ジェンダー・フリー

男らしく、女らしくって何だろう?

 「男の子なんだから泣くんじゃない」「女の子なんだからお手伝いくらいしなさい」そんな言葉を一度は言われ、そして子どもたちに向って言ってはいないだろうか。「男らしく」「女らしく」生まれた時から当然のごとく言われつづけてきた言葉。そんな鎖をはずして「自分らしく生きる」それがジェンダー・フリーという考え方であるという。日常生活の様々なシーンを取り上げ、ジェンダーについて見直すきっかけ作りをしてくれる絵本「ジェンダー・フリーの絵本」(大月書店・全6巻)の第1巻「こんなのへんかな?」の著者であり、全巻の監修を行った村瀬幸浩氏(一橋大学・津田塾大学講師)にジェンダー・フリーについて、また性教育のあり方についてなど聞いた。

 ジェンダー・フリーとは、男と女の違いを強調しない考え方であり、「男らしく」「女らしく」といった社会が作り出した考え方にとらわれず「自分らしく生きる」「性別でなく、個性、個人差に着目しよう」という人間観を育てようという新しい考え方です。
 以前から社会的な性差の強調に対する批判はあったものですが、「ジェンダー・フリー」という言葉で注目されるようになってきたのは1970年代に入ってからです。女性解放運動の広がりの中で「セクシャルハラスメント」とともにクローズアップされてきました。
 現在、学校教育で行われている性教育はジェンダーへの偏見が多く見られます。まず「男と女の違い」を強調することから始まり、男と女を分けるというニュアンスが強いですが、そういった性差を強調する学習ではなく、その前に「自分らしく生きること」「自分を見つめさせる」という学習が大切なのではないでしょうか。

社会的な性差にとらわれずT自分らしくU生きること

 男と女の違いは、「妊娠する可能性があるかないか」厳密に言えばただそれだけなのです。生物的な性差によって社会的な性差を作り上げてしまうこと自体が誤りなのです。
 もともと男と女の違いははっきりと二分されているものではなく、段階的な変化=グラデュエーションと考えられており、男に近い感覚をもった女もいれば、女の感覚に近い男もいる。男の子の中にか弱い子もいれば、女の子の中にも強い子もいる。すべて個人差があって当然であり、それを無理矢理「男だから」「女だから」と区別することはおかしいのです。
 いろいろな広がりの中での自分らしさを大切にしていく。社会が創り上げたジェンダーへの偏見をなくしていくことで、子どもたちも安心して生活できる部分があるのではないでしょうか。「男だから」「女だから」という考え方は、子どもたちから「自分らしさ」を失わせ、生きにくくしているのです。
 保育園児を対象に行ったある調査では、入園時にはほとんどの子どもが好きな色に「ピンク」と答えていたが、小学校に入学する頃になると男の子の多くが好きな色はブルーと答えるようになったといいます。これは保育園という社会生活や家庭の中で「女の子は赤やピンク、男の子は青や緑が好き」という概念を刷り込まれてきた結果なのです。
 また服装ひとつをとってもスカートやブルマーは女の子がはくもので、ズボンばかりはいている女の子やかわいらしい洋服を着ている男の子は「少し変わってる」と言われてしまう。「変わってる人」と思われたくないために社会の求める性別に合わせようとしてきた面が誰しもあるのではないでしょうか。
 そこを一度見直してみようということです。男女平等を掲げている国々や欧米諸国などでは基本的には制服などがない国の方が多いのです。スカートを履いてもいいし、パンツスタイルでもいい、そんな自由な選択をできる環境が「ジェンダー・フリー」への一歩となるでしょう。




(2001年4月14日号より)