各教科等における食の指導の具体化

 歯の健康に視点をあてた取り組みや給食指導など健康教育における取り組みを継続的に行ってきた横浜市立宮谷小学校(大久保重則校長)。JR横浜駅から徒歩15分程度の商店街の近くにあり、周りは緑も多く、落ち着いた雰囲気の中にある学校だ。創立95年を迎える伝統校で、代々同校に通っている家庭も多いという。
 体育科を中心としたこれまでの実践を土台として、昨年度から子どもの食に関する指導を研究の中心に据えて、総合的な学習との関連も図りながら心と体を大切にした健康教育に取り組んでいる。今年度の重点目標は「各教科等における食の指導の具現化」。各学年が月別、教科別に食との関わりのある単元を洗い出し、その流れを表にまとめることから始めた。
 「食の指導は、一教科の中、他教科等との関連、総合的な学習、どの形でもできるテーマです」と研究担当の山崎浩一郎先生は話す。食を切り口として、健康への意識を高め、単に栄養の知識をつけるだけでなく、中高生また親になった時に生きてくるような長いスパンで生きる力をつけていくことが最終的な目標である。そのため、同校では「交流」「体験」「表現」を活動の3本柱として「自分の健康を見つめ、ともに健康を喜び合える子どもの育成」を健康教育の目標として掲げている。
 「子どもは大人と比べ健康への意識がなく、健康の大切さに対する実感が弱い。その中で自分の健康について主体的に考え、行動できる原動力となるような指導をしていきたい」というのが教職員の願い。生き生きと生きるためにはどうすればいいかというテーマを掲げることで、自ら自然に食に目を向けさせることをねらいとした。
 学校栄養職員や養護教諭は、保健の授業で生活リズムや食に関る部分にティームティーチングとして参画。3、4年生で4時間、5、6年生で8時間程度を担当。授業では主に導入部分に参画し専門家としての立場からアドバイザー的に指導にあたっている。年間指導計画以外の時間でも担任の要望があればできる限り授業に出向いているという。
 同校のランチルームは、食堂というよりもまるで「栄養教室」。壁一面、栄養関連の資料が飾られ、棚には食や栄養関連の書籍が並んでいる。子どもたちは自由に出入りし、書籍の貸し出しも行っているという。同校では、各クラスごと月に1度ランチルームを利用しているが、給食後には15分程度、学校栄養職員の西村美智子先生による食の指導が行われている。「ランチルームの日は栄養士の先生の話」というのがすっかり浸透しており、子どもたちも楽しみにしているという。
 指導の内容は、学年ごと年間指導計画にのっとって行われており、低学年は絵カードを使った食品の分類や腹話術による楽しい指導。高学年になると、江戸時代の食事と顎発達など教科と関連したものも。西村先生は「この時間に見聞きしたことが発端となり、総合的な学習の時間などで課題となってくれれば」と話す。
 特別活動の時間などを使った1時間の給食指導、ランチルームでの指導、ティームティーチングでの指導、これらを続けてきたことで少しずつ子どもの食に対する関心が高まり給食の残菜が減るなどの効果も出てきたという。今までは一方的に教えることが多かったが、今では『こんな資料ある?』『この栄養素について調べたい』といったように自分たちから学ぶ姿勢が生まれてきたとのこと。



(2001年5月12日号より)