食の指導実践校ルポ・茨城県
食に関する幅広い実践 茨城・下館市立大田小学校
茨城県下館市立大田小学校(秋葉善彦校長)は、全校児童数772人という県西では最大の大規模校。昨年度から文部科学省の地域指定を受け、モデル校として食に関する教育実践事業に本格的に取り組み始めている。
実践を始めるにあたって食に関する授業や活動を教師1人が1提案の方向で進めた。そこから様々なアイデアが生まれ、数多くの実践に広がっていったという。「多くのアイデアを出し合い、各クラス、各学年で実践し合うことでよりよい実践を進めることができた」と研究主任の日向みさ子教諭。大規模校ならではバラエティ豊かな実践ができたと話す。
昨年度は全学年が総合的な学習の時間に食に関する事項を絡めた活動を展開。それを踏まえた形で今年度は「全教科全領域での実践」を掲げ、1・2年生は生活科、3年生総合的な学習、4年生学級活動、5年生道徳、6年生体育の中で食に関する活動を行った。3年生の総合的な学習では「食べ物今、むかし」と題して、昔の食べ物の良さを調べて自分たちの生活に生かすといった学習に取り組んだ。子どもたち自身がアンケートを作成し調査することで食について考え、その中で自然と昔の食に関心を持つようになり、祖父母に話を聞くことで今の食事との比較を行い、食の大切さに気付いていくというもの。5年生の道徳では、食料を生産する人々の苦労や食を通して家庭の食生活の大切さを学習。給食の残量を目にし、学校栄養職員の話を聞くことで「食べ物を残すこと」について考え、食べ物の大切さについて話し合う授業が行われた。
さらに全学年を通して、親子給食会、祖父母給食会や標語・ポスター作り、地域に伝わる郷土料理や家庭の健康メニューの募集などを行った。全児童を対象としたポスター応募では、応募作品を地元の公民館や商店、コンビニなどに掲示するなどして地域全体の啓発にもつないだ。
同校を取材してみて感じたことは、食に関して幅広い教育活動を行っている事と、地域の協力体制が整っており地域社会全体で子どもの食生活を支えているということである。食の指導にあたっては、学校栄養職員や養護教諭とのティーム・ティーチングはもちろん、家庭や地域を巻き込みゲスト・ティーチャーを活用した授業も積極的に行っている。保護者や祖父母などをゲストティーチャーとして迎え、授業へ協力してもらえるよう人材バンク制度も確立させた。梨作りやサツマイモの料理、タイ料理やお米の料理など幅広い授業に参加協力が得られている。
2年間の実践研究の成果発表会が10月25日に行われた。今後の課題として、養護教諭や学校栄養職員の授業展開に際しての校内の体制づくり、家庭での実践に向けた支援のあり方などを掲げている。
(2001年12月15日号より)
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