教育家庭新聞・健康号
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教育実践事例

魚の油で栄養を学ぶ
杉並区立桃井第4小学校
  杉並区は、給食に麦を取り入れるなど食育に力を入れている。同区・桃井第四小学校(野崎佳子・校長)は学校給食指導(栄養指導)を各学年で行っている。今回は、食育との連携としては珍しい理科の授業による給食指導を行った。

魚の絵を使って楽しい授業をすすめていく
魚の絵を使って楽しい授業をすすめていく

 同校は、「もっと楽しく」「もっと自分らしく」「しっかり学ぶ」を教育目標に、確かな学びと豊かなかかわりの中で自立する・ももしの子を・目指し、食育にも力を注いでいる。
 今回の授業の主題は「魚を知りましょう」。海に囲まれている日本は、体をつくるために重要な働きをしているたんぱく質の供給源として、「魚介類」を利用してきた。しかし、食生活の多様化、洋風化に伴い肉類が好まれる「魚離れ」の傾向が見受けられる。同校でも児童との会話や、給食の残滓を見ても肉より魚の残量が多いのが現状だ。そこで、魚と肉の油の違いや栄養の働きを学習し、魚を進んで食べようとする意欲をもたせようと、理科の授業との連携を試みた。

◇ ◇

 授業は、同校栄養士笹原道子先生と、6年2組担任加藤孝子先生によって進行。まず11月の献立表を見て魚介類に赤で印をつけさせた。それによって魚は血や肉のもとになるということや、給食の献立ではいろいろな種類の魚が使われていることを理解させた。
 次に、給食に使われている魚を実物大にした絵を児童に見せた。児童達は次々に登場する魚を見て「さけ!」「さんま!」などとクイズに答えるように楽しんでいた。魚が苦手という児童に加藤先生が理由を聞くと、「生臭い」「油っこい」などの意見が出た。
 そこで笹原先生は、魚の持つ栄養素は何か質問した。児童からは、「カルシウム」などの声があがり笹原先生は「さすが6年生」と褒め、各栄養素の仕組みについて説明をした後、肉の栄養素との違いを質問。さまざまな声が上がり「脂肪!!」という答えが出たところで、実験を開始。

 最初に笹原先生が児童に実験方法を示し、その後各班に分かれ実験を始めた。ラードと秋刀魚の油を見せ、固体か液体かを確認し、2つの油を火にかけた。温めた油を氷水で冷やしその様子を観察。ラードは固体から液体になり、氷水に入れるとまた固体に戻ることを児童は学んだ。
 実験を踏まえ笹原先生は、魚にはDHA(ドコサヘキサエン酸)とEPA(エイコサペンタエン酸)が含まれており、EPAはさばやさわらなど青身の魚に多く含まれ、血管を掃除してくれると児童に指導。肉と魚をバランス良く食べる重要性を説明した。
 実験を終えて、児童からは「氷水にいれると、ラードが液体から固体になったことにビックリした」「前から魚は好きだったけれども、もっと好きになった」「実験をしたことで、聞いてもわからないことがわかった」などの感想があがった。

 野崎校長はこの授業について「1時間の授業の後、児童に何か残ったら良いと思う」と話した。また、担任の加藤先生と栄養士の笹原先生とのTT授業について、「コンビネーションがうまくとれていたことをうれしく思う」とも話した。担任の加藤先生は、「子ども達にとってとても面白い授業であったと思うし、自分達も勉強になった」と今回の授業の成功を非常に喜んでいた。
 今回の授業で児童達は、理科の観点から栄養を知ることができた。また、献立を使うことで給食が直接授業に結びついていくということが工夫の点であったようだ。
 同校はこれまで、各学年に見合った食育授業を栄養士と担任のTT授業で行っている。「カルシウムの働きと牛乳の栄養について」の授業は、牛乳の大切さを知ることで進んで飲む意欲を養った。「野菜を好きになろう」は、野菜の種類や大きさを知ることで興味・関心を持たせてきた。

実験中の児童達。ラードと魚の油を熱している
実験中の児童達。ラードと魚の油を熱している


【2005年1月15日号】