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実践講座 PTA広報紙Q&A
<第26回> 2006年8月19日号掲載
  テレビのニュース番組の中で、「突撃ルポ」「現地ルポ」などというように、ルポということばがよく使われています。新聞ではあまり聞かないことばですが、どういう取材のことなのですか。本校PTA広報紙でも「ルポ」をやってみたいと思っているのですが、その方法や留意点などを教えて下さい。


 ルポは「ルポルタージュ」の略で、〈新聞・雑誌・放送などで、現地からの報告〉のことです。「ルポライター」という名の専門の書き手もいますし、テレビでは「レポーター」などという人が行うことが多いです。

 ルポルタージュということばはフランス語で、ふつうは簡単に「現地報告」とか「報告文」と訳されますが、その語源のレポーターレから考えていくと、単に事実の報告という意味だけではなく、事実を目撃したものが、その鋭い矛盾や問題点を告発し、読者をその現場につれもどしていく、という意味が含まれています。

 ○ルポは事実を基礎に、書かれるものですが、単にその羅列ではありません。もし事実を正確に伝えるだけでしたら、ふつうのニュース記事の取材と同じです。
 ○事実を表面的にみた、というだけではなく典型的な事実をとりあげ、筆者(記者)が、その事実にふくまれた意味を考え、事実にたいする分析、判断をくだし、組み立てていくのがルポです。
 ○ルポの組み立ては、単純に筆者のみた事実を平面的に記して、筆者の感想をプラスしたものではありません。調査した新聞記事や統計などのデータなどもいれて、事実を深くほり下げるため、立体的に組み上げていくことが大切です。

 リベリアでダイヤの違法採掘などをルポした記事を紹介します。『モンロビアから北東へ車で1時間。モンテセラード州カカタで道路に車を止め、サトウキビ畑の中の細い道に入った。/靴を脱いで池や小川を渡り、1時間あまり、密林のあちこちに、直径5〜10bほどの大きな穴が現れた。かすかに「ドドドドド」という機械音も聞こえてくる。/視界が開けると、8人の男たちがスコップで地面を掘っていた。機械音は、わき出す水をくみ出すポンプの音だった。現場監督の年配の男性は「ダイヤモンドが出る地層まで掘り下げているところだ」と説明した。(略)』「世界発2005」(朝日新聞より) 

 ふつうの取材は、事実の確認が主ですが、ルポでは、その原因や背景などを突き止めたりします。普段見られないところをしっかりと報告することが大事です。例えば安全マップを元にして、危険箇所に一日張り付いて自分の目で確かめ、人にも取材して、「なぜ・いかに危険か」を訴えたり、考えさせたりする記事にまとめます。

 事実をより突っ込んでいく必要が出てきたとき、5W1Hの中からいえば、Why―なぜ起こったのか、How―様子や経過などに重点を置く必要があります。例えば、先日のふじみ野市のプール事故では、安全点検や監視体制がどう行われていたのかに焦点を合わせて関係者に話を聞くことを中心にルポすることになります。

 ルポルタージュで大切なことは、事実のみで情景や雰囲気をきちんと伝えることですし、自分の意見・感想と事実の部分をしっかりと分かるように書き、時間軸で追うことも必要です。

 全国新聞研究協議会会長・鈴木伸男(町田市立町田第二中学校長)