総合的学習で
「身近なスナック菓子を考える」活動
「頭を使って食べる」を可能に
東京都荒川区ひぐらし小学校

 児童をとりまく「食」に関しては、偏った栄養摂取や孤食など、様々な問題が生じている。肥満や高脂血症など、生活習慣病の要因が児童にも広まる傾向があるが、東京都荒川区立ひぐらし小学校3学年ではこれらを予防し、正しい食習慣を身につける目的で「健康教育」に取り組んでいる。今回は総合的な学習の時間の中で、ゲストティーチャーをカルビー社から招き、身近なスナック菓子の食べ方・選び方などを考える活動を行った。



 ゲストティーチャーの川崎さんが、野菜スナック「ベジたべる」の作り方をパネルを見せながら子ども達に説明する。
 「6種類の野菜を大きな機械で細かく切ります。次に、混ぜてから小麦粉を入れてこねて、蒸してから薄く伸ばします。ハート型に切って油で揚げ、味をつけ、袋詰めをして、出来上がり」
 油で揚げる前の「ベジたべる」を見せると「わー、かわいい」とランチルームに集まった56名の児童から歓声が上がった。油で揚げる前は、濃い緑色をした直径1・5センチほどのハート型。触感は乾燥マカロニやパスタに近い。
 「この緑色はね、全部野菜の色だよ。着色料を使っていないんだよ。油で揚げたものと比べてごらん」「色が違う。大きさもぜんぜん違うね」
◇ ◇ ◇ ◇
 総合的な学習の時間の中で、3年生の学級担任2人とT・Tによる「身近なスナック菓子を考える」食の教育を行ったのは、荒川区立ひぐらし小学校の学校栄養職員(栄養士)宮島則子先生。2時間扱いで、第1時は、健康な体をつくるために血液の流れがスムーズなことが必要であり、そのためには果物と野菜が重要な役割を果たすことを学んだ。また、自分が食べた1週間分のおやつの袋を集め、食べているおやつの種類や量についても考えた。
 意外にもチョコレートやケーキなど甘いおやつを日常摂っている児童は少なく、スナックや煎餅など、塩味のものが多かった。おもちゃ付きのお菓子も目立った。
 日暮里という土地柄、駄菓子屋が多いことを活かして、駄菓子屋横町を調べ、昔のおやつと今のおやつについて考える活動も行った。

素材・量・カロリー 目で見て実感
 カルビーからゲストティーチャーを招き、実際にスナック菓子の素材や栄養の違いについて考えたのは第2時。
 一日でカルビーが作るポテトチップスの量は、130万袋。ほぼ体育館3つ分だ。1年間にカルビーが作るスナックの総量は10億袋にもなるという。その途方もない量に、児童らの目は丸くなる。身近なおやつを作っているメーカーの人の話に、興味津々。
 「この一袋の中には、どんな野菜が入っているか、知っているかな」。カゴの中にはモロヘイヤやホウレンソウ、カボチャ、ピーマン、トマトやジャガ芋など6種類の野菜が盛られている。「これが全部入っているんだよ。一袋の40%が野菜」。子ども達から「そんなに野菜が入っているの」と、驚きの声が上がる。
 「ホウレンソウにはどんなビタミンが多く含まれているの?」という宮島先生の問いかけに、すかさず「ビタミンA」と教室中から応えが返ってくる。改めて袋の表示を見直す児童もいる。「鉄分やカルシウムも入っているんだね。お菓子にも栄養があるなんて、知らなかった」
 「ポテトチップス一袋の原料は、じゃが芋が3つ分だよ。さやえんどうのスナック菓子の中には、一袋に180粒のさやえんどう豆が入っているよ」と具体的な素材の提示とゲストティーチャーの説明に、改めて菓子と本物のさやえんどうを見比べる児童らの表情は真剣、味見も慎重だ。「本当だ、さやえんどうの味がする」「匂いもさやえんどうと同じだね」
◇ ◇
 ポテトチップス70gのカロリーを実際にご飯に換算すると、2膳半になる。宮島先生は、実際にポテトチップスと同量のカロリーのご飯を示し、「こんなにたくさんのご飯を夕食の前に食べると、お腹がいっぱいになってしまうよね」と視覚に訴えたり、「ポテトチップスは一袋を一度に食べることができるけれど、ご飯だけを2膳半食べることはできるかな?ご飯なら、お味噌汁やおかずと一緒に食べるよ」と、カロリーと栄養について興味を持たせ、「実際にどれくらいの量ならば食べても良いと思う?量ってみよう」と、グループごとにポテトチップスを計量した。
 「僕はこれくらい食べたい」と一袋全部盛る子もいれば、「いつも食べる量はこれくらいかな」と少しづつ計量する子と、様々だ。何カロリー、何gと言ってもピンとこないものだが、実際に目で見て具体的なイメージを持たせることで、生活に役立ててもらおうというのが活動のねらいだ。
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 授業後、宮島先生は「子どもたちは、実際にスナック菓子を作っているメーカーの方からじかに話を聞くことができることを、とても楽しみにしていました」と言う。
 「スナック菓子は塩分が多い、とみんな思いこんでいますが、一袋に入っている塩分は実際は3655010。1gも入っていないんです。もちろん一袋食べてしまえば食べ過ぎですが。・これはダメ・・これなら大丈夫・と頭から決めつけるのではなく、ちゃんと表示を見て、バランスの良い食事をとるにはどうすれば良いのか、何をどれだけ食べると良いのか、頭を使って食べることが出来るようになること。それが・食育・の目的です」と語った。
 今回初めて栄養職員とのT・Tを行った2組学級担任の三矢先生は、「1時間目には日暮里の町調べで駄菓子屋横丁を調査し、そこからおやつの食べ方に発展させました」と説明。1組の瀬戸口先生は「予想以上の食いつき。毎日食べていたおやつのことを、あれほど真剣に考えるとは思わなかった」と、成果を実感していた。

役立った!楽しい!
子どもの感想

今日一日でいろんなことがわかったよ!  高橋あやさ
 今日初めてカルビーの人を見て、とてもすごい事をしているのがわかりました。お菓子は1日に100個ぐらいつくっているのかと思っていたら、もっといっぱいだった。私が知らなかったいろいろな事を教えてくれてよかったです。ポテトチップス1袋はご飯130gで、2ぜん半と同じカロリーがあることもわかったし、いつも食べているポテトチップスの量が40gくらいだということもわかりました。ポテトチップス1袋に70gも入っていることもわかりました。パッケージのことや野菜のことも教えてくれてよかったです。今日は楽しかったです。
食べる量を決める!   須藤舞子
 自分で食べていいと思うポテトチップスの量は30gです。「ベジたべる」の作り方を知って、とても手間がかかっているのにびっくりしました。「さやえんどう」スナックはえんどうまめの味がして、「ベジたべる」はほうれんそうの味がしました。油で揚げていない「ベジたべる」はとてもかたかったです。これからは、おかしを食べる時、量を決めて食べます。それとやさいが入っているお菓子をなるべく選ぶようにします。
どんなやさいがいちばんきくのかな?   田辺なつみ
 野菜のおかしにはえいようがあるんだね。でも、チョコにもえいようがあるなんてびっくりしました。食べ過ぎはダメだけど、お菓子にもえいようがあるなんてはじめて知りました。これからは、ドロドロな血にならないように野菜やくだものをたくさんたべるぞ!でも、どんなやさいがいちばんきくのかな?
一度に食べる量を量ってみよう
一度に食べる量を量ってみよう

【2003年7月19日号】