子どもの心とからだの健康

学習障害『LD』 早くから気づき的確な援助を

全般的な知的発達に遅れはないのに「聞く、話す、読む、書く、計算する、推論する」という特定の能力に問題があるため、特別な配慮がないと教育が困難な子どもを学習障害(LD)といいます。90年代に入ってからLDは大きな教育・社会問題としてクローズアップされ、「うちの子はLDではないか」と診察を求める親ごさんも多いようです。今回は国立特殊教育総合研究所の病弱教育研究部長で医学博士の原仁さんに診察の様子を伺い、見えない障害であるLDについて考えてみました。

学習障害「LD」

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皆さんはどのようなきっかけで病院に来られるのでしょうか?
 LDは外見では判断できないものですから、大抵は教師か保護者が日常生活で接するうち、本人の学習困難の様子に気づいてやってこられます。またLDとは別に、じっとしていることのない注意欠陥多動性障害(ADHD)というものがあるのですが、LD児はこの障害も合わせ持つことがしばしばあるため、行動や情緒に問題があるとして受診する子もいます。診察するにつれ、LDであることがわかってくることもあります。LDである場合は医療で直接取り扱うことではないので、通学している学校や地域の特殊教育センターなどへの相談をすすめます。

−−LDではと疑われるきっかけは?
 第一に、すべての学習ではなく特定の学習に限っての困難だということです。教科では国語と算数の困難が多く、小学3年前後で、よりはっきりしてきます。

−−診察で注意するのはどんなことですか?
 LDの診察で見逃せないのは、中枢神経系(大脳・小脳・せき髄からなる。末端の各部に指令を発する最も大事な働きをなす)のわずかな機能不全の徴候です。なぜなら、LDは中枢神経の機能不全によると推定されるからです。また、LDを疑って診察する際に、LDと合併する疾患や、LDではないことがわかるような所見がみつかることがありますから、診察は大切です。

中枢神経のわずかな機能不全

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本人との面接をしますか?
 小学校高学年から中学生になると自分の学習困難を客観的に語ることができ、重要な情報が得られるので、最低10〜15分位を費やします。
工や音楽、体育などの成績についても、つまづいているものがあるか、特別な能力を示しているものがあるかを聞きます。もし才能があれば、LD児の社会的自立の可能性が高まるからです。

−−緊急にするべきことはありますか?
 本人が学校に適応しているかを知るために、交友関係、教師との関係などを聞くことも重要です。学習困難それ自体をすぐ解消することはできませんが、それに附随する問題、例えば本人や保護者の情緒的混乱がみられるのなら、それを整理し、それ以上の不適応を避けるために、担任教師や校長、教頭に直接説明したり、あるいは一時的に薬物治療を実施するなどがあります。

これまでの発達を振り返る

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LDは就学してから気がつくことが多いようですが、幼い頃の様子は?
 私はLDについて、急に発症した病気(どこかの部分の故障)ではなく、発達障害の1つだという立場をとっています。発達上の問題は就学する以前から兆候があったと考えられるので、それまでの様子を聞きます。例えば話し言葉の遅れはなかったのに、就学直前になっても文字にまったく興味を示さない子ども。また、簡単なルールでもそれを守ることができず、集団で遊ぶことが苦手だった子ども。あるいは、何回教えても靴の左右や園服の前後がわからない子どもなど、軽微ではあるけれども確かな発達の問題を示していたはずです。
 一方で、学習困難の原因となるような疾患がないかも聞きます。例えば出生体重が極端に少なかったかどうか(未熟児はLDの原因の1つ)、けいれん発作がなかったかどうか(てんかんがLDを引き起こす可能性あり)などです。こうしたことの情報源として母子手帳が役立ちますので、持参してもらいます。

−−他にはどんなことを?
 家族の発達歴や、父親や母親がどのような思いで子育てをしているかをききます。LDは周囲に理解してもらいにくい状態なので、親の育児や教育態度のためとの誤解をまねきやすい。そのため、母親がとても傷ついていることが多いので、親自身のために心理職の治療的介入を依頼することもあります。

−−医学的検査は行うのでしょうか?
 知的に遅れはなく、特に問題になるような疾患の既往もないLD児の場合、診察や検査で中枢神経系の機能不全を予測するような兆候がみられることは少ないです。しかし、何らかの問題を発見できればということで、脳波検査、脳の画像検査、視力検査、聴力検査を行っています。この中で、脳波検査は薬物治療を考える際に、治療開始の重要な判断要素になります。

ADHDと合併するLD

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LDと薬物治療についてお話しください
 LD自体に薬物治療は意味がありませんが、行動障害や情緒障害を伴う場合は一定の効果があることが知られています。先程お話ししたADHD(注意欠陥多動性障害)は、不注意、多動、衝動性という3症状が特徴で、LDと合わせ持つ子が多いのです。小学校低学年では多動を治めるため、中枢刺激剤が治療に使われます。教室内の立ち歩き、登下校や遠足の際、勝手な行動をとって事故の危険があるときなどに有効です。また、服薬後4〜5時間には集中力がつき、学習自体にも改善効果がみられることもあります。この他重症チック(トレット障害)に合併したり、強い攻撃性を示したり、うつ状態を発生したLD児に対しては脳波検査を行った上で、薬物治療を行うことがあります。

−−LD児への対応で大切なことは?
 LDは教育的には特異な学習困難、心理学的には特有な認知機能のアンバランス、医学的には部分的(全般的ではなく)な脳機能不全によって定義されると私は考えています。ですから、多領域の専門職が協力しあって、LD児の問題に対処することが求められています。LD児への的確な医学的評価は、家庭と学校での混乱を回避し、子どもの不適応の悪化を避けるきっかけになると信じます。



●ADHDの理解のために 教師・親向けに具体例を紹介  主婦の友社
  主婦の友社から「のび太・ジャイアン症候群3 ADHD子どもが輝く親と教師の接し方」が出版された。ADHD(注意欠陥/多動性障害)を日本に本格的に紹介した司馬理英子(医学博士)さんの著書で、幼稚園から小・中・高校に至るまでいかに能力を引き出す教育をしていけばいいのかを、より具体的に紹介している。1600円(税別)
   http://www.shufunotomo.co.jp/webmado/detail.php3?oid=60896

(2001年3月10日号より)