様々な食の活動基盤に

千葉・睦沢中 総合的な学習など枠広げ

 都心から房総半島に向かって電車で約一時間半。九十九里から程近いところに位置する千葉県睦沢町立睦沢中学校(久我政史校長先生)は、学校の周りに緑も多く、自然豊かな環境にある。
 この睦沢中学校の最大の特色は、300人以上が入れるランチルーム。ここで毎日、全校生徒270名と全職員が一緒になって給食を食べる形が20年以上続けられている。これだけの大人数が一緒に給食を食べるにも関わらず、配膳も手際良く進められ、生徒のあいさつとともに一斉に食事が開始される。昨年には姉妹校であるシンガポールのベティセカンダリースクールから7名の生徒が訪れたが、この時もランチルームで一緒に給食を食べたとのこと。
 同校は昨年度から文部科学省が進めている「食生活に関する教育実践事業」のモデル指定校となり様々な取り組みを進めている。すでに取り組みの一環として、月に一回、様々な国の料理を給食に出しており、6月には第1回目としてインド料理の日が設けられた。このインド料理の日では、スパイスを使って本格的なカレーが作られ、生徒たちは初めてのナンに戸惑いながらもその食べ方などに興味を示していた。ただ、珍しいものを食べて終わりというのではなく、外国の食文化に触れさせることも目的の一つ。そこで料理に使われたスパイスなどはランチ−ルームの前に展示された。また、7月にはイギリス料理が予定されているが、これはALTの先生が1学期でイギリスに帰国するため、彼女の国の料理を体験してみようということからの試みである。
 さらに月に一度、リクエスト献立の日があり、これはクラスごとに生徒自らが、献立を決めて行くもの。どんな料理が出てくるか、他のクラスの生徒は当日まで分からない。最初に生徒からリクエストが上がった時点では、栄養に偏りがあるメニューとなりがちだが、そこから学校栄養職員の先生と話し合いながら決めていく。このリクエスト献立の利点について「生徒が食べたいものが食べられることと、自分でメニューを考える楽しみといった、二つの目的を生徒に与えることができます」と同校学校栄養職員の吉岡ひろ子さんは語る。
 吉岡さんは月2回、給食の時間に生徒たちに向けて、給食に使われた食材や栄養素についての話を行っている。毎月配布される献立表も吉岡さんの手作りによるもので、イラストや、その日のメニューのポイントが丁寧に書きこまれている。また保護者に向けても、毎月給食だよりを配布することで食への理解を深めてもらうよう努めている。

ゲストティーチャー招き
太巻き寿司作り
 昨年度は保護者を学校に招いての給食試食会も行った。保護者は学校が指定した給食試食会の週の中で、献立を見て訪問する日を決め、生徒たちとは別の部屋で試食を行った。給食を食べての感想は「思ったよりも量は多い」、「給食が冷めておらず暖かい」などの声が上がった。この試食会で保護者から聞いた感想は、今後の給食にも反映されていくので、今年度も11月に実施される予定である。
 このように、保護者をはじめとした地域との連携も密に行われており、2学期には学校オープン授業として、地元で太巻き寿司を作っている方を、ゲストティーチャーに招き作り方を講習。生徒たちも一緒になって太巻き寿司作りにチャレンジする。

「栽培」「食と健康」 など4テーマで

 同校では総合的な学習の時間は、すでに昨年度から先行的にスタートしているが、1年生のテーマは食について。昨年度の1年生も食をテーマに野菜の栽培を行ったが、今年度は学級の枠を超えて4つのグループに分かれ、「栽培」、「食と健康」、「日本の食文化」、「世界の食文化」についてそれぞれが取り組んでいく。食と健康では栄養素の何が足らなくなると体にどのような影響が出るのか、はたしてコンビニのお弁当で栄養を補っていけるのかなどを調べていく。また、今年も栽培では学校の畑で、トウモロコシやきゅうりを育てており、無事に収穫された時には、給食の献立として並ぶ予定である。
 昨年度は先進校の視察など準備期間にあてられたが、研究2年目にあたる今年度は、給食の時間だけでなく、授業や委員会活動においても、食をテーマに取り入れて行く。食の指導を担当するのは研究主任の江澤昭治先生。「睦沢中学校は指定を受ける以前から、吉岡さんの協力もあり、給食には力を入れて取り組んでまいりましたが、その活動の枠を広げる形で、学活では生活習慣病の予防と生活習慣の見直しについて話し合ってまいりますし、各教科でも食や栄養について盛り込んでいこうと、先生方に考えてもらっています。その内容は夏休みの間にまとめられ、2学期からは本格的に実施されることになります」と江澤先生は話してくれた。


(2001年7月14日号より)