教育家庭新聞・健康教育新聞
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教育実践事例
読み聞かせ
工夫次第で集中力UP
東京都立 立川ろう学校
  現代は情報社会。だが、そこから聴覚に障害を持つ子どもが正しい情報を得ていくためには、それを読み取る確かな国語力が必要となってくる。そのための有効な手段の一つは読書。東京都立立川ろう学校は今年4月23日の「子ども読書の日」、読書活動優秀実践校としてほかの163校と共に文部科学大臣表彰を受けた。幼児部から高等部までそれぞれに活動を行っているが、中でも、小学校低学年のそのきっかけづくりに読み聞かせを実施している。



 東京都立立川ろう学校(秋谷義一校長)は幼稚部から高等部までの総合学園。読み聞かせは昨年から小学部の1年生から3年生まで、読み手は研修を受けた担任の輪番制で、学年ごとに週1回、15分程度で行っている。

 5月23日の2校時は2年生の時間だった。プレイホールに集まった子ども達の前で、まず、千葉喬史教諭のギター演奏、それに合わせ9人全員の元気な大合唱、堤崎正子・堀尾良子・姫野滋子の3人の教諭も一緒になって盛り上がる。そして、今回の読み手の堀尾教諭がその日の絵本を広げると、もはや誰もよそ見などしていない。

 当日の絵本はせなけいこ著「ひゅるひゅる」。そこには「拙者」や「ござる」などいわゆる侍言葉が出てくるものだった。これはテレビの時代劇やNHKの子どもの歌などから耳に残りうる言葉だが、その耳からの情報が得られない子ども達には意味が通りづらい。堀尾教諭は文字カード、説明カードを用意、すると、子ども達は違和感なく理解していた。

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 ろう学校での読み聞かせでは声の抑揚や声音は通用しない。子ども達はカードや時には実物などの工夫のほかにも演者の口を見、手話を交えることで集中力が増していく。

 この取り組みでは、小学部入学当初は絵本が見続けられなかった子どもが、今では熱心に話に集中している。読書に対する意欲も育まれ、友人同士で感想や意見も交えるようになった。また、昨年末から月に一度、保護者もこの時間に参加、親子で読書の会話ができるまでになっている。

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 同校では、4年生から図書委員会の活動が始まる。中学部では図書室の昼休み開放や図書委員会の活動などで図書室の利用率が高くなったと、図書司書の資格を持つ清水かおる教諭は言う。

 秋谷校長は、「(本校は)これまでの障害を克服する教育ではなく、確かな力を身につけ、社会自立を目指しています」と、そのための教育を心がけている。


【2004年6月16日号】