食の指導 実践校ルポ

食、福祉、学年課題の3本柱

山梨・韮崎小 総合的学習に20〜25時間設定

 山梨県韮崎市は、昨年度から文部科学省の食生活に関する教育実践事業のモデル指定地域として、市内全体で食に関する指導に取り組んでいる。その中でモデル校として指定されているのが、市内の中心校で創立127年という伝統校、市立韮崎小学校(清水一校長)である。

 実践にあたって、同校では保護者の実態や興味関心を調べるため食生活アンケートを実施。各家庭の食生活の実態から、給食のこと、箸の持ち方、家庭でのしつけについてなど様々な内容で調査を行った。
 学校給食に望む保護者の要望には、安全な食品、食品に関する知識をつけさせたいということへの関心が高かったという。アンケートの回収率は98%。この結果をうけて、学校での食の指導をいかに進めるかを検討した。これまでにも定期的に朝食調査などを毎年実施していたが、いずれも児童対象のもので保護者への調査は今回がはじめてである。
 今年度は総合的な学習の時間に70時間を設定。食、福祉、学年課題という3本柱で実践を行っている。その中で食をテーマにした時間は20〜25時間。各学年では年間指導計画に1、2年生は生活科、3年生以上は総合的な学習の時間で食育プランを盛り込んだ。

摘果作業や消毒、袋かけ作業など

 4年生は地場産物のひとつであるりんごの木のオーナーになって、年間を通して観察や栽培にあたるという実践を行っている。まだりんごの実をつけていない1学期の段階では、りんごについて調べることから始めた。りんごの種類、値段、りんごを使った料理などグループごとにテーマを定めて調べ、発表を行ったが、まだ実際にりんごを目にしていないので調べ学習の際に実感がわかない児童も。「りんごが育ってくれば、また新たに調べたい内容もでてくるでしょう」と研究主任の向山三樹先生は話す。
 夏休み前の7月にはりんご園に出向いて摘果作業や消毒、水やり作業、そして2学期は袋かけなどの作業を行う予定。また子どもからの要望で「文字入りりんご」にもチャレンジし、さらに収穫したりんごでお菓子づくりを行うなど年間を通してりんごの観察から栽培、調べ学習と行っていく。

年生は今と昔の給食を比較

 6年生は、「食から見る日本と世界」と題した実践を行っている。授業の導入部として、コッペパン、脱脂粉乳、肝油という30年前の給食献立を体験した。当時の給食で提供していたコッペパンをパン屋に依頼して人数分作ってもらい、固くてパサパサした食感を実際に味わった。昔の給食と今の給食を比べ、子どもたちは今の給食が品数も多く、恵まれていることを実感。給食の話題から世界の食糧問題へと今後展開していく予定である。
 韮崎市は全校が自校調理方式の給食であるため学校栄養職員が7校中6校の小中学校に常勤している。同校に勤務する学校栄養職員の小野和代さんは、これまでは給食指導のみで授業への参画はほとんどなかったとのことだが、今年度から総合的な学習の時間にティームティーチングとして参画し、ほうとうの作り方や大豆の栽培方法など授業の導入部などに話をするなどしている。また導入時だけでなく、子ども達が調べ学習をした後の発表時にも参加し、一緒に授業を作り上げている。授業に参画することによって、子ども達の方から小野さんに寄せられる食べ物の質問も多くなったという。「単にまずい、おいしい、嫌い、好きという関心から、食べもの、食べる事自体への関心が移ってきている」とのこと。
 同校では希望献立を今年度より実施することとしたが、「子ども達が栄養バランスを配慮してメニューを考えるよい機会となっている」と小野さんは話す。
 給食をただ食べていたのが、栽培活動や食の安全性を学習する中で食べることの意味を考えるようになってきたとのこと。「食への興味関心が高まる事で、いろいろな分野へ学習が展開し、大人の感覚、発想で思いつかないことへも展開していきます。食は一生のこととして、これから生きていく上でずっと考えていけるような下地を学んでもらいたい」と向山先生も成果について話してくれた。



(2001年9月8日号より)