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学校では習わない・教えないまとめ術
KJ法
 
KJ法とは、川喜田二郎博士が開発した、思考のまとめ術。方法の概要は、大量のカードに短文や単語単位で書き付けた文書を、直感的にグルーピング(同じ傾向にあるものをまとめて、空間配置する)し、そのラベル付けをするというもの。ここ数年の流行になっている「図解」の先鞭とも言うべき存在だ。
詳しい使い方はこちらのサイトを▼
http://nokai.ab-garden.ehdo.go.jp/giho/43.html

いたってシンプル。シンプルな方法だけに、色々な使い方に展開させることが可能だ。


【整理法として】

これが一番シンプルな使い方。上の使い方そのまま。

ぼんやり存在している知識を明確化できる。KJは、直感的に短文で書き付けていくので、自分の中で整理されていない知識でも、とりあえず書き出すことができる。これにより、頭の中であれこれ悩んで止まってしまうことがないまま、文書の形に起こすことができる。

ぼんやりした知識をわかりやすい形にするのは、その後のグルーピングの段階が担うので、思いついたことを片っ端から書けるという気楽さが生まれる。これが、いざ整理整頓するときのとっかかりのよさを生んでいる。


【発想法として】

強制発想法として使うこともできる。これから紹介するのは、その方法のひとつ。

「新しい教育プログラム」というのを題材にして、考えを深めたいとする。ここで、前もって用意しておいた大量のカードをとりだす。どのように用意しておくのか。それぞれのカードに適当な文書を書きつけておくのだ。たとえば、「木」「砂漠」「サービス」「毛利元就」「親子」…という風に。あまり考えずに、適当な単語、文書を書いておく。

次に、このカードを次々めくりながら、心に浮かんだ言葉をそのカードに書き付けていく。「木」→年輪、「砂漠」→乾燥、「サービス」→快適、「毛利元就」→三本の矢、「親子」→血液型・・・といった具合。「新しい教育プログラム」というのは、頭の片隅にとどめておく程度。むしろ、反射神経に近いほどのスピードで発想して、書き付けていく。
そのうち、大量にカードが出来上がる。そのカードたちは「新しい教育プログラム」を念頭において、グルーピングしていく。

「何か」ができる時もある。できないときもある。「何か」は、完成形に近いときもあるし、ただのアイデアレベルでしかないときもある。発想法として使うわけなので、「できなきゃいけない」「完成しなくちゃいけない」と思い込んでいると、あまり面白くない作業となる。むしろ、ゲーム感覚で色々と試してみればよい。

ただ、「何か」をできやすくするコツはある。発想のための範囲を狭めること。単純に「教育プログラムについて」と広く考えるのではなく、「小学校低学年向けの理科教育プログラム(物理)」という風に、どんどん限定すると、まとまりやすい。

注意点。発想を行いたい問題が出てきてからカードを用意すると、その問題設定に引きずられてカードを作ってしまう。こうなると、発想できる内容が薄くなる可能性がある。単語を書き付けたカードは、前もって暇なときに作り、ストックしておくとよい。


【集団思考法として】

KJ法は、多人数で行うこともできる。多人数で行うと、

1:カードに書き付けられるアイデアの幅が広がる
2:グルーピングするときに、議論が起こる

という現象が生じる。

アイデアの幅が広がるのは、直感的にわかるだろう。「三人集まれば文殊の知恵」という言葉が表すとおりだ。

議論が起こるというのは、どういうことか。まとめるときに、色々な形で意見のずれが生じるのだ。たとえば、

「自動車」「自転車」「竹馬」というカードがあったときに

「自動車」「自転車」→車輪付
「竹馬」→車輪なし

とまとめる人もいるだろう。

「自動車」→機械動力
「自転車」「竹馬」→人力

とする人もいるかもしれない。

こういう種類の意見のずれに加え、空間配置の感覚のずれ、まとめたあとにつけるラベル名のずれなどが出てくる。

こういった「ずれ」を、互いに視覚的に見える形に浮き彫りにし、それについて話し合うことで、意見の調整・すり合わせをスムーズに行うことができる。つまり、

「自由に発想をして、大量のアイデアを出す」
「大量に出たアイデアを、(意見調整しながら)まとめる」

という発想術の流れを、ひとつの方法で、多人数を巻きこみながら行うことができる。これが、多人数で行うKJ法のメリットとなる。(榊原