教育家庭新聞・健康号
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オピニオンリーダーに聞く「日本の食育」
世代超え国民運動に
議員立法で今期成立を目指す
自民党参議院 山東昭子議員


山東昭子議員
自民党参議院
山東昭子議員
 4月15日に衆議院を通過して、現在は参議院による審議待ちの状態である「食育基本法(案)」の行方が注目されている。今“なぜ食育”なのだろうか。その趣旨や背景について、自由民主党食育調査会会長である山東昭子・参議院議員から、話をうかがった。

◇ ◇ ◇

 「食育という言葉は、明治時代からすでに・五育・として才育、知育、徳育、体育と一緒に使われていた。食育は人間が健全に育つための基本の一つだが、その内容があまりに幅広くあいまいだったため、一般に分かり難い面があるだろう」

 「食育は子どもだけの問題ではない。基本は幼児期からの家庭での食事を通したしつけにあるけれど、外食の多い働き盛りの年代は食事を通した日常の健康管理として、高齢者には健康で長生きしてもらうために。素材や食器から季節感を楽しめる、日本の食文化も見直してほしい。さらに飢餓・食糧問題は今や地球規模で考えねばならない課題です」

 文科省はしつけ・教育の面から、農水省は生産者や安全面、厚労省は病気・健康の面からと、今までは各省庁ごと個別に取り組まれていた。しかし「国民の健康を第一に考えた議員立法で国民運動にしよう」と昨年1月、参議院先議として超党派で提出しようとしたのが最初だった。プロの調理人や栄養士から、惜しまず協力するという応援も高まっている。外食産業界からの関心や期待も高いという。

 「世界の50%の人々が1日2ドル以下で生活している中で、日本には世界中の食材が集まり、感謝することなく残菜があふれる一方、生活習慣病が増加。国民的関心を高めることで、年間30兆円の医療費を減らすことができるのです」

 審議は他の重要法案の陰で先延ばしの状態。民主・社民の反対もある。「女性を家事にしばりつけ社会進出を妨げるものだというのが反対理由。でもこれは被害者的な見方だと思う。男女共同参画社会とは、男女が共により良い社会を築こうとするもので、家事を女性だけに押し付けるものではないのだから。また自民党のポイントになるのではなく、あくまで国民運動なのです」

 ファストフードからスローフード、地産地消、「5−A−DAY」運動など、時代は食育へと向かっていると言える。

 「原点は食を通じた心と心の触れあい、その中でおいしさ、バランス、安全などが求められる。皆さんのこだわりの心がこの法案を作らせたのです」と、最後の言葉に力がこもった。


〈略歴〉山東昭子(さんとう・あきこ)
1942年東京生れ。
 11歳で芸能界に入り、女優・司会として多くの映画、テレビ、雑誌に出演。
 74年参議院全国区・比例区に32歳の最年少で初当選。
 党内では女性局長、環境部会長など教育・福祉・住宅・外交関係を担当。
 90年には日本で6人目の女性大臣として科学技術庁長官に就任した。

食育基本法案概要

 「食育基本法案」の概要は次の通り。(一部抜粋)

 【目的】
 この法律は、近年における国民の食生活をめぐる環境の変化に伴い、社会が一体となって食育を推進し、国民一人ひとりが生涯にわたって健全な心身を培い、豊かな人間性をはぐくんでいくことが緊要な課題となっていることにかんがみ、食育に関し、基本理念を定め、並びに国、地方公共団体等の責務を明らかにするとともに、食育に関する施策の基本となる事項を定めることにより、食育に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって豊かな国民生活及び活力ある経済社会の実現に寄与することを目的とするもの。

 【基本理念】
 国民の心身の健康の増進と豊かな人間形成▽食に関する感謝の念の醸成▽食育推進運動の推進▽子どもの食育における保護者、教育関係者等の役割▽食に関する体験活動と食育推進活動の実践▽伝統的な食文化等への配意及び地域産業の活性化と食料自給率の向上への貢献▽食品の安全性の確保等における食育の役割

 【基本的施策】

 1.学校、保育所等における食育の推進(学校、保育所等において魅力のある食育推進活動を促進し、子どもの健全な食生活の実現と心身の成長が図られるよう、指針の作成の支援、指導にふさわしい教職員を設置、指導的立場にある者の意識の啓発、指導体制の整備、地域の特色を生かした学校給食等の実施、教育の一環として行われる農場等における実習、食品の調理、食品廃棄物の再生利用等様々な体験活動を通じた食に関する理解の促進、過度の痩身または肥満の健康に及ぼす影響等についての知識の啓発その他必要な施策を講ずるもの)▽家庭における食育の推進▽地域における健康増進のための食生活の改善の推進等▽食育推進運動の展開▽食品の生産者と消費者との交流の促進▽食文化の継承のための活動への支援等▽食品の安全性、栄養その他の食生活に関する調査、研究、情報の提供及び国際交流の推進



【2005年5月21日号】


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