海外の子どもの健康事情

「イギリスの性の問題」
10代の妊娠率増加、半数が中絶


 西ヨーロッパではイギリスが第1位で、ドイツの2倍、フランスの3倍、オランダの6倍に上る。何のことだと思うだろうか。これは10代の妊娠率である。

 ロンドンのある地域ではイギリスでもかなり高い妊娠率を記録しているが、15〜17歳の妊娠率は、1992年から1997年の間で1000人に67人から1000人に78人へと増加した。そして1995から1997年にはその約半数が中絶している。これらの女子たちは、学校を卒業しないことが多くよい仕事も見つけにくいため貧困の状態で子育てをする傾向にあり、1999年の報告では、90%の10代の母親が生活保護を受けている。

 なぜ妊娠率が高いのかという理由は1つに決めることはできない。セルフエスティーム(自尊心)が低いということも指摘されているし、試験で好成績をとってほしいという学校や親のプレッシャーから逃れる手段にする女子もいる。そして妊娠の防止となる学校での性教育のあり方も、実は関係しているといえそうだ。

 現在、中等学校で行われている性教育は、女子にばかり焦点を当てていて男子を疎外しているという批判があるのだ。その内容は、話し合い方(セックスの断り方)を知る、実践的な知識(避妊のしかた)を学ぶなどとくに女子に向けてのもので、男性の健康問題や父であること(父親の義務)といった話題にはふれていないという。また、男子は家庭でも似た状況にあり、同性である父親が性について話したがらないため、結局、雑誌・ビデオ・インターネットなどに情報を求めてしまうという。

 ところで、このイギリスの進んだ男女交際の実態を、現地に住んでいる日本の子どもたちは目の当たりにしている。

 ある日本人補習校の教師は、「とくに高校生では男女の交際で肉体関係があるのは当たり前で、日本の子どもたちはそういう話題についていけず現地校での友だち関係がこわれるという話も聞く」と話した。日本の子どもたちも性に対してオープンになってきているとはいえ、成熟度の差は依然として大きく、その意識・行動の違いに少なからず悩みを抱えているのだ。

 この問題も解決しようという試みは始まっている。今年2月、政府が若い母親たちを学校に戻そうというねらいで、4つの地区で10代の母親に無料のベビーシッターを派遣する施策を打ち出したのだ。

 しかし対策よりも予防に力を注がなければ事態は変わらない。小学校での性教育の義務化も叫ばれているし、先に挙げた地域では性教育も行う学校看護婦の必要性が提案されているが、性教育の充実を学校だけでなく家庭にもぜひ期待したいものだ。




(2001年9月8日号より)