子どもの心とからだの健康
歯周病


 「歯周病」は、日本の成人の約80%が罹っているといわれ、成人が歯を失う最大の原因となっています。また、最近10代から歯周病の初期症状である歯肉炎にかかる若者も増えています。今回はその「歯周病」について、港区高輪で「姫歯科室」を開いている、日本歯周病学会認定医の神田善姫先生にお話を伺いました。

● 歯周病と歯肉炎

−−−歯周病というのは、どんな病気ですか?
 歯周病というのは、歯を支える土台である歯周組織が破壊されて歯が支えられなくなり、ついには歯が抜けてなくなってしまう病気です。

−−−原因は何でしょう?
 プラーク(歯垢)の中にいる細菌が原因です。歯はよく見ると、歯と歯肉の境目に歯肉溝という浅い溝があります。ここにプラークがたまって細菌が繁殖し、炎症をおこして歯が侵されていくのです。

−−−健康な歯肉はどのようですか?
 色がピンクで、きゅっと引き締まっています。また、歯と歯の間はとがった三角形をしています。

−−−そうした歯がどのようになっていくのですか?
 歯周病には、2段階があります。まず、歯ぐきが炎症をおこす「歯肉炎」と、それが進んで、歯を支える土台が炎症をおこす「歯周炎」です。この2つを総称して歯周病といいます。
【歯肉炎】
 歯と歯ぐきの間の小さな隙間にプラーク(歯垢)や歯石がたまって細菌が入り、歯肉が炎症を起こすものです。何の症状もないこともありますが、歯肉の色も赤く腫れるため歯磨きやりんごをかじったときに血がつくなど、歯茎から血が出ることが特徴です。

−−−歯肉炎はホルモンも関係するのですか?
 歯周炎は以前は「歯槽膿漏」といわれていました。歯肉炎を放っておくと歯肉は溶け、今度は歯を支えている骨を溶かし始めます。これが歯周炎の始まりです。歯茎には膿がたまるので、口臭が強くなります。骨が溶けていくので、歯がぐらぐらします。最後には歯が抜けてしまいます。

● 歯周病と体調の関係

−−−歯周病と体調は関係がありますか?
 歯周病が進むと、体調にも響いてきます。疲れやすい、肩こり、頭痛、食欲不振など。また反対に、体調によって歯周病の進み方が変化します。身体の抵抗力が強い時は進行が一時的に停止し、弱まった時は歯周病の菌が活発に活動し、病気が進行します。

−−−歯周病は全身の病気とも関連するのですか?
 関連があります。歯周病の菌が、気道や血液を通って肺や全身に運ばれ、心臓病や動脈硬化、肺炎などの病気を起こすのではと推測されています。糖尿病や早産とも関係があるといわれています。

定期検診で再発を防ぐ

−−−治療はどのようにするのですか?
 病気の進み具合に応じてお話します。
【歯肉炎、軽度・中等度歯周炎】
 歯科医にプラーク(歯垢)と歯石をとってもらい、指示された通り、毎日ブラッシングをします。歯茎が赤くなる歯肉炎から、歯がぐらつき始める中等度の歯周炎まで、いろいろな程度はありますが、治療としてブラッシングを続けることは、かなり有効です。また、歯と歯茎の間に抗生物質を入れることもあります。歯周外科手術をする場合は、歯肉を開いて、中をきれいにします。歯周病は再発しやすいので、定期検診が大切です。
【重度歯周炎】
 歯科医と歯科衛生士、患者さんとの相談により、治療方針を決めます。歯を支える骨が溶けているときは、大学病院や歯周病専門医の受診を勧めます。

● 若者の歯周病事情

−−−若い子に歯肉炎が増えているそうですね。
 10代の60%の人が、歯周病の始まりの「歯肉炎」にかかっています。特に、若い子は「歯」といえば、虫歯に注意することだと思っていて、歯茎に関心がいきません。そのため、自覚症状のない「歯肉炎」に、気がつかないことがあるのです。そして気がついたときは、歯がグラグラするなど、進んでいることがあります。

−−−若い人のかかる歯周炎とは何ですか?
 「若年性歯周炎」は、思春期の若者がかかりますが、およそ300人に1人の割合で、女子に多くみられます。症状の進み方がとても早く、歯がグラグラになったりします。遺伝的な体質があるといわれ、プラーク(歯垢)や歯石があまりついていなくても症状がでることがあり、この場合は、早期発見、早期治療が最重要です。

◎予防はプラーク(歯垢)のコントロールから

−−−歯周病の予防は?
 これは、大人にもお子さんにもいえることですが、柔らかいものや甘いものを食べると、プラーク(歯垢)ができやすいので、少なくすること。また、歯並びが悪くても、プラークがたまります。とにかく歯磨きをきちんとして、プラーク(歯垢)を作らないようにすること(プラーク・コントロール)が、最も重要なことです。

−−−歯周病は生活習慣病といわれていますが。
 その通りです。生活の見直しですが、まず食生活の改善からいいますと、甘いものに偏らずに、繊維質やビタミンCの豊富な食べ物をバランス良くとること。タバコは歯周病には最も悪いので、禁煙を。その理由は、歯周病の進み方が早くなり、治療しても治りにくい、若いときから歯周病になりやすい、などです。糖尿病や不摂生な生活も、身体の抵抗力を低下させ、歯周病を悪化させます。  このように、生活習慣を改善して歯周病になりやすい危険要因を取り除くのも、大事な予防法です。
 ※詳しくは「歯周病治療情報センター」(http://www.perio.co.jp)







(2002年3月16日号より)