子供部屋は是か非か
日経ビジネスイノベーターから、 ■数字・うら読みななめ読み 帝塚山大学教授の北浦 かほる氏のインタビュー。氏の主張を一言でまとめると、 結局、問題なのは、親子のコミュニケーションの仕方なんだと思います。いちばん大切なのは会話やコミュニケーションであって、間取りじゃないんです。 氏の主張を、少し詳しく見てみよう。氏は、部屋は自立への第一歩だが、日本と欧米とでは、子育てというものに対する考え方が異なることを踏まえるべきだと言う。 まず、子育ての仕方からすごく違う。幼児をしつける場合ですと、日本ではボタンをはめるとか、スプーンを上手に使うといった身辺自立が中心ですが、アメリカはマナーとリーダーシップと意思表示をしつける。何か飲みたいときに、ミルクですかお茶ですかと聞き、返事するまで与えない。日本だったら、何も聞かずに適当に選んで与えるでしょう。 それに従って、子ども部屋に関する考え方も違っているのだと主張する。 部屋の掃除、ベッドメイキング、服の収納、机の配置など、アメリカでは小学校4年くらいで子ども個人に任せます。日本の場合は、高校2年くらいでもみんな親がやってしまう。子ども部屋の扱い方が、日米ではずいぶん異なりますね。 この事実を下敷きにして、近頃よく言われる「気配のわかる家」に対し、先日起きた佐世保の事件を考えてみたら、子ども部屋がどうのこうのいう問題を越えてます。子どもと親の問題です。先ほどの、3歳までにつなぐべき親子の絆、そのあたりの話だと思うんです。 とばっさり。それなのに、まだ“気配が分かることが大切”とか言ってね。いちばん嫌なのは、建築家までが尻馬に乗って言ってることですね。一般の人は、建築家が言うと正しいように思う。こういうことを建築家や住宅産業が言ってきたことがすごい問題です。 気配がどうこう以前に、親が子をどう育てたいのか。その辺を親がきっちり出さないといけない。
同連載から反対意見。横山彰人建築設計事務所の代表取締役である横山彰人氏。実は、根本の意見は一緒で、 親子と夫婦の軸がしっかりしている家庭はどんなに間取りが悪くても、子どもが犯罪に走ることはないんです。 という。しかし、氏は、日本の子ども部屋の歴史的な側面を考える事が重要だとする。昭和20年代の後半から始まった受験戦争を勝ちぬくために、3LDK、2LDKといった少ない部屋のひとつを「勉強部屋」として子どもに与えることがステータスのようになってしまったこと。 その上で、子ども部屋というハードの部分だけが犯罪に結びつくわけではないんですよ。そういう部屋を与えてしまったこと、そういう構造に気がつかなかったこと、そういう構造をよしとしてしまっている夫婦の関係が問題なんです。 と。子ども部屋の問題を単なる間取りの問題でなく、そういう子ども部屋を作って与えてしまう家族の問題として、より上位の視点で捉えている。だから「家族が、より家族らしくするにはどうしたらいいか」っていう部分ですよね。 氏は、そのために「気配のわかる家」として間取りを作ることが大切なのだと説く。
ミセスネットによる、子ども部屋調査。いくつもの子ども部屋や学校を調査した結果、望ましい教育空間(子ども部屋を含めた家全体の空間や、学校の空間)には
の3要素があるとする。基本的には「気配のある家」派。 子どもが教育空間として自然に好んでいたのは、母親の近くで、家族とのコミュ二ケーションが自然に取れる場所を選んでいたといえます。 この辺の結論は、母親の、母親による、母親のための調査なので少し割り引いて考えるとしても、好ましい教育空間の3要素という視点から、空間の良し悪しを測定するという考え方はとても面白い。同会では、「教育空間研究会」という会を設立して、首都圏近郊の私立学校の空間測定も行っている。 ○教育空間研究会 ■「『子どもとメディア』の問題に対する提言」 これは、子ども部屋自体の是非の主張ではなく、子ども部屋の中のものに関する主張。テレビ、ビデオ、パソコンを子ども部屋には置くべきではない、という。 同会では、メディアを ここで述べるメディアとはテレビ、ビデオ、テレビゲーム、携帯用ゲーム、インターネット、携帯電話などを意味します。特に、乳児や幼児期ではテレビやビデオ、学童期ではそれに加えてテレビゲームや携帯用ゲーム、思春期以降ではインターネットや携帯電話 だとする。象徴機能が未熟な2 歳以下の子どもや、発達に問題のある子どものテレビ画面への早期接触や長時間化は、親子が顔をあわせ一緒に遊ぶ時間を奪い、言葉や心の発達を妨げます。 と主張。従って、子ども部屋にはテレビ、ビデオ、パーソナルコンピューターを置かないようにしましょう。 となる。(榊原) |