食の指導 実践校ルポ
総合的な学習から遠足まで
静岡・横須賀小 徹底して「食」で設定
静岡県大須賀町立横須賀小学校(島嵜紘一校長)は明治6年、学制が始まった年に開校した伝統ある学校。城下町として古くから栄え、茶や米、苺など地場産物に恵まれた地域に位置しているが、これまで同校では食をテーマにした取り組みはあまり行われていなかったのが現状である。
昨年度から文部科学省「食生活に関する教育実践事業」のモデル指定を受け、総合的な学習の時間を中心に、給食の時間はもちろん学級活動、遠足などあらゆる活動を徹底して食と健康をテーマに取り組んでいる。また給食の残量が多いという子どもの実態を踏まえ、ゆっくりと余裕をもって食事ができるよう給食時間を45分間から55分間と10分延長し、残量が激減するなど多くの改革を行った。
生活科・総合的な学習では、全学年全時間を食をテーマに設定。4年生は「健康に合った食べ物を考えよう」と題しておやつ調べからサツマイモ作りを行い、さらに2学期は「健康おやつを作ろう」と干しいも作りなどに発展させていく。5年生は「私たちの食事を見直そう」と題して、ごはんとみそ汁調べからはじめ、米作り、大豆作り、味噌作りと発展させ食事を大切に育てる心を育てていく。どの学年も実践の中で何かしら農作物作りに取り組んでいることが特徴で、今では学校農園はもちろん花壇も野菜でいっぱいになっている。
また教科内容を洗い出し関連づけられる教科は全てリンクさせた。4年生の社会科ではゴミ問題で給食の残量と結びつけたり、5年生の食料生産の単元では醤油や味噌など地場産物の勉強を行った。また図画工作の時間に給食をテーマにポスター作りをするなど、様々な場面で食を取り上げた。
学校栄養職員はT・Tで参画
同校の給食はセンター方式であるため学校栄養職員は常勤していないが、学級活動や社会、家庭科の授業にはT・Tとして授業の導入部などに参画している。「担任からの話よりも、やはりそこに食のプロである栄養士さんが入ってもらうことで、子どもたちの興味も湧くようです」と研究主任の鈴木秀聡先生は話す。
地域に食文化の光を発信
同校では以前から、1年生と6年生でペアを組んで様々な活動を行ってきたが、昨年度は「ペアーさんに嫌いな野菜を食べてもらおう」というテーマで、1年生の好き嫌いを克服させるという取り組みが行われた。
1年生の話を聞き、なぜ嫌いなのか、どうしたら食べられるようになるかを考える。料理の工夫を考える子が多い中、卵が食べられない1年生に対し、鳥小屋を作ることからはじめてニワトリを育て、卵を産ませるという実践をした子もいたという。
「子どもたちは、大人が思い付かないような実に様々な発想をします。実際に食をテーマに実践してみると、子どもたちは生き生きと取り組み、教師側もやってみておもしろいなあというのが素直な感想です」と中田和明教頭は話す。食を総合的な学習の中核に据えて行うことは、多くの広がりをもたせることができ新しい教育に十分対応できると実感したという。
家庭や地域にも広がり
昨年度末に1年間の取り組みの成果として保護者を対象にアンケートを実施した。家庭では子どもの方から「3大栄養素がそろってるから今日の夕飯は合格だね」という言葉が出たり、「孫の影響で野菜のおかずが多く食卓に出るようになった」という地域の老人からの声なども多く寄せられた。また朝食が自然とパン食からごはん食に替わった家庭が多くなったという。1年余りの取り組みではあるが、予想以上の効果が上がっているという。
近隣の学校も、同校の取り組みをモデルとして同様の実践を開始。「横須賀小学校が発信基地となり、地域に食文化の光を発信していきたいと考えています。あらゆる教育活動で徹底して食の指導を行うことで教職員全員がB食の指導に関するプロになるCという意識で取り組み、他校へ異動した際にも広げていってほしい」と中田教頭は今後の抱負を話してくれた。
同校では研究の中間発表会を11月9日に行う予定。
(2001年8月11日号より)
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