学校では習わない・教えないまとめ術 KJ法 KJ法とは、川喜田二郎博士が開発した、思考のまとめ術。方法の概要は、大量のカードに短文や単語単位で書き付けた文書を、直感的にグルーピング(同じ傾向にあるものをまとめて、空間配置する)し、そのラベル付けをするというもの。ここ数年の流行になっている「図解」の先鞭とも言うべき存在だ。
いたってシンプル。シンプルな方法だけに、色々な使い方に展開させることが可能だ。
これが一番シンプルな使い方。上の使い方そのまま。 ぼんやり存在している知識を明確化できる。KJは、直感的に短文で書き付けていくので、自分の中で整理されていない知識でも、とりあえず書き出すことができる。これにより、頭の中であれこれ悩んで止まってしまうことがないまま、文書の形に起こすことができる。 ぼんやりした知識をわかりやすい形にするのは、その後のグルーピングの段階が担うので、思いついたことを片っ端から書けるという気楽さが生まれる。これが、いざ整理整頓するときのとっかかりのよさを生んでいる。
強制発想法として使うこともできる。これから紹介するのは、その方法のひとつ。 「新しい教育プログラム」というのを題材にして、考えを深めたいとする。ここで、前もって用意しておいた大量のカードをとりだす。どのように用意しておくのか。それぞれのカードに適当な文書を書きつけておくのだ。たとえば、「木」「砂漠」「サービス」「毛利元就」「親子」…という風に。あまり考えずに、適当な単語、文書を書いておく。 次に、このカードを次々めくりながら、心に浮かんだ言葉をそのカードに書き付けていく。「木」→年輪、「砂漠」→乾燥、「サービス」→快適、「毛利元就」→三本の矢、「親子」→血液型・・・といった具合。「新しい教育プログラム」というのは、頭の片隅にとどめておく程度。むしろ、反射神経に近いほどのスピードで発想して、書き付けていく。 「何か」ができる時もある。できないときもある。「何か」は、完成形に近いときもあるし、ただのアイデアレベルでしかないときもある。発想法として使うわけなので、「できなきゃいけない」「完成しなくちゃいけない」と思い込んでいると、あまり面白くない作業となる。むしろ、ゲーム感覚で色々と試してみればよい。 ただ、「何か」をできやすくするコツはある。発想のための範囲を狭めること。単純に「教育プログラムについて」と広く考えるのではなく、「小学校低学年向けの理科教育プログラム(物理)」という風に、どんどん限定すると、まとまりやすい。 注意点。発想を行いたい問題が出てきてからカードを用意すると、その問題設定に引きずられてカードを作ってしまう。こうなると、発想できる内容が薄くなる可能性がある。単語を書き付けたカードは、前もって暇なときに作り、ストックしておくとよい。
KJ法は、多人数で行うこともできる。多人数で行うと、 1:カードに書き付けられるアイデアの幅が広がる という現象が生じる。 アイデアの幅が広がるのは、直感的にわかるだろう。「三人集まれば文殊の知恵」という言葉が表すとおりだ。 議論が起こるというのは、どういうことか。まとめるときに、色々な形で意見のずれが生じるのだ。たとえば、 「自動車」「自転車」「竹馬」というカードがあったときに 「自動車」「自転車」→車輪付 とまとめる人もいるだろう。 「自動車」→機械動力 とする人もいるかもしれない。 こういう種類の意見のずれに加え、空間配置の感覚のずれ、まとめたあとにつけるラベル名のずれなどが出てくる。 こういった「ずれ」を、互いに視覚的に見える形に浮き彫りにし、それについて話し合うことで、意見の調整・すり合わせをスムーズに行うことができる。つまり、
という発想術の流れを、ひとつの方法で、多人数を巻きこみながら行うことができる。これが、多人数で行うKJ法のメリットとなる。(榊原)
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