日号】