教育家庭新聞・健康号
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子どもの心とからだの健康
実体験こそすばらしき教材

花垣紀之さん
財団法人都市農山漁村交流活性化機構 
子ども農山漁村プロジェクト担当
花垣紀之さん

■子ども農山漁村プロジェクトの2年目

 国公立の小学校では平成23年度から新しい学習指導要領が完全スタートするが、これまでもこれからも、重要な教育理念として掲げているのが「子どもの生きる力を育む」ことである。新たな教育目標として、一人ひとりの能力を伸ばす、人間関係を重視して、社会に参画する態度を養う、生命、自然、環境の尊重・保全、伝統と文化の尊重などが挙げられる。しかし、これらを児童が学校を含め、日常で学ぶ機会が乏しいのではないか。やはり、体感できる生きた教材が必要である。今回は、小学校5年生程度の児童を対象に、農山漁村に出かけ、地域資源を教材にして、人々との交流を通じた生きた教育を推進するプロジェクトについて、始動2年目の現況を伺った。 (レポート/中  由里)

農山漁村の発展と生きる力の育成

―プロジェクト発足の状況を聞かせてください
 総務省、文部科学省、農林水産省が協力し、平成20年から5年間の連携施策として取り組むこのプロジェクトは、小学校5年生程度の児童を対象に、農山漁村に出かけ、1週間(4泊5日)程度を、農林漁家でのホームステイを含めた長期宿泊体験の普及を進めるものです。このプロジェクトの中間支援組織である当機構は、都市と農山漁村の交流を通じた地域活性化を目的に活動してきましたが、このプロジェクトの根本にあるのは、激しい社会変化の中で必要になる子どもたちの「生きる力」を育むことであり、それを第一に尊重して取組をしています。

 生きる力は人々との交流やさまざまな実体験によって育まれるということは周知の通りです。我々はこの実体験を義務教育である小学校教育の場で得ることを推進していきたいと考えています。

 一方、農山漁村が活性化することによって、国土の均衡ある発展と自然と調和の取れた豊かで潤いのある社会を実現するという目的があります。

長期の活動で教育効果も

―学校と滞在する村のコーディネートはどのように行うのですか
 私どもは小学校や教育委員会などを対象に、児童の長期宿泊体験活動の受入可能な地域を紹介するインターネットのホームページを開設しています。そこで紹介する地域は、当該活動の受入地域に求められる安全・衛生対策、児童向けの体験プログラム、農林漁家泊の手配等を行えるかどうかを確認できたところのみ扱っています。最近では、小学校関係者からのお電話等を通じて、直接お問い合わせをいただけることも増えました。そうした機会を大切にして、各学校の要望に合う地域を紹介していきたいと思います。ちなみに、平成20年度の実績ですが、登録している地域は130か所を超え、文部科学省による当該活動のモデル校は180校近くまで上っています。

 コーディネートでまず大切なことは、小学校も受入地域も相互の意見を確認し合うことです。当該プロジェクトの場合、受入地域は、単に体験や宿泊場所を手配できるだけではいけません。小学校が求める教育目標を達成するためにいかに応えていくか、体験指導等を現地に委ねる学校や保護者等の不安をどのように解消していくのかは、すべて相互のコミュニケーションを通じて協同で解決すべきです。事前の調整を通じて生まれる相互の信頼が児童にとってより良い宿泊体験の機会をつくるのだと思います。

―現在までの実績で確認できた教育的効果はありますか
 農山漁村の資源である自然、文化、生活、農林漁業等を活かした多彩な体験の中で、課題を発見する能力や問題を解決する能力が高められます。また、集団活動や幅広い年齢層との交流の機会を通じて、人間関係をつくり、人を思いやれる心を育む等、協調性や自律性といった道徳的な効果も育まれると思います。  自然に囲まれた人間の営みは、すべての基礎学問の祖といえます。そして各教科の指導目標の中には、農山漁村の資源を踏まえたものが多く含まれています。学校での座学にプラスして、農山漁村にある「本物の教材」にふれることで、児童の知的好奇心が刺激され、 学びの意欲を増進されることでしょう。

 長期の活動であるため、一つ一つの体験時間にゆとりを設けることができ、児童一人ひとりの気づき、思考、議論などが深まるまで「待てる」ことも大きいと思います。

児童の変容事例をHPで紹介予定

―学校側の教育効果は大きいと思いますが、受け入れ側の農山漁村は大変なのではないでしょうか
 受入体制を整えるのは簡単ではありません。学校と受入関係者との調整をスムーズに行えるように調整窓口の一本化、地域一体の安全管理体制や教育効果のある指導方法の整備、自然や農業などの体験指導者の育成など、解決すべき事項は多くあります。

 しかし、児童を受け入れた農林漁家からは、「農林漁家のアイデンティティが確認できた」、「食のエンドユーザーである都会の子どもたちを深く知ることができた」、「食の担い手である自分たちのことを知ってもらえた」などの感想や、「もう一つの家族だと思っていつでも帰ってきてほしい」との心温まる言葉も多く聞かれます。もちろん地域興しにも一役買っていることも見逃せないメリットです。

―これからプロジェクトを広げていくために、受け入れ側、参加する側、双方の課題はありますか
 これまでに教職員から、この活動を行うには「調整・手配が大変」、「活動日数・労働時間が確保しにくい」、「指導・安全面が不安」、「保護者の理解を得難い」、「予算を捻出できない」等の課題を伺いました。こうした課題を受入地域との連絡・調整により、協同で解決していくとともに、この活動にふれたことのない学校の教職員や保護者に、ホームペー
ジ等を通して、この活動の教育効果として児童の変容があった事例を紹介していきます。

 一方、受入地域は、学校側、保護者側が安心して児童を送り出せるだけの受入体制を整え、学校と協同で教育効果の上がる活動を提供していくことが求められます。我々は受入側の方々に安全・衛生対策をはじめ、児童との接し方、教育効果の上がる指導方法など、児童を受け入れるための基本事項を紹介・解説を行っています。

 今はまだプロジェクトを世に知ってもらうことが第一ですが、誰に紹介しても「よいプロジェクトだ」と感じてもらえるよう活動の質を上げることが大切だと思います。

【2008年4月18日号】


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