生徒全員にノートパソコン

 

岡山学芸館高等学校

留学中の道具としても

学校法人岡山学芸館高等学校は、英語科の生徒全員にノートパソコン(IBMThinkPad)を持たせ、校内LANからの専用線経由でインタ−ネットの活用をさせている。

高等学校段階で、クラス全員にノ−トパソコンを持たせ、校内LANから専用線でインターネットに接続しているのは、全国的にも初めてと思われるが、森靖喜校長は「よほど条件が揃わないと、できないことでしょう」という。

同校は、英語科の他、普通科の中に吹奏楽特別コ−ス、美術・デザインコ−ス、特別進学コ−ス、食物調理科等を持つ。このうち英語科は、県内でもトップレベル。生徒は、一年次の一月から二年次の十二月まで、オ−ストラリアの高校にホ−ムステイをしながら留学するが、それを楽しみに、県立のトップ校をけって、入学してくる生徒も多い。

その留学中の道具としても、ノ−トパソコンとインタ−ネットの活用を考えた。同校が一九九四年にシドニ−に設立したICET(旧OGA:岡山学芸館オ−ストラリア)にもサ−バ−を置き、日本と専用線で結べば、事務連絡や教育プログラムについて、メ−ルでやりとりできる。

インタ−ネットの活用を本格的にスタ−トさせたのは、平成八年四月。校内にサ−バを置き、校内LANを敷いて専用線でプロバイダと接続。メ−ルIDは、一・二年生の英語科生徒七十八人全員と、教師三十数人が持っている。生徒には、校内のどこにいても接続できるようにと、無線LANが組まれている。サーバの管理もネットワーク管理もすべて自前だ。

近隣の小中学校にも接続を開放

また、同校のサーバには、ダイアルアップ接続の受け口が数本用意されており、生徒や教師は自宅からもインターネットに接続できる。その受け口は、有料で父兄や近隣の小中学校、高校の教員などにも開放されている。留学中の生徒の父兄の中には、子供と電子メールで連絡を取り合うためにパソコンを購入し、同校のサーバに日々接続している方が十人ほどいる。

 現在留学中の生徒は、日本から持参したノートパソコンを、ホームステイ先からICETのサーバにダイアルアップで接続し、日々日本の父兄や教師と電子メールで連絡を取り合ったり、インターネットから学習のための情報を検索したりしている。また、日本史など、留学中に指導が困難な教科に関しても、日本から担当教師が課題を電子メールで送り、生徒が回答を返信、教師が添削して返信するという方法で、遠隔指導を行っている。

ある教師は、留学中の生徒たちから、毎日10件ものメールが届き、生徒の留学中の悩みの相談や励ましのメールを送っているという。

 新一年生のノ−トパソコンにはWindows95を始め、NetscapeNavigator、ワープロソフトのWord、表計算ソフトのExcelなどが乗っている。また、今後ソフトウェアのインストールはLAN経由でいつでもサーバから自分でインストールできる構成になっている。

「インターネット・コミュニケーションの時間」

生徒は週二時間、「インターネット・コミュニケーション」の時間に、コミュニケ−ションの道具として、パソコンの使い方を学ぶ。指導するのは、東京の大手の会社でコンピュ−タ関係の仕事を専門にしていて、請われて昨年から同校に来た姜(きょう)英徹先生。「生徒のパソコンに関するレベルは、まったく使ったことのなかった生徒も八割ぐらいいて、様々。前期中は、パソコンの基本操作から始まって、インターネットから自由自在に情報を検索すること、電子メール等で情報を交換することを中心にやっていきたい。後期からは、ホームページを作らせ、情報を自ら発信することの意義と責任について学ばせたい。情報の検索→情報の交換→情報の発信でこの授業のワンセットになります。」インタ−ネットについては、入学当初から自ら接続の設定を行い、ホ−ムペ−ジを開かせた。RealAudioなどのプラグインソフトも駆使して、生徒たちは授業だけでなく、放課後や休憩時間などにかなり楽しんで使っているようだ。

家にも持ち帰ってインターネット

授業中の生徒に話を聞くと、「家にもノ−トパソコンを持ち帰って、友達から本を借りて、ホ−ムペ−ジを見たり、友達同士でメ−ル交換をし始めています。人間ってすごい、パソコンの偉大さを感じます。自分でもホ−ムペ−ジを作ってみたい」と吉田君。「キ−さえ覚えれば簡単。その国にいかなくても、簡単に情報が取り出せる」と坂口さんは“こうやるの”と言いながら、先生に送ったメ−ルの履歴や友達から来たメ−ルを見せてくれた。

 同校では、イントラネット用にもう一台のサーバを構築している。それによって、校内情報の共有化や、事務処理の自動化などにもイントラネット用のホ−ムペ−ジを利用しようとしている。

 「会社と比べて、教師の事務処理や無駄な紙の消費があまりにも多いのには驚かされた。教師が面倒な事務処理から開放されて、生徒と接する時間がふえれば良い。」と姜先生は抱負を。

 海外からの交換留学生も多く、英検二級に九割以上が合格する同校。森校長先生は、「高校時代に十分使いこなせれば、大学に入ってからも“遊学”でなく、本当に勉強する道具になる」と強調する。 

 ホ−ムペ−ジ http://www.gakugei.okayama.okyama.jp/

(教育家庭新聞96年7月6日号)